
商品説明文の書き方を調べると、たいてい「魅力を伝える」「ベネフィットを書く」という話が出てきます。売るための文章として、それは正しい。
ただ、実際に運営していると別の悩みが先に来ます。 書きすぎて返品が増えるのが怖い、そして、どこまで書いたら法律に触れるのか分からない、という2つです。
この記事では、景品表示法の条文と消費者庁のガイドラインから書いてはいけない表現の線を確かめたうえで、返品を減らすための並べ方を書きます。実際に措置命令を受けた表現も、消費者庁の事例集から引きます。
商品説明文には、2つの仕事がある
商品説明文に求められることは、実は2つあります。混ざって語られることが多いのですが、分けて考えたほうが書きやすくなります。
1つ目は買う判断を助けること。これが「魅力を伝える」と呼ばれている部分です。2つ目は届いてからの落差をなくすこと。こちらはあまり語られませんが、返品とクレームの数に直結します。
この2つは、放っておくと引っ張り合います。魅力を強く書くほど、届いたときの落差が大きくなるからです。
強く書きすぎると起きること
返品が増える。送料と手間がかかり、利益が減ります
実際と違えば、景品表示法の問題にもなります
書かなすぎると起きること
判断材料が足りず、そもそも買われません。カートに入れても、そこで止まります
だから先に法律の線を確認して、その内側で強く書くのが順番として正しくなります。線を知らないまま「控えめに書く」と、売れない説明文ができあがります。
越えてはいけない線①:品質と内容
景品表示法の第5条に、禁止される表示が定められています。まず第1号、いわゆる優良誤認表示です。
条文は長いのですが、商品説明文を書く人にとって効いてくる部分がはっきりしています。読んでみます。
商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
出典:不当景品類及び不当表示防止法 第5条第1号(e-Gov法令検索/強調は筆者)
「実際のものよりも著しく優良であると示す」。ここが軸です。比べられているのは、他店の商品ではなく自分の商品の実際だという点に注意します。
実際に措置命令を受けた表現
抽象的な条文だけだと線が見えないので、消費者庁の「景品表示法における違反事例集」から、商品説明に関わるものを引きます。どれもウェブサイトや下げ札での表示です。
読むときは、その表現が自分の商品ページにも書いてありそうかどうかを考えてみてください。どれも特別に悪質な言い回しではありません。普通に書きそうな表現が並んでいます。
婦人靴(平成22年6月24日 措置命令)
表示:「ムートン」「素材 羊革」
実際:革には牛革、内側の毛状のものにはアクリル繊維が使われていた
女性用シューズ(平成23年3月30日 措置命令)
表示:「WATER RESISTANT はっ水素材使用」
実際:はっ水加工が施された皮革は用いられていなかった
紳士用シャツ(平成23年2月24日 措置命令)
表示:「形態安定」
実際:形態安定加工が施されていなかった
下着(平成26年6月27日 措置命令)
表示:「200cc吸収」
実際:表示された吸収量を相当程度下回る量で外側に漏れ出す
ベビーカー(平成25年12月26日 措置命令)
表示:「通気性がウレタンの約11倍!!」
実際:シート部分は、全く通気性が認められないものであった
並べて見えてくること
5件を見比べると、共通点があります。どれも「盛った形容」ではなく、素材・加工・性能という検証できる事実の表示です。
「とても素敵」「使いやすい」といった感想的な表現ではなく、「羊革」「はっ水加工」「形態安定」「200cc」「11倍」。数字や加工名が入っています。
ここが実務上の線引きになります。検証できる形で書いたことは、検証されます。 仕入先の説明をそのまま転記している場合はとくに注意が要ります。手元の商品で確かめられないことを、確かめたように書かないことです。
なお消費者庁は、故意でなく誤って表示した場合でも規制の対象になるとしています。仕入先の資料を信じて書いた、というのは理由になりません。
越えてはいけない線②:価格と取引条件
第5条第2号は、有利誤認表示です。こちらは品質ではなく、価格や取引条件についての誤認を扱います。
ネットショップで問題になりやすいのが、セール価格の見せ方です。「通常価格◯円 → 今だけ◯円」という書き方ですね。
この二重価格表示については、消費者庁のガイドラインにはっきりした数値基準があります。公式の解説ページを読むだけだと「個々の事案ごとに検討」としか書かれていないのですが、ガイドライン本体まで降りると具体的な週数が出てきます。
商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示(中略)
出典:不当景品類及び不当表示防止法 第5条第2号(強調は筆者)
「通常価格」と書ける条件には数字がある
