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家を売って手元に残る金額|仲介手数料・実費・ローン残債・税金を引く計算手順【2026年版】

家の鍵と書類。不動産を売却して手元に残る金額の計算手順

「4,000万円で売れますよ」と査定書を見せられたとき、手元にいくら残るかを即答できる人はほとんどいません。不動産会社も、聞かれない限り積極的には説明しません。査定価格は不動産会社の売上に直結しますが、売主の手取りは直結しないからです。

手取りの計算そのものは難しくありません。売却価格から引くのは4つだけです。仲介手数料、実費(印紙税・登記費用など)、ローン残債、そして譲渡所得に対する税金。ただし、この4つは性質がまったく違います。上限が法律で決まっているもの、金額が表で決まっているもの、自分の借入残高で決まるもの、そして条件次第でゼロになるもの。順番と性質を取り違えると、読み違えます。

この記事では、宅地建物取引業法と国土交通省の報酬告示、国税庁のタックスアンサーだけを根拠に、4つの引き算をそれぞれ確定させ、最後に4,000万円で売った3つのケースで実際に計算します。すべて2026年9月時点で確認した内容です。

結論:売却価格から4つを引く。順番を間違えると読み違える

手取りの式

売却で手元に残る現金は、次の式で出ます。

手取り = 売却価格 -(仲介手数料 + 実費) - ローン残債 - 譲渡所得税・住民税
売却価格から引く4つと、その性質 売却価格 査定書に書かれている金額 - 1 仲介手数料 告示で上限。400万円超は3.3%+6.6万円(税込) 上限であって定価ではない - 2 実費 印紙税は契約金額で決まる。軽減は令和9年3月末まで 抵当権抹消の登録免許税は不動産1個1,000円 - 3 ローン残債 残っている人だけ。決済日時点の額を金融機関に出させる ここでマイナスなら持ち出しになる - 4 譲渡所得税・住民税 もうけが出た人だけ。売却価格ではなく譲渡所得にかかる 自宅は3,000万円の特別控除がある 残った額が手取り

このうち、仲介手数料と実費は売れば必ずかかるものです。ローン残債は返済が残っている人だけ。譲渡所得税はもうけが出た人だけで、しかも自宅なら控除でゼロになることが多い。つまり、多くの方にとって実際に効いてくるのは前半の2つとローン残債です。

よくある誤解が、税金を最初に心配することです。次章以降で見るとおり、自宅の売却では3,000万円の特別控除があり、購入時より高く売れたとしてもその差額が3,000万円以内なら課税されません。先に心配すべきなのは、確実にかかる仲介手数料のほうです。

「決済時に必要な額」と「手取り」は別物

もう1つ、混同されやすい点があります。ローン残債が売却価格を上回っている場合、売却代金だけでは抵当権を外せません。この場合、差額を自己資金で用意する必要があります。

なお、手取りの計算に入る前に、そもそも売却活動が正常に行われているかを確認できる仕組みが2025年1月から始まりました。手順は不動産の囲い込みとはに書いています。

たとえば3,000万円で売れる家に、ローンが3,400万円残っているとします。売却代金3,000万円では足りず、400万円に加えて仲介手数料と実費を現金で持ち出すことになります。これがいわゆるオーバーローンの状態で、この場合の「手取り」はマイナスです。

したがって、計算の順番としては、まず売却見込み価格を置き、仲介手数料と実費を引き、そこからローン残債を引きます。ここがプラスなら、次に税金を考える。マイナスなら、税金の検討より先に資金の工面を考える必要があります。以下、1つずつ確定させていきます。

引き算① 仲介手数料は告示で上限が決まっている

上限は法律で決まっている。「相場」ではない

仲介手数料について、宅地建物取引業法第46条第1項は、宅地建物取引業者が受けることのできる報酬の額は国土交通大臣の定めるところによる、と定めています。これを受けたのが昭和45年10月23日建設省告示第1552号で、最終改正は令和6年6月21日の国土交通省告示第949号です。

