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個人事業主で始めるか、法人にするか|ネットショップでは税金より先に差が出ます

机の上の貯金箱に硬貨を入れているところ

ネットショップを始めるとき、個人事業主でいくか法人にするか。税率の比較から入る説明をよく見かけます。

ただ、公式の資料を並べていくと、ネットショップでは税金より先に効いてくる違いがありました。使える決済と、取れるドメインです。

この記事では、国税庁・法務省・日本年金機構・JPRSなどの公開資料で確かめた内容を並べます。個別の判断は税務署か専門家に確認してください。

ネットショップでは、税金より先に差が出ます

まず、この媒体で扱っている範囲の話から入ります。決済の申し込みの場面です。

カラーミーショップの公式決済サービスの料金表を見ていたときに気づいたのですが、決済手段ごとに条件の欄がありました。提供しているのはGMOイプシロン株式会社という決済代行会社です。

そこに、個人では申し込めないものが並んでいます。

「法人のみ利用可」と書かれていたもの

コンビニ決済のうち、セブンイレブン

ネット銀行決済のうち、ペイジー

スマートフォンキャリア決済(d払い/au PAY(auかんたん決済)/ソフトバンクまとめて支払い)

出典:GMOイプシロン「カラーミーペイメント」料金案内

ローソンやファミリーマートは入れられます

同じ表で、ローソン、ファミリーマート、セイコーマート、ミニストップは条件の記載なしに並んでいました。個人でもコンビニ決済自体は使えます。

できないのはセブンイレブンの分と、キャリア決済です。スマホの料金と一緒に払いたい人には、応えられないことになります。

ここで挙げたのは、あくまで1社の料金表に書かれていたことです。ほかの決済代行会社が同じ条件かどうかは確かめていません。ただ、こういう差が実際にあるという例にはなります。

co.jpドメインは、登記した会社でないと取れません

もう1つ、ネットショップに直接効いてくる違いがあります。ドメインの種類です。

JPドメイン名を管理しているJPRSのページに、種類ごとの登録条件が書かれていました。属性型と呼ばれる種類には、それぞれ資格が決まっています。

co.jpの欄を見ると、登記が条件になっていました。会社の種類まで具体的に挙げられています。

個人事業主は、この一覧に入っていません。

co.jpの登録資格

「CO.JP 日本国内で登記を行っている会社が登録できます。株式会社、有限会社、合同会社、合名会社、合資会社、相互会社など」

一方、汎用JPドメイン名は「.JP 日本国内に住所をもつ個人・団体・組織であれば誰でもいくつでも登録できます」とされています

出典:JPRS「JPドメイン名の種類 種類と対象」

.jpや.comなら、個人でも取れます

汎用JPドメイン名(〜.jp)には、この条件がありません。個人でも登録できます。.comや.shopなども同じです。

つまり、co.jpにこだわらなければドメインで困ることはありません。 実際、有名なネットショップでも.comや.jpを使っているところは多くあります。

ただ、法人向けに卸をするような場合は、co.jpのほうが伝わりやすい場面があると思います。そこを重視するかどうかの話になります。

始めるときの費用は、桁が違います

ここから、お金の話に入ります。まず始めるときにかかる費用です。

個人事業主の場合、税務署に開業届を出します。国税庁のページには、提出の期限として「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出」と書かれていました。

法人の場合は、登記が必要になります。登録免許税の額が法務省のページに書かれていました。

設立登記の登録免許税

株式会社:「資本金の額に1000分の7を乗じた金額です。ただし、これによって計算した税額が15万円に満たないときは、申請件数1件につき15万円です」

合同会社:「資本金の額に1000分の7を乗じた金額です。ただし、これによって計算した税額が6万円に満たないときは、申請件数1件につき6万円です」

出典:法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」/「合同会社の設立手続について」

株式会社には、これ以外もかかります

日本公証人連合会のページに、株式会社を設立するのに最低限必要な費用がまとめられていました。

認証手数料が3万円から5万円、謄本手数料が1枚250円でおおむね8枚2,000円くらい、印紙代4万円(ただし電子定款のときはなし)、そして設立登記の登録免許税です。

認証手数料がいちばん低い3万円の場合で足してみます。電子定款なら約18万円から。紙の定款だと印紙代の4万円が加わって、約22万円からです。

電子定款にすれば印紙代の4万円は不要とされているので、ここが差の出る部分でした。認証手数料は資本金の額によって3万円から5万円の幅があるので、資本金を大きくするなら、その分も上に乗ります。

