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中古マンション購入の注意点|重要事項説明書で必ず読む3つの欄と、滞納額が買主に回る仕組み【2026年版】

マンションの外観。中古マンション購入で重要事項説明書のどの欄を読むか

「中古マンション 購入 注意点」で検索すると、注意点を10個、14個と並べた記事がいくらでも出てきます。書いているのは、ほぼすべて不動産会社か住宅ローンを扱う金融機関です。築年数を見ましょう、管理状態を見ましょう、内見では水回りを確認しましょう——間違ってはいませんが、どれも「見ておくといい」という話で、見落とすといくら損をするのかが書かれていません。

実際に金額として跳ね返るものは、内見では見えません。前の所有者が管理費や修繕積立金を滞納していた場合、その支払い義務は買主に引き継がれます。これは慣習ではなく、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第8条が定めていることです。

そして、その滞納額は、契約前に必ず渡される「重要事項説明書」に書かれています。国土交通省が、書けと明記しているからです。この記事では、宅地建物取引業法・同施行規則・国土交通省の解釈運用の考え方・区分所有法だけを根拠に、中古マンションの重要事項説明書のどの欄を、どういう理由で読むのかを整理します。

結論:注意点を数える前に、重要事項説明書の3つの欄を先に読む

内見で分かることと、書面でしか分からないこと

中古マンションの検討では、内見に時間をかける方が多いと思います。日当たり、間取り、水回りの古さ、共用部の清掃状態。これらは確かに現地でしか分かりませんし、住み心地に直結します。

一方で、購入後に「聞いていなかった」となってお金が出ていくものは、ほとんどが書面側にあります。管理費や修繕積立金の滞納、大規模修繕のために積み立てられている総額、規約で決まっている専有部分の使い方の制限、災害警戒区域の指定。これらは物件を何時間見ても分かりません。

そして、そのほぼすべてが重要事項説明書の記載事項として法令で定められています。つまり、読めば書いてあります。問題は、多くの買主が契約当日に初めてその書面を渡され、宅地建物取引士が読み上げるのを聞いて、その場で署名していることです。

結論:この3か所だけは、契約日より前に自分の目で読む

重要事項説明書は、物件によっては20ページを超えます。全部を当日に理解するのは無理です。優先順位をつけるなら、次の3か所になります。いずれも金額か、住み方の制限に直結する項目です。

  • 管理費・修繕積立金の額と、滞納があるかどうか(滞納は買主が引き継ぐ)
  • 修繕積立金の積立総額と、過去の維持修繕の実施状況(今後の値上げと一時金の見通しに直結する)
  • 災害警戒区域・石綿・耐震診断の欄(買主保護のために追加された項目で、該当すれば必ず書かれている)

以下、それぞれが法令上どう位置づけられているかと、書いてあることをどう読むかを順に説明します。まず前提として、重要事項説明書そのものの性格を押さえておきます。

重要事項説明書は何のための書面か。法律が決めている14項目

「契約が成立するまでの間に」渡されることが法律上の義務

重要事項説明について定めているのは、宅地建物取引業法第35条です。条文はこう始まります。宅地建物取引業者は、取得しようとしている宅地又は建物に関し、その売買の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない——。

ここから3つのことが分かります。1つめは、説明は契約の前でなければならないこと。2つめは、口頭だけでなく書面の交付が必要なこと。3つめは、説明するのは宅地建物取引士の資格を持つ人でなければならないことです。営業担当者が資格を持っていない場合、説明の場には別の有資格者が入ります。

「少なくとも次に掲げる事項について」という言い回しにも意味があります。第35条第1項が並べる14の号は最低限であって、これを説明すれば足りるという意味ではありません。買主にとって重要なことが他にあれば、それも説明の対象になりえます。