この告示の第二が、売買の媒介における報酬の上限を、売買代金を区分して次の割合を掛けた合計額以内、と定めています。いずれも消費税等相当額を含む金額です。

売買代金の区分 上限の割合(税込)
200万円以下の金額 100分の5.5
200万円を超え400万円以下の金額 100分の4.4
400万円を超える金額 100分の3.3

大事なのは「以内」という言葉です。これは上限であって、定価ではありません。国土交通省の解釈・運用の考え方も、この規定は依頼者のそれぞれ一方から受けることのできる限度額を定めたものであり、双方から受ける場合も一方のみから受ける場合も、それぞれ一方から受ける額が限度額以下でなければならない、としています。

「3%+6万円」という速算式の正体

不動産会社の説明でよく出てくる「3%+6万円+消費税」は、この3段階の計算を1本の式にまとめたものです。なぜ6万円が足されるのかを確認しておきます。

400万円を超える部分は3.3%ですが、最初の200万円は5.5%、次の200万円は4.4%です。全体を3.3%で計算すると、最初の200万円で2.2%分、次の200万円で1.1%分を取りこぼします。200万円×2.2% = 4.4万円、200万円×1.1% = 2.2万円。合計6.6万円です。

つまり売買代金が400万円を超える場合、上限 = 売買代金 × 3.3% + 6.6万円(税込)となります。4,000万円なら、4,000万円×3.3% = 132万円、これに6.6万円を足して138.6万円。段階計算でも、200万×5.5%=11万、200万×4.4%=8.8万、3,600万×3.3%=118.8万で合計138.6万円となり、一致します。

この138.6万円は売主が支払う上限です。買主も同額を上限として自分の仲介会社に支払います。売主と買主の両方を同じ会社が仲介する場合(両手仲介)、その会社はそれぞれから上限額まで受け取れますが、片方から2倍取れるわけではありません。

800万円以下の物件は例外がある

告示の第七が、低廉な空家等についての特例を置いています。売買代金が800万円以下の宅地または建物については、媒介に要する費用を勘案して、第二の計算方法により算出した金額を超えて報酬を受けることができる、という内容です。ただし上限があり、30万円の1.1倍に相当する金額、つまり33万円を超えてはならないとされています。

これは売主にとって不利に見えますが、趣旨は別のところにあります。低額の空き家は、通常の料率では手数料が数万円にしかならず、現地調査や書類の手配にかかる手間に見合わないため、仲介会社が扱いたがらない。その結果、空き家が流通しないという問題への対応です。

実務上の注意点として、この特例を使う場合、媒介契約の締結に際してあらかじめ報酬額について依頼者に説明し、合意することが必要とされています。後から「この物件は特例なので33万円です」と言われる筋合いのものではありません。契約前の説明があったかどうかを確認してください。

引き算② 印紙税・登記費用・その他の実費

印紙税は契約金額で決まる。軽減措置が効いている

売買契約書には収入印紙を貼ります。印紙税額は契約金額で決まりますが、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成される不動産の譲渡に関する契約書については、軽減措置が適用されています。

契約金額 軽減後の印紙税額
500万円超 1,000万円以下 5千円
1,000万円超 5,000万円以下 1万円
5,000万円超 1億円以下 3万円
1億円超 5億円以下 6万円

軽減がない場合の本則は、1,000万円超5,000万円以下で2万円、5,000万円超1億円以下で6万円です。軽減措置によって半分になっています。令和9年3月31日という期限があるので、それ以降に契約する場合は本則に戻る可能性があります。契約時点の税額を国税庁のタックスアンサーで確認してください。

なお、売主と買主がそれぞれ1通ずつ契約書を保管する場合、印紙は2通分必要で、通常はそれぞれが自分の分を負担します。金額としては数万円の話なので、手取りへの影響は限定的です。

抵当権抹消と住所変更の登記費用

住宅ローンを完済して抵当権を外す場合、抵当権抹消登記が必要です。登録免許税は不動産1個につき1,000円で、土地と建物で2個と数えるため、一戸建てなら2,000円が目安になります。敷地が複数筆に分かれていれば、その数だけ増えます。