合同会社なら、定款の認証が要りません

法人にすると決めた場合、株式会社と合同会社のどちらにするかという話になります。ここにも、はっきりした差がありました。

株式会社の場合、作った定款を公証人に認証してもらう必要があります。この手続きに、さきほどの3万円から5万円がかかります。

合同会社は、この手続きそのものがありません。法務省のページに、そのまま書かれていました。

なお、合同会社の定款については、公証人の認証を受ける必要はありません。

出典:法務省「合同会社の設立手続について」

認証手数料の軽減については、確かめられませんでした

定款の認証手数料には、条件によって安くなる仕組みがあるという話を見かけます。

ただ、日本公証人連合会のページを開いて確かめたところ、書かれていたのは資本金の額による3万円・4万円・5万円の区分だけでした。軽減された金額の記載は、このページには見つけられませんでした。

手数料の条件は変わることがあります。申し込む前に、公証役場か公証人連合会のページで現在の金額を確かめてください。

所得税は5%から45%の7段階

次に、税率の話です。個人事業主の利益には所得税がかかります。

国税庁のページには「所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、5パーセントから45パーセントの7段階に区分されています」とありました。

速算表の数字を引きます。課税される所得金額の区分と、その税率、そして控除額の組み合わせです。

自分の利益がどの行に入るかを見てください。

所得税の速算表(課税される所得金額・税率・控除額)

1,000円〜1,949,000円 5% 0円

1,950,000円〜3,299,000円 10% 97,500円

3,300,000円〜6,949,000円 20% 427,500円

6,950,000円〜8,999,000円 23% 636,000円

9,000,000円〜17,999,000円 33% 1,536,000円(以降40%・45%と続きます)

出典:国税庁 タックスアンサー No.2260 所得税の税率[令和8年4月1日現在法令等]

復興特別所得税も併せて申告します

同じページに注記がありました。「平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付することとなります」。

表の税率だけを見ていると、この分を見落とします。実際に納める額は、表の数字より少し多くなります。

なお、所得税は利益が増えるほど税率が上がる仕組みです。利益が小さいうちは5%や10%で済みます。

法人税は15%と23.20%の2段階

法人の場合は、法人税がかかります。こちらは段階が少ない作りでした。

国税庁のページには、資本金1億円以下の普通法人などについての税率が書かれています。年800万円を境に2つに分かれる形です。

数字を引きます。あわせて、令和7年4月1日以後に開始する事業年度についての注記も載せます。

小さな会社なら、当面は800万円以下の行だけを見れば足ります。

普通法人・資本金1億円以下の法人など(令和7年4月1日以後に開始する事業年度)

年800万円以下の部分 15%

年800万円超の部分 23.20%

注記:「令和7年4月1日以後に開始する事業年度において、所得金額が年10億円を超える事業年度については、年800万円以下の部分に適用される税率は17パーセントとなります」

出典:国税庁 タックスアンサー No.5759 法人税の税率[令和7年4月1日現在法令等]

税率だけで比べると、話が雑になります

所得税の表と法人税の表を並べると、利益が増えたところで法人のほうが低くなるように見えます。

ただ、法人には法人税のほかに地方税もかかります。この記事では、自治体ごとに決まる地方税は扱っていません。 そこまで含めた比較は、税理士に見てもらう部分です。

それから、法人にすると自分への給料という考え方が出てきます。会社の利益と自分の所得が分かれるので、計算の仕方そのものが変わります。

消費税の線は、どちらも1,000万円

消費税については、個人でも法人でも同じ基準が使われていました。基準期間の課税売上高です。

国税庁のページには「その課税期間の基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として、納税義務が免除されます」とあります。

ただし、免除されない場合も挙げられていました。

課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合には、納税義務は免除されません。

出典:国税庁 タックスアンサー No.6501 納税義務の免除[令和8年4月1日現在法令等]

特定期間という条件もあります

もう1つ、特定期間における課税売上高が1,000万円を超える場合も免除されないと書かれていました。

個人事業者の場合、特定期間はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間です。前々年ではなく、前年の上半期で判定される場合があるということです。

なお、この1,000万円の判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額で行うこともできるとされています。どちらの基準で判定するかは納税者の任意です。

法人は、社長1人でも社会保険に入ります

ここが、法人にするときのいちばん大きな固定費になる部分だと思います。社会保険の加入義務です。

日本年金機構のページに、強制適用事業所の説明がありました。法人と個人で、条件がはっきり分かれています。

そのまま引きます。カッコの中に書かれている条件が、ひとりで会社を作る人には効いてきます。

従業員がいるかどうかではありませんでした。

厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)です。また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて厚生年金保険の適用事業所となります。

出典:日本年金機構「適用事業所と被保険者」(2026年6月26日更新)

「事業主のみの場合を含む」が効いてきます

ひとりで会社を作った場合でも、この対象になります。従業員がいるかどうかではなく、法人かどうかで決まる書き方です。

一方、個人事業主の場合は常時5人以上という条件がついています。ひとりでやっているうちは、この義務はありません。

なお、同じページには令和4年10月から法律・会計にかかる業務を行う士業の個人事業所のうち、常時5人以上の従業員を雇用している事業所が強制適用になったことも書かれていました。業種によって扱いが違う部分です。