すべての物件に共通する14項目

第35条第1項が定める説明事項は、売買・交換・貸借に共通する枠組みです。中古マンションの売買に関係する主なものを挙げます。

号 内容
1号 登記された権利の種類・内容と、登記名義人の氏名
2号 都市計画法・建築基準法その他の法令に基づく制限の概要
4号 飲用水・電気・ガスの供給および排水施設の整備状況
6号 区分所有建物の場合の、敷地の権利・規約の定め・管理や使用に関する事項
6号の2 既存建物の場合、建物状況調査を実施しているか、その結果の概要と、設計図書・点検記録の保存状況
7号 代金以外に授受される金銭の額と、その目的
8号・9号 契約の解除に関する事項/損害賠償額の予定または違約金
13号 契約不適合を担保すべき責任の履行に関する措置を講ずるかどうかと、その概要
14号 買主の利益の保護に資する事項として、命令で定めるもの

この表のうち、中古マンションで内容が大きく膨らむのが6号と14号です。どちらも条文本体には「国土交通省令で定めるもの」としか書かれておらず、具体的な中身は施行規則に委ねられています。次の章で、その中身を見ます。

中古マンションだけに課される10の記載事項

施行規則第16条の2が並べる10項目

第35条第1項6号を受けて、宅地建物取引業法施行規則第16条の2が、区分所有建物についての説明事項を10個定めています。一戸建てには存在しない、マンション特有の欄です。

号 説明しなければならないこと
1号 一棟の建物の敷地に関する権利の種類と内容
2号 共用部分に関する規約の定めがあるときは、その内容
3号 専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときは、その内容
4号 建物や敷地の一部を特定の者にのみ使わせる規約の定めがあるときは、その内容
5号 費用を特定の者にのみ減免する規約の定めがあるときは、その内容
6号 計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う規約の定めがあるときは、その内容と既に積み立てられている額
7号 所有者が負担しなければならない通常の管理費用の額
8号 管理が委託されているときは、委託を受けている者の氏名(商号)と住所
9号 管理者等がマンション管理業者である場合(管理業者管理者方式)は、その旨
10号 維持修繕の実施状況が記録されているときは、その内容

10項目のうち、2号から5号までは規約の話です。ペットの可否、楽器の使用、事務所としての利用、専用庭やルーフバルコニーの使用権。「規約の定めがあるときは、その内容」という書き方なので、定めがなければ空欄になります。空欄だから何をしてもいいという意味ではなく、規約そのものを別途確認する必要があります。

3号の「用途その他の利用の制限」は、住み方を縛る

特に見落とされやすいのが3号です。専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあれば、その内容を説明しなければならないとされています。ペット飼育の禁止や頭数制限、リフォーム時の床材の遮音等級の指定、民泊としての利用禁止、事務所利用の可否などがここに入ります。

リノベーション前提で中古マンションを買う場合、この欄が計画を左右します。フローリングへの張り替えに管理組合の承認が要る、遮音等級の下限が決まっている、水回りの位置を動かせない、といった制限は規約に書かれています。物件価格とリフォーム費用の合計で予算を組んでいる場合、ここを読まずに契約すると、想定していた工事ができないという事態が起こります。

なお、国土交通省の解釈・運用の考え方では、規約の内容についての説明義務を業者に課した趣旨として、規約が分譲業者によって策定され管理組合が承認する形で定められることが多く、購入者にとって不利な金銭的負担が定められている規約も存在する、という行政監察報告書(平成11年11月)の指摘が挙げられています。そのうえで同省は、この規定が中古マンションの売買にも適用され、その場合は売買の際に存在する管理規約について調査・説明を行うことになる、と述べました。

重要事項説明書はどこから来ているか 宅地建物取引業法 第35条第1項 契約が成立するまでの間に、宅建士が書面で説明する 6号 区分所有建物 マンション特有の事項 14号イ 買主の保護 災害・石綿・耐震など 施行規則 第16条の2 施行規則 第16条の4の3 1号 敷地の権利 2号 共用部分の規約 3号 専有部分の利用制限 4号 専用使用権 5号 費用の減免 6号 修繕積立金と積立総額 7号 管理費用の額 1号 造成宅地防災区域 2号 土砂災害警戒区域 3号 津波災害警戒区域 3号の2 水害ハザードマップ 4号 石綿の調査結果 5号 耐震診断の内容 6号 住宅性能評価 国交省「解釈・運用の考え方」が上乗せしていること 修繕積立金・管理費に滞納があるときは、その額を告げる 積立額はできる限り直近の数値を、時点を明示して記載する

