
会議の練習をしようと思って、AIに相手役を頼む。やってみると会話は成立するのに、本番では同じようにいかない。
原因は、相手役が協力的すぎて、想定した困難が発生していないことです。相手役の設定を書き換えます。
なお、練習用のプロンプトそのものの作り方はChatGPTで英会話を練習するなら、プロンプトは1つでいいにまとめています。この記事は、特定の場面を再現する話です。
ロールプレイが練習にならない理由
会話が成立することと、練習になることは別です。
相手が、こちらの意図を汲んでくれる
文が崩れていても、意図を推測して話を進めてくれます。だから会話は続きますが、通じなかった経験が発生しません。本番で困るのは、相手が汲んでくれない場面です。そこを再現していないと、練習の意味が薄くなります。
展開が、こちらの都合に合う
設定した場面を、素直に進めてくれます。実際の会議は、話が横道に逸れ、前提が覆り、時間が足りなくなる。想定どおり進む練習ばかりしていると、崩れたときに戻れません。
「うまくいく台本」を練習してしまう
ロールプレイの結果として、うまく話せた記憶が残ります。ただ、それは相手が協力してくれた条件下での成功です。同じ台本が本番で通用するとは限りません。練習の目的は、成功の再現ではなく、失敗の発見です。
相手役に与える5つの条件
「取引先の役をやってください」だけでは、条件が足りません。
| 条件 | 指定しないと起きること |
|---|---|
| 立場と役職 | 誰でもない相手になる |
| こちらへの態度 | 常に好意的になる |
| 話す速度と長さ | 読みやすい長さに整う |
| 知らないこと | こちらの前提を知っている |
| 相手の目的 | 目的なく相槌を打つ |
「知らないこと」を必ず指定する
実際の会議で難しいのは、相手が自社の事情を知らない点です。前提から説明する必要がある。ところが指定しないと、相手役は文脈をすべて把握した状態で応答します。「あなたは当社の製品を今日初めて聞いた」と書くだけで、練習の質が変わります。
相手の目的を与える
本番の相手には目的があります。値下げを引き出したい、納期を早めたい、責任の所在を確認したい。目的があると、会話が一方向に進みます。目的を与えずにロールプレイすると、こちらの話に付き合うだけの相手になります。
態度を1つ選ぶ
急いでいる、懐疑的、こちらの説明に納得していない。どれか1つを指定してください。全部を同時に指定すると、極端な相手になって練習になりません。1回につき1つ。回を変えて、別の態度を試します。
難しくする指示を、具体的に書く
「厳しくしてください」では、態度が強くなるだけで、難易度は上がりません。
そのまま使える設定文
・当社の製品を今日初めて聞いた(前提を知らない)
・目的は、納期を2週間早めさせること
・態度は、丁寧だが懐疑的
・私が3文以上続けて話したら、途中で割り込んでください
・私の英語が曖昧なときは、聞き返さずに自分の解釈で話を進めてください
会話は10往復で終了してください。終了後、私が曖昧だった発言を3つ挙げ、
それぞれ相手にどう解釈されたかを日本語で書いてください。
最後の2行が重要です。終了後に、曖昧だった箇所を報告させます。これがないと、うまくいった感覚だけが残ります。
「聞き返さずに誤解して進む」が効く
親切に聞き返してくれる相手だと、自分の文の曖昧さに気づけません。誤解したまま進んでもらうと、あとで「そういう意味ではなかった」と分かります。実際の会議で起きているのは、こちらの状態です。
途中で条件を変えてもらう
「5往復目で、予算が半分になったと伝えてください」のような指示を入れると、前提が覆る練習ができます。準備した話が使えなくなったときに、どう組み立て直すか。ここが本番でいちばん困る部分です。
相手を母語話者にしない
見落とされやすい点です。
実務の相手は、英語を母語としないことが多い
取引先も、海外拠点の同僚も、英語を第二言語として使っている場合があります。訛りがあり、語彙の選び方が違い、文法も崩れます。母語話者だけを相手に練習していると、この状況に慣れません。
相手役の設定に国や地域を入れる
「あなたは英語を第二言語として話す担当者です」と条件に加えるだけでも、応答の語彙が変わります。実際に取引のある地域があるなら、それを指定してください。完全な再現はできませんが、母語話者を想定した練習よりは近づきます。