青色申告特別控除という、個人側の仕組み

個人事業主のほうにも、税を軽くする仕組みがあります。青色申告特別控除です。

国税庁のページには、所得金額から55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)または10万円を控除する制度だと書かれていました。青色申告者に対する特典の1つ、という位置づけです。

55万円の控除を受ける要件は3つです。帳簿のつけ方と、提出の仕方が条件になっています。

55万円の青色申告特別控除の要件

(1)不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること

(2)これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること

(3)(2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書等を確定申告書に添付し、確定申告期限(翌年3月15日)までに提出すること

出典:国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除[令和8年4月1日現在法令等]

e-Taxで出すと、65万円になります

65万円の控除は、上の要件に加えて、仕訳帳と総勘定元帳の電子帳簿保存か、e-Taxでの送信のどちらかを満たすと受けられるとされています。

差は10万円です。提出の方法を変えるだけで満たせる条件が用意されています。

なお、これらの要件に該当しない青色申告者が受けられるのが10万円の控除です。帳簿のつけ方で、受けられる金額が変わります。

判断の順番と、確認できなかったこと

ここまでの内容を、判断の順番に並べ直します。金額の比較だけで決める話ではありませんでした。

まず、法人でないとできないことが自分の店に必要かどうか。次に、社会保険の負担を続けられるかどうか。税率の比較は、そのあとです。

そして、確かめられなかったことも書いておきます。調べた範囲では、公式のページに記載を見つけられなかった項目です。

見る順番

1. 入れたい決済やドメインに、法人が条件になっているものがあるか

2. 社会保険の保険料を、毎月払い続けられるか(法人は事業主のみでも加入)

3. 設立の費用(合同会社なら登録免許税6万円から、株式会社は電子定款でも18万円ほどから)

4. 税率の比較。ここは地方税も含めて税理士に見てもらう部分です

確認できなかったこと

定款認証手数料が軽減される条件と金額。日本公証人連合会のページでは、3万円・4万円・5万円の区分しか見つけられませんでした

開業届の提出に手数料がかからないことを明記した文言。手数料の記載自体がありませんでした

決済代行会社や仕入先が法人を条件にしているかどうかの全体像。1社の料金表で確認できただけです

※国税庁・法務省・日本年金機構・日本公証人連合会・JPRS・GMOイプシロンの公開ページを確認したものです。制度と金額は変わります。

よくある質問

個人事業主でも、ネットショップは問題なくできますか

できます。ただし、入れられない決済があることは知っておいてください。カラーミーショップの公式決済サービス(GMOイプシロン提供)の料金表には、セブンイレブンのコンビニ決済、ペイジー、スマートフォンキャリア決済に「法人のみ利用可」と書かれていました。ローソンやファミリーマートなど、ほかのコンビニは条件の記載なしに並んでいます。自分が入れたい決済の欄を、申し込む前に見てください。

法人にすると、いくらかかりますか

法務省のページによると、設立登記の登録免許税は、株式会社が15万円か資本金の1000分の7のいずれか高い額、合同会社は6万円か1000分の7のいずれか高い額です。株式会社にはこれに加えて定款の認証手数料(資本金の額により3万円〜5万円)、謄本手数料、電子定款でない場合の印紙代4万円がかかると日本公証人連合会のページに書かれていました。合同会社は定款の認証そのものが不要です。

ひとりで会社を作っても社会保険に入りますか

日本年金機構のページには「厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)です」と書かれています。事業主のみの場合を含む、とあるので、ひとりで会社を作った場合も対象です。個人事業主の場合は「従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて」適用事業所になるとされていて、ひとりでやっているうちはこの義務がありません。

売上が1,000万円を超えたら法人にしたほうがいいですか

1,000万円という数字は、消費税の納税義務の基準として国税庁のページに出てくるものです。「基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として、納税義務が免除されます」とされていますが、これは個人でも法人でも同じ基準です。ただし、適格請求書発行事業者(インボイス)の登録を受けている場合には、1,000万円以下でも免除されません。法人にするかどうかの判断とは別の話なので、分けて考えてください。

co.jpのドメインは個人でも取れますか

取れません。JPRSのページによると、co.jpは日本国内で登記を行っている会社が登録できるドメイン名とされていて、個人事業主は対象に含まれていません。ただし、汎用JPドメイン名(〜.jp)には登記の条件がなく、個人でも登録できます。.comや.shopなども同じです。ネットショップの場合、co.jpでなければ困る場面は多くないと思います。

入れたい決済の申込ページを、先に開いてみる

条件の欄に「法人のみ」と書かれているかどうかで、判断の材料が1つ増えます。税率の比較より先に確かめられる部分です。

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