「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」というガイドラインに、比較対照価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」に当たるかどうかの基準が示されています。
公式ページの要約では数値まで出てこないのですが、ガイドライン本体には具体的な期間が書かれています。 そのまま引きます。
一般的には、二重価格表示を行う最近時(最近時については、セール開始時点からさかのぼる8週間について検討されるものとするが、当該商品が販売されていた期間が8週間未満の場合には、当該期間について検討されるものとする。)において、当該価格で販売されていた期間が当該商品が販売されていた期間の過半を占めているときには、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とみてよいものと考えられる。ただし、前記の要件を満たす場合であっても、当該価格で販売されていた期間が通算して2週間未満の場合、又は当該価格で販売された最後の日から2週間以上経過している場合においては、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえないものと考えられる。
出典:消費者庁「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(平成12年公正取引委員会/平成28年4月1日消費者庁改定・強調は筆者)
条件を整理すると、こうなります。
満たす必要があること
セール開始から遡る8週間で検討する(販売期間が8週間未満ならその期間)
その期間のうち、過半をその価格で販売していたこと
満たしても認められない場合
その価格での販売が通算2週間未満のとき
その価格で売った最後の日から2週間以上経っているとき
つまり「セールのために一時的に高い価格を付けておく」やり方は、この基準を満たしません。 開店直後に「通常価格」を作るのも難しくなります。販売実績が無いからです。
将来の価格を比較対照にする場合
過去の実績が無いとき、代わりに将来の価格を比較対照にする手があります。「セール後は◯円になります」という書き方です。
これについても、同じガイドラインに記述があります。実績が無くても書ける抜け道のように見えますが、そうはなっていません。
表示された将来の販売価格が十分な根拠のあるものでないとき(実際に販売することのない価格であるときや、ごく短期間のみ当該価格で販売するにすぎないときなど)には、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある。
出典:同ガイドライン
セール後に本当にその価格で売り続けるつもりが無いなら、書かない。結局のところ、実績か予定のどちらかが伴っていないと書けないということです。
「No.1」を書くなら根拠が要る
商品説明文に「売上No.1」「満足度No.1」と入れたくなることがあります。実際、目を引く表現です。
消費者庁は2024年9月に「No.1表示に関する実態調査報告書」を出していて、そこに根拠として満たすべき要件が示されています。4つあります。
当該調査の結果が合理的な根拠と認められるためには、少なくとも次の①から④までを満たしている必要がある。
① 比較する商品等が適切に選定されていること
② 調査対象者が適切に選定されていること
③ 調査が公平な方法で実施されていること
④ 表示内容と調査結果が適切に対応していること出典:消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」(令和6年9月26日)
同報告書は、調査方法についてもこう書いています。関連する学術界や産業界で一般的に認められた方法、または社会通念上・経験則上妥当と認められる方法で実施されていること。そして、表示内容がその調査結果と適切に対応していること。
個人や小規模のショップがこれを満たすのは、現実的にかなり難しくなります。書けないなら書かない。 別の言い方を探すほうが早いです。
「他店より安い」という書き方
最安値表示については、専用のガイドラインを見つけられませんでした。ただ、価格表示のガイドラインに同種の考え方が示されています。
競争事業者の店舗の販売価格よりも自店の販売価格を安くする等の広告表示において、適用対象となる商品について、一般消費者が容易に判断できないような限定条件を設けたり、価格を安くする旨の表示と比較して著しく小さな文字で限定条件を表示するなど、限定条件を明示せず、価格の有利性を殊更強調する表示を行うことは、(中略)不当表示に該当するおそれがある。
出典:消費者庁「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」第6(強調は筆者)