これに加えて、司法書士に依頼する場合は報酬がかかります。司法書士報酬は自由化されているため一律の金額はありません。この記事では相場として金額を示すことはしませんが、見積もりを取れば事前に確定できる費用です。

もう1つ、登記上の住所が現住所と違う場合は、住所変更登記も必要になります。登録免許税は同じく不動産1個につき1,000円です。引っ越しを経て売却する場合に発生しやすいので、登記事項証明書の住所を確認しておいてください。

売るために直接かかった費用は、税金の計算でも効いてくる

ここで押さえておきたいのが、これらの費用の一部は譲渡費用として譲渡所得の計算から差し引ける、という点です。国税庁のタックスアンサー3255が、譲渡費用の主なものとして挙げているのは次のとおりです。

  • 土地や建物を売るために支払った仲介手数料
  • 印紙税で売主が負担したもの
  • 貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
  • 土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
  • 既に売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金
  • 借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など

一方、修繕費や固定資産税など、その資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用は譲渡費用になりませんと明記されています。売却前にハウスクリーニングや小規模な修繕をした場合、それが「売るために直接かかった」と言えるかどうかは個別判断になります。領収書は残しておいてください。

引き算③ ローン残債は「手取り」ではなく「決済時に必要な額」

残高証明書で確認する

住宅ローンが残っている物件を売る場合、決済と同時に残債を全額返済し、抵当権を抹消します。買主は抵当権のついた不動産を買えないため、これは選択の余地がありません。

確認すべき数字は、返済予定表に書かれた「残高」ではなく、決済予定日時点の残高です。金融機関に繰上返済(全額)の手続きを申し出ると、その日時点の元金と経過利息、繰上返済手数料を含めた金額を出してもらえます。売却の見通しが立った段階で、金融機関に決済予定日を伝えて試算を依頼してください。

繰上返済手数料は金融機関と契約内容によって異なります。無料のところもあれば、数万円かかるところもあります。これは事前に確認できる金額なので、見込みで計算しないでください。

売却価格が残債を下回るとき

売却価格から仲介手数料と実費を引いた額が、ローン残債に届かない場合、差額を自己資金で補う必要があります。補えなければ、抵当権が外せず、通常の売却(任意の売却)は成立しません。

この状態を先に把握しておくことが重要です。計算の順番として、査定価格が出た時点で、その価格から仲介手数料と実費を引き、残債と比べる。ここがマイナスなら、売却活動を始める前に、不足額をどう用意するかを決める必要があります。

なお、金融機関の同意を得て、残債が残ったまま売却する方法(任意売却)もありますが、これは返済が困難になっている場合の手続きであり、信用情報への影響を含めて通常の売却とは性質が異なります。本記事の範囲を超えるため、詳細には立ち入りません。

引き算④ 譲渡所得税は、売却価格ではなく「もうけ」にかかる

課税されるのは譲渡所得。売却価格ではない

ここが最も誤解されやすいところです。不動産を売ったときの税金は、売却価格にかかるのではありません。国税庁のタックスアンサー3202によれば、譲渡所得の金額は次のように計算します。

譲渡所得 = 譲渡価額(売った金額)-(取得費 + 譲渡費用)

取得費とは、その土地や建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などの取得に要した金額に、その後支出した改良費・設備費などを加えた合計額です。建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。土地は減価しないため、この処理は建物だけです。

譲渡費用は前章で見たとおり、仲介手数料や印紙税などです。したがって、買ったときより安く売れた場合、譲渡所得はマイナスになり、税金はかかりません。多くの中古住宅の売却では、そもそも課税の対象にならないのが実情です。

所有期間5年で税率が倍近く変わる

譲渡所得に課税される場合、税率は所有期間で2つに分かれます。ここには特殊な数え方があります。

国税庁のタックスアンサー3202は、長期譲渡所得を「譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの」、短期譲渡所得を「譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のもの」と定義しています。売った日を基準にするのではなく、売った年の1月1日を基準にする点に注意が必要です。