必ず読む欄① 管理費・修繕積立金の「滞納額」は買主が引き継ぐ

滞納額を告げることは、国交省が明記している

施行規則第16条の2の条文には「滞納」という言葉は出てきません。6号は「積立てを行う旨の規約の定めがあるときは、その内容及び既に積み立てられている額」、7号は「通常の管理費用の額」とあるだけです。

ところが、国土交通省が示している「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」には、6号の解説としてこう書かれています。当該区分所有建物に関し修繕積立金等についての滞納があるときはその額を告げることとする——。7号についても同様に、管理費用についての滞納があればその額を告げることとすると明記されています。

つまり、滞納があるのに重要事項説明書の該当欄が空欄、あるいはゼロと書かれていた場合、それは国土交通省が示す運用に反していることになります。この欄は、読むだけでなく、「滞納なし」と書かれているかを確認する欄だと考えてください。

なぜ買主が払うことになるのか。区分所有法第8条

滞納額が重要なのは、前の所有者の未払いが買主に引き継がれるからです。根拠は建物の区分所有等に関する法律です。

まず第7条が、管理者や管理組合法人が区分所有者に対して有する債権について、その区分所有者の区分所有権および建物に備え付けた動産の上に先取特権を有すると定めています。管理費や修繕積立金の未払いは、この債権にあたります。

そのうえで第8条が、条文としては1文だけの短い規定を置いています。前条第1項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる——。特定承継人とは、売買などでその区分所有権を取得した人、つまり買主のことです。売主が滞納したまま売却しても、管理組合は新しい所有者に請求できる、ということになります。

読み方と、書いてあったときの対処

重要事項説明書の管理費・修繕積立金の欄では、次の順に見てください。1つめは月額です。管理費と修繕積立金は別の欄に分かれています。2つめは滞納の有無と、あればその額。3つめは、その金額がいつ時点のものかです。

3つめが効いてきます。国土交通省の解釈・運用の考え方は、積立額について「この積立て額は時間の経緯とともに変動するので、できる限り直近の数値(直前の決算期における額等)を時点を明示して記載することとする」と述べています。管理費用の額についても、扱いは同じです。日付の記載がない金額は、いつのものか分かりません。

滞納が書かれていた場合、取るべき対応は決済までに売主が清算することを売買契約の条件にすることです。金額が大きい場合は、売買代金から差し引く形で調整されることもあります。いずれにせよ、契約前に分かっていれば交渉できますが、引き渡し後に判明すると、請求書は買主のところへ届きます。これが、契約当日にその場で読むのでは間に合わない理由です。

必ず読む欄② 修繕積立金の積立総額と、維持修繕の実施状況

積立総額は、将来の一時金の予兆になる

施行規則第16条の2第6号は、積立ての規約の定めの内容とあわせて「既に積み立てられている額」を説明事項としています。この数字は、月々の修繕積立金の額とは別物です。

国土交通省の解釈・運用の考え方によれば、ここでいう修繕積立金等とは、当該一棟の建物に係る修繕積立金積立総額および売買の対象となる専有部分に係る修繕積立金等を指すとされています。つまり、マンション全体でいくら貯まっているかと、この住戸について積み立てられている分の両方です。

この総額が、そのマンションの修繕計画に対して十分かどうかが判断材料になります。大規模修繕には数千万円から数億円がかかります。積立総額が明らかに小さければ、修繕のタイミングで積立金の値上げか、一時金の徴収か、借入れのいずれかが必要になります。月々の修繕積立金が安いマンションは、住居費が安いのではなく、支払いを先送りしている可能性があります。

維持修繕の実施状況が「記録されているとき」

第10号は、維持修繕の実施状況が記録されているときは、その内容を説明事項としています。ここでいう維持修繕について、国土交通省の解釈・運用の考え方は、第6号と同様に共用部分における大規模修繕・計画修繕を想定しているが、通常の維持修繕や専有部分の維持修繕を排除するものではない、と補足しました。