条件付きの安さを、条件を小さく書いて打ち出す。これが問題にされています。条件があるなら、同じ大きさで書くということです。
お客様の声を載せるときの線引き
商品ページに購入者の声を載せるのは、よくある手法です。2023年10月1日から、ここに新しい規制が加わりました。いわゆるステルスマーケティング規制です。
告示で指定されたのは「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」。つまり、事業者が関わっているのにそう見えない表示です。
まず前提として、自社ページにお客様の声を載せること自体は規制の対象ではありません。 問題になるのは、載せ方です。運用基準から3つの場面を見ます。
① レビューを依頼した場合
いちばん分かりやすいのがこの形です。運用基準に具体例が挙げられています。
購入者に「レビューを書いてください」と頼むこと自体は珍しくありません。ただ、依頼して書かせたものは事業者の表示として扱われます。
EC(電子商取引)サイトに出店する事業者が、いわゆるブローカー(レビュー等をSNS等において募集する者)や自らの商品の購入者に依頼して、購入した商品について、当該ECサイトのレビューを通じて表示させる場合。
出典:消費者庁「ステルスマーケティングに関する運用基準」(令和5年3月28日)
これは「事業者の表示」に当たります。事業者の表示であることを明瞭にしないと、規制に触れます。
② 依頼していなくても該当する場合
こちらは気づきにくい形です。はっきり依頼していなくても、該当することがあります。
判断の軸は、その表示が第三者の自主的な意思によるものと認められるかどうかです。事業者側の主観ではなく、客観的な状況で判断されます。
事業者が第三者に対して自らの商品又は役務について表示することが、当該第三者に経済上の利益をもたらすことを言外から感じさせたり(中略)客観的な状況に基づき、当該表示内容が当該第三者の自主的な意思によるものとは認められない場合。
出典:同運用基準
はっきり依頼していなくても、書けば得がありそうだと感じさせる関係があれば該当し得ます。ここは気づきにくいところです。
③ 良い声だけを抜き出して載せる場合
ここが、自社ページで最も起きやすい形です。運用基準は、問題にならない条件として次のように書いています。
事業者が自社のウェブサイトの一部において、第三者が行う表示を利用する場合であっても、当該第三者の表示を恣意的に抽出すること(中略)なく、また、当該第三者の表示内容に変更を加えること(例えば、第三者のSNSの投稿には事業者の商品等の良い点、悪い点の両方が記載してあるにもかかわらず、その一方のみの意見を取り上げ、もう一方の意見がないかのように表示すること。)なく、そのまま引用する場合。
出典:同運用基準(強調は筆者)
良い評価だけを集めて載せる、投稿の良い部分だけを切り取る。どちらも「恣意的な抽出」「内容の変更」に当たり得ます。
逆に言えば、そのまま引用していれば問題になりません。良い点と悪い点が両方書かれている声なら、両方載せる。そのほうが読む側の信頼も得られます。
なお、購入者が自主的に書いた声を載せる場合は対象外です。謝礼としてクーポンを配ること自体も、投稿内容について事業者とやり取りが一切なく、自主的な意思で内容が決まっているなら問題にならないとされています。
返品を減らす順番で並べる
ここからは法律の話ではなく、書き方の話です。法律の線を確認したうえで、その内側でどう並べるかという段階に入ります。
返品の理由は「思っていたのと違った」が大半を占めます。つまり、期待と実物のずれです。そしてこのずれは、書く順番で減らせます。
基本の考え方は1つで、買う人が不安に思う順に答えることです。自分が説明したい順ではありません。
先に書くもの、後に書くもの
順番は5段階で足ります。上から順に、読む人の不安が大きいものになっています。
書く側は④から書き始めたくなります。いちばん語りたい部分だからです。ただ、そこに行き着く前に離脱されるか、行き着いても返品になるかのどちらかが起きます。
書きたい順ではなく、読む人が確かめたい順に置く。それだけのことなのですが、自分の商品だと意外と入れ替えられません。
① これは何か(1〜2行)
商品ページに来た人が最初に確かめるのは、自分が探しているものかどうかです。ここで外れていたら、以降は読まれません
② サイズと寸法
返品理由でいちばん多いところです。S・M・Lだけでなく実寸を書きます。比較できるものを添えると精度が上がります
③ 素材と作り
手元の商品で確かめられることだけ書きます。仕入先の資料の転記は危険です。措置命令の事例はここに集中しています
④ 使用感・使い方
どんな場面で使うか、どのくらい持つか。ここが「魅力を伝える」部分にあたります
⑤ 向かない場合・注意点
洗濯できない、個体差がある、色が画面と違って見えることがある。ここを書くと返品が減ります