区分 税率
長期譲渡所得
譲渡年の1月1日で所有5年超
所得税15%+住民税5%
短期譲渡所得
譲渡年の1月1日で所有5年以下
所得税30%+住民税9%

これに加えて、平成25年から令和29年までの各年分については復興特別所得税がかかります。国税庁は、復興特別所得税額は基準所得税額に2.1%の税率を掛けて計算する、としています。長期なら所得税15%に対して2.1%なので、実質0.315%が上乗せされる形です。

また、相続や贈与で取得したものは、原則として被相続人や贈与者が取得した日から所有期間を計算する、とされています。親から相続した家をすぐ売っても、親の所有期間が引き継がれるため、短期譲渡にはならないのが通常です。

取得費が分からないときの5%ルール

先祖代々の土地や、買った時期が古くて契約書が残っていない場合、取得費が分かりません。この場合の扱いを決めているのが、国税庁のタックスアンサー3258です。

取得費が分からない場合には、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができるとされています。また、実際の取得費が売った金額の5パーセント相当額を下回る場合も、5パーセント相当額を取得費とすることができます。国税庁は、3,000万円で売って取得費が不明なら、150万円を取得費とできる、という例を挙げています。

これは救済措置に見えますが、実際には不利に働くことが多い点に注意してください。3,000万円で買った家を3,000万円で売った場合、本来なら譲渡所得はほぼゼロです。ところが取得費が不明で5%ルールを使うと、譲渡所得は3,000万円-150万円-譲渡費用となり、2,800万円前後に対して課税されることになります。売買契約書は、買ったときから売るときまで保管してください。

3,000万円特別控除で、税金がゼロになる場合

自宅を売るなら、所有期間に関係なく3,000万円

マイホームを売った場合の特例が、国税庁のタックスアンサー3302です。マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができるとされています。これを「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。

つまり、譲渡所得が3,000万円以下であれば、課税される金額はゼロになります。買ったときより3,000万円以上高く売れたのでなければ、自宅の売却で所得税・住民税がかかることはない、ということです。多くのケースで税金の心配が不要なのは、この特例があるためです。

対象となる資産は、現に自分が住んでいる家屋のほか、以前に住んでいた家屋も含まれます。ただし後者には期限があり、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限られます。その家屋は、住まなくなった日以後どのような用途に使用してもかまわない、とされています。

使えなくなる条件

この特例には、適用を受けられない条件がいくつかあります。国税庁が挙げているものを整理します。

  • 売った年の前年および前々年に、この特例(被相続人の居住用財産に係る特別控除による場合を除く)またはマイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例の適用を受けていないこと
  • 売った年、その前年および前々年に、マイホームの買換えや交換の特例の適用を受けていないこと
  • 売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
  • 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと

「特別の関係がある人」には、生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれる、とされています。親族間の売買では使えないことが多いので、身内に売る計画がある場合は先に確認してください。

もう1つ重要な注意があります。住宅ローン控除との関係です。国税庁は、住宅借入金等特別控除について、入居した年、その前年または前々年にこのマイホームを売ったときの特例の適用を受けた場合には、その適用を受けることはできない、と書いています。さらに、入居した年の翌年から3年目までのいずれかの年中に、住宅ローン控除の対象となる資産以外の資産を譲渡してこの特例の適用を受ける場合にも、住宅ローン控除は適用されません。売って買い替える場合、3,000万円控除と住宅ローン控除は同時に使えないことがある、ということです。

控除を使うには確定申告が要る

3,000万円特別控除は、自動的に適用されるものではありません。控除の結果として税額がゼロになる場合でも、確定申告が必要です。売却した年の翌年の申告期間に、譲渡所得の内訳書などを添えて申告します。

買ったときの売買契約書、売ったときの売買契約書、仲介手数料の領収書、登記事項証明書。これらは申告のときに必要になります。売却の手続きが終わったあと、翌年の申告までまとめて保管しておいてください。