自分の英語も、相手に合わせる必要がある
相手が非母語話者なら、慣用表現や略語は通じにくくなります。難しい言い回しを覚えるより、平易な語で言い換える練習のほうが実用的です。ロールプレイの中で、通じなかった語を言い換える場面を作ってください。
1回5分・1場面・1目的
長くやるほど効果が上がるわけではありません。
| やりがち | 結果 | 代わりに |
|---|---|---|
| 30分続ける | 後半は惰性になる | 10往復で切る |
| 場面を複数入れる | どれも浅くなる | 1場面に絞る |
| 毎回違う設定 | 比較できない | 同じ設定を3回 |
| その場で始める | 言いたい内容がない | 3行を先に書く |
同じ設定で3回やる
1回目は崩れます。2回目で、前回詰まった箇所を意識して話す。3回目で、その箇所が通るかを見る。設定を毎回変えると、どこが改善したか分かりません。3回終わってから、次の場面に移ります。
話す内容は、事前に3行
準備なしで始めると、言いたい内容がないまま英語を探すことになります。日本語で3行書いてから始めてください。内容が決まっていれば、英語の部分だけに集中できます。準備に5分かける価値があります。
音声でやるか、文字でやるか
声を出せる環境があるなら音声、なければ文字で構いません。文字でも、曖昧さの発見という目的は果たせます。音声だと聞き取りの練習も兼ねられますが、環境がないことを理由にやらないより、文字でやるほうがいいです。
終わったあとにやること
ロールプレイは、終わったあとの作業まで含めて1セットです。
曖昧だった箇所を3つ受け取る
設定文の最後に入れた指示で、報告させます。自分では気づけない部分なので、ここがいちばん価値があります。3つ以上出させると処理しきれないので、3つで止めてください。
言い換えを1つ用意する
詰まった表現について、「この内容を、もっと簡単な語で言う方法を1つ」と聞いてください。本番で出てこないときの逃げ道になります。難しい表現を覚えるより、これのほうが使えます。
次の会議で1回使う
練習で直した表現を、実際の会議で1回使ってください。使わないと定着しません。1回の会議で1つ。これを続けると、練習と本番がつながります。つながっていないロールプレイは、いくらやっても会議に反映されません。
まとめ
相手役の設定を変えるだけで、同じ時間の中身が変わります。
- 会話が成立しても、想定した困難が発生していなければ練習にならない
- 相手役に与えるのは5つ。立場、態度、速度、知らないこと、相手の目的
- 「厳しく」ではなく、割り込む・誤解して進む・話題を戻すと動作で指定する
- 相手を母語話者にしない。実務の相手は第二言語の話者が多い
- 1回10往復、1場面、1目的。同じ設定で3回やって比べる
- 終了後に、曖昧だった発言を3つ報告させる
- 直した表現を、次の会議で1回使う
うまく話せた記憶を増やしても、本番は変わりません。詰まる箇所を見つけるための時間だと考えてください。
よくある質問
設定を細かく書くのが面倒です
1つ作れば使い回せます。立場と目的の部分だけを差し替えれば、別の場面に流用できます。毎回ゼロから書く必要はありません。最初の1回だけ、丁寧に作ってください。
相手役が設定どおりに動きません
条件が多すぎる可能性があります。5つより増やすと、守られない項目が出ます。守ってほしい動作を1つだけ強調するか、会話の途中で「割り込む設定を続けてください」と伝え直してください。
実在の取引先を設定に使ってもいいですか
社名や案件の詳細を入れる場合は、外部サービスへの情報の投入について社内の規程を確認してください。業種と立場だけを指定すれば、練習としては十分成立します。固有の情報を入れる必要はありません。
会議以外にも使えますか
電話、面談、クレーム対応など、相手がいる場面ならすべて同じ考え方で作れます。条件のうち「相手の目的」を場面に合わせて変えてください。目的が変われば、会話の進み方が変わります。
どのくらいの頻度でやればいいですか
週2回、1回10分程度で足ります。同じ設定を3回やるので、1つの場面に2週間かかる計算です。場面を早く消化するより、1つの場面で通るようになるほうが、会議での変化は早く出ます。