⑤を書くのが怖いという話
向かない場合を書くと売れなくなるのでは、と思うかもしれません。実際には逆のことが起きます。
向かない条件を先に書いておくと、その条件に当てはまる人は最初から買いません。 買わなかった人は返品もしません。そして、条件を読んだうえで買った人は納得して買っているので、評価も安定します。
数としては、注文は少し減るかもしれません。ただ、返品にかかる送料と手間、そして低い評価が付くリスクを引くと、結果はたいてい逆転します。
画面の色について書いておく
色の見え方は、見る人の画面によって変わります。これは自分ではどうにもできません。
だからこそ、「モニターによって色の見え方が異なる場合があります」の一文を入れておきます。 ただし、これは免罪符ではありません。撮影の時点で実物と大きく違う色に補正していたら、この一文があっても表示の問題になり得ます。
この記事で確認した条文と基準のまとめ
商品説明文は、書き方の工夫より先に「越えてはいけない線」を知っておくほうが早く進みます。線が分かれば、その内側では強く書けるからです。
下にまとめたのは、すべて条文かガイドラインに書かれている内容です。迷ったときはここに戻ってください。
とくに数値が出ているもの(二重価格の8週間と2週間、課徴金の3%と3年)は、覚えておく価値があります。「だいたいこのくらい」で判断できない種類の基準だからです。
優良誤認(第5条第1号)
実際のものよりも著しく優良であると示す表示。措置命令の事例は素材・加工・性能に集中しています。故意でなく誤った場合も対象
有利誤認(第5条第2号)と二重価格
「通常価格」と書ける条件:セール開始から遡る8週間のうち過半をその価格で販売
ただし通算2週間未満、または最後の販売日から2週間以上経過していれば認められません
No.1表示
比較商品の選定・調査対象者の選定・公平な実施・表示と結果の対応。4つすべてが必要です
ステマ規制(2023年10月1日〜)
依頼したレビューは事業者の表示。良い声だけの恣意的な抽出、内容の変更も問題になり得ます。そのまま引用するなら対象外
違反したときに起きること
措置命令(第7条第1項):差止め、再発防止、公示など
課徴金(第8条):売上額の3%。過去10年以内に納付命令歴があれば4.5%
対象期間の上限は3年。150万円未満なら命令されません
※e-Gov法令検索の条文と消費者庁の資料を確認したものです。法令は改正されます。なお、サイズ表記そのものの虚偽表示を措置命令の対象とした事例は、消費者庁の違反事例集の中には見当たりませんでした。
よくある質問
仕入先の説明文をそのまま使ってもいいですか
消費者庁は、故意でなく誤って表示した場合でも規制の対象になるとしています。仕入先の資料を信じて書いた、という説明は通りません。措置命令の事例を見ると、素材・加工・性能の表示に集中しています。転記するなら、手元の商品で確かめられる範囲に絞るか、確かめられない項目は落としてください。
開店したばかりで「通常価格」の実績がありません
ガイドラインの基準は、セール開始から遡る8週間のうち過半をその価格で販売していたこと、かつ通算2週間以上であることです。販売実績が無い段階では満たせません。この場合は二重価格表示をせず、単純に販売価格だけを出すことになります。実績を作ってからセールを組む、という順番になります。
レビューを書いてくれた人にクーポンを配るのは問題ですか
運用基準では、事業者と購入者の間で投稿内容について直接・間接を問わず一切のやり取りが行われておらず、客観的な状況から購入者が自主的な意思で内容を決めたと認められる場合は、問題にならないとされています。逆に、内容について要望を伝えたり、良い評価を条件にしたりすると事業者の表示になります。
良いレビューだけを商品ページに載せたいのですが
運用基準は「恣意的に抽出すること」「表示内容に変更を加えること」なく、そのまま引用する場合を問題にならない例として挙げています。良い評価だけを集めることや、投稿の良い部分だけを切り取ることは、この条件から外れます。そのまま引用するなら対象外なので、良い点と悪い点が両方ある声は、両方載せてください。
「向かない場合」を書くと売れなくなりませんか
注文の数は少し減ることがあります。ただ、向かない条件に当てはまる人は最初から買わなくなるので、その人からの返品も発生しません。返品にかかる送料と手間、そして低い評価が付くリスクを差し引くと、結果は逆転することが多いです。数字で確かめたいなら、1商品だけで試して前月比を見てください。
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素材名、加工名、数字。この3つが書かれている箇所を見つけて、手元の商品で確かめられるかを1つずつ確認してください。確かめられないものは、落とすか言い換えます。