どの特例が使えるか、住宅ローン控除との併用をどう考えるかは、金額が大きいほど判断の影響も大きくなります。国税庁のタックスアンサーで要件を確認したうえで、税務署または税理士に相談することをおすすめします。

計算してみる。4,000万円で売った3つのケース

前提を置く

売却価格4,000万円、売買契約書1通に印紙税1万円、抵当権抹消の登録免許税2,000円(土地1・建物1)とします。仲介手数料は告示の上限額を支払うものとして138.6万円。司法書士報酬は金額を示さないため、ここでは計算に含めず、別途必要な費用として扱います。

実費の合計は1万円+2,000円=1.2万円。仲介手数料と合わせて139.8万円が、売れば必ずかかる費用です。売却価格から引くと、4,000万円-139.8万円=3,860.2万円。ここからローン残債と税金を引いていきます。

ケースA:ローン残債2,000万円、自宅、取得費4,500万円

3,500万円で買った建物付き土地を、住み続けたまま4,000万円で売却。取得費は購入代金に購入時の諸費用を加えて4,500万円だったとします(建物分は減価償却費相当額を控除済み)。

譲渡所得は、4,000万円-(4,500万円+139.8万円)=マイナス639.8万円。取得費と譲渡費用の合計が売却価格を上回るため、譲渡所得はマイナスで、譲渡所得税・住民税はかかりません。

手取りは、3,860.2万円-2,000万円=1,860.2万円。ここから司法書士報酬と繰上返済手数料を引いた額が、実際に手元に残る現金です。

ケースB:ローン残債3,900万円、自宅、取得費4,500万円

同じ物件で、ローン残債が3,900万円あるケースです。譲渡所得は同じくマイナスなので税金はかかりません。

手取りは、3,860.2万円-3,900万円=マイナス39.8万円。売却代金では残債を返しきれないため、約40万円に加えて司法書士報酬と繰上返済手数料を自己資金で用意する必要があります。査定価格が残債を上回っていても、仲介手数料を引くと足りなくなるという典型例です。査定4,000万円・残債3,900万円で「100万円残る」と考えていると、実際にはマイナスになります。

ケースC:ローン完済済み、取得費不明、相続した自宅

親から相続し、自分も住んでいた家を4,000万円で売却。売買契約書が見つからず取得費が分からないため、5%ルールで200万円(4,000万円×5%)を取得費とします。

譲渡所得は、4,000万円-(200万円+139.8万円)=3,660.2万円。ここで3,000万円特別控除を適用すると、課税される譲渡所得は660.2万円になります。所有期間は親の取得日から引き継がれるため長期譲渡所得にあたり、税率は所得税15%+住民税5%です。

所得税は660.2万円×15%=約99万円、復興特別所得税はその2.1%で約2.1万円、住民税は660.2万円×5%=約33万円。税金の合計は約134万円。手取りは3,860.2万円-134万円=約3,726万円となります。

ここで注目したいのが、売買契約書があれば結果が変わったという点です。仮に親の取得費が3,000万円だと証明できれば、譲渡所得は4,000万円-(3,000万円+139.8万円)=860.2万円。3,000万円控除でゼロになり、税金は約134万円まるごと不要でした。取得費を証明する書類の有無で、100万円単位の差が出ます。

まとめ

売却で手元に残る金額は、売却価格から4つを引いて求めます。仲介手数料、実費、ローン残債、譲渡所得税です。このうち仲介手数料は昭和45年建設省告示第1552号(最終改正 令和6年6月21日)で上限が決まっており、400万円超の部分は3.3%、速算式にすると売買代金×3.3%+6.6万円です。これは上限であって定価ではありません。

実費のうち印紙税は、令和9年3月31日までの契約について軽減措置があり、1,000万円超5,000万円以下なら1万円です。抵当権抹消の登録免許税は不動産1個につき1,000円。これらのうち仲介手数料と印紙税は、譲渡所得の計算で譲渡費用として差し引けます。

税金は売却価格ではなく譲渡所得にかかります。自宅なら3,000万円の特別控除があり、所有期間の長短を問いません。多くのケースで課税されないのはこのためです。ただし取得費が証明できないと5%ルールが適用され、税額が大きく変わります。買ったときの売買契約書は、売るまで必ず保管してください。

そして、査定価格が残債を上回っていても安心はできません。仲介手数料と実費を引いた額と残債を比べる。この順番で計算すれば、売却活動を始める前に持ち出しの有無が分かります。

よくある質問(FAQ)

仲介手数料は値引きできますか

告示が定めているのは上限額であり、下限は定められていません。したがって、上限より低い金額で合意することは制度上可能です。ただし、値引きを求めることで広告掲載や販売活動の優先度が下がる可能性は否定できず、結果として売却価格や期間に影響することもあります。金額の交渉をする場合は、媒介契約を結ぶ前に、どのような販売活動を行うかとあわせて確認してください。国土交通省の解釈・運用の考え方は、代理契約については締結に際してあらかじめ報酬額について説明し合意する必要があるとしています。

売却益が出ても確定申告しなくていい場合はありますか

3,000万円特別控除などの特例を適用した結果として税額がゼロになる場合でも、確定申告は必要です。特例は申告して初めて適用されるものだからです。一方、譲渡所得そのものがマイナスで、特例も適用しない場合は、原則として申告の必要はありません。ただし、マイホームの譲渡損失について損益通算や繰越控除の特例を使う場合は、こちらも申告が必要になります。判断に迷う場合は税務署に確認してください。

取得費の契約書をなくしました。5%ルールしかありませんか

国税庁のタックスアンサー3258が定めているのは、取得費が分からない場合に売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることが「できる」という取扱いです。契約書以外の資料から取得費を合理的に説明できる場合の扱いについては、個別の事情によって判断が分かれるため、税務署または税理士に相談してください。いずれにしても、購入時の売買契約書、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、購入時の登記費用の領収書など、手元に残っている資料を先に集めることをおすすめします。

所有期間5年の判定は、いつを基準にしますか

売った日ではなく、譲渡した年の1月1日が基準です。国税庁のタックスアンサー3202は、長期譲渡所得を「譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの」と定義しています。たとえば2021年6月に取得した物件を2026年8月に売った場合、実際の保有は5年2か月ですが、2026年1月1日時点では4年7か月なので短期譲渡所得になります。税率は所得税30%+住民税9%で、長期の倍近くです。売り時が近い場合は、年をまたぐかどうかで税額が変わります。

800万円以下の物件だと手数料が33万円になるのですか

必ずそうなるわけではありません。告示第七は、低廉な空家等について、媒介に要する費用を勘案して通常の計算方法で算出した金額を超えて報酬を受けることが「できる」とし、その場合でも30万円の1.1倍、つまり33万円を超えてはならないとしています。上限が引き上げられる仕組みであって、一律に33万円になるものではありません。またこの特例を使う場合、媒介契約の締結に際してあらかじめ報酬額について説明し、合意することが必要とされています。契約前に説明がなかった場合は、その点を確認してください。

リフォームしてから売れば、その費用は差し引けますか

国税庁のタックスアンサー3255は、譲渡費用を「土地や建物を売るために直接かかった費用」と定義し、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用は譲渡費用にならない、と明記しています。売却のために行った工事が「直接かかった費用」に当たるかは個別判断になります。一方、購入後に行った改良費や設備費は取得費に加算できる場合があります。いずれも領収書と工事内容の記録を残し、税務署または税理士に確認してください。

手数料の上限も税金の計算も、公的な資料で確認できます

仲介手数料の上限は国土交通省の告示に、譲渡所得の計算と特例は国税庁のタックスアンサーに書かれています。査定書を見る前に、この2つを手元に置いておくと判断がぶれません。

国税庁 譲渡所得の計算のしかた
国税庁 3,000万円の特別控除

本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の物件・投資・税務の判断は、宅地建物取引士・税理士など専門家にご相談ください。税制・告示の情報は2026年9月時点で確認したものです。

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