注目したいのは「記録されているとき」という条件です。記録がなければ説明のしようがないため、この欄が空欄のケースがあります。築20年を超えるマンションで維持修繕の実施状況が空欄なら、それ自体が管理状態を示す情報です。大規模修繕を一度も実施していないのか、実施したが記録が残っていないのか、管理組合に確認する価値があります。

実施状況が書かれている場合は、直近の大規模修繕がいつ行われたかを見ます。一般に大規模修繕は10年から15年の周期で計画されますから、前回から10年以上経っていれば、購入後まもなく次が来る可能性があります。積立総額と合わせて見ると、値上げや一時金の見通しが立てやすくなります。

管理の委託先と、その登録番号

第8号は、管理が委託されているときの受託者の氏名または商号と住所を説明事項としています。ここについては、国土交通省の解釈・運用の考え方がさらに踏み込んだ運用を示しました。管理を受託している者がマンションの管理の適正化の推進に関する法律第44条の登録を受けている者である場合には、重要事項説明書に商号または名称とその者の登録番号、および住所を記載し、その旨説明することとする、というものです。

さらに、管理の委託先のほか、マンション管理業者が受託する管理事務の内容等の管理受託契約の主たる内容もあわせて説明することが望ましいとも書かれています。望ましい、という表現なので義務ではありませんが、清掃の頻度や管理員の勤務形態を知りたい場合は、この根拠を示して聞くことができます。

なお第9号は、管理者等がマンション管理業者である場合、いわゆる管理業者管理者方式を採用している場合に、その旨を説明するというものです。管理組合の理事会に代わって管理業者が管理者を務める方式で、居住者の負担は減りますが、業者へのチェックが働きにくいという指摘もあります。該当する場合はこの欄に記載されます。

必ず読む欄③ 災害・石綿・耐震の6項目

第35条1項14号イと、施行規則第16条の4の3

第35条第1項14号イは、事業を営む場合以外の場合において宅地または建物を買おうとする個人の買主の利益の保護に資する事項を、命令で定めるとしています。これを受けたのが施行規則第16条の4の3です。建物の売買では、次の6項目が該当します。

号 該当するときに説明されること
1号 宅地造成及び特定盛土等規制法により指定された造成宅地防災区域内にあるとき、その旨
2号 土砂災害防止法により指定された土砂災害警戒区域内にあるとき、その旨
3号 津波防災地域づくりに関する法律により指定された津波災害警戒区域内にあるとき、その旨
3号の2 水防法施行規則に基づき市町村長が提供する図面に位置が表示されているとき、その図面における所在地
4号 石綿(アスベスト)の使用の有無の調査結果が記録されているとき、その内容
5号 昭和56年6月1日より前に新築工事に着手した建物が耐震診断を受けているとき、その内容

3号の2が、いわゆる水害ハザードマップの説明です。市町村が水防法施行規則第11条第1号により作成した図面に物件の位置が表示されているとき、その図面における物件の所在地を説明することとされています。「この物件は浸水想定区域です」という説明ではなく、ハザードマップ上のどこに位置するかを示すという建て付けです。

「記録されているとき」「受けたものであるとき」の意味

4号と5号は、条件つきの説明義務である点に注意が必要です。石綿については「調査の結果が記録されているとき」、耐震診断については「耐震診断を受けたものであるとき」に、その内容を説明することとされています。

これは裏を返すと、調査や診断が行われていなければ、説明することがないということです。重要事項説明書の該当欄に「調査記録なし」と書かれていても、それは石綿が使われていないことを意味しません。同じく「耐震診断未実施」は、耐震性に問題がないという意味ではありません。

5号の対象が「昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものを除く」とされているのは、この日から新耐震基準が適用されているためです。それより前に着工した建物、いわゆる旧耐震のマンションで診断が未実施なら、耐震性について客観的な情報が存在しないことになります。住宅ローン控除や地震保険の割引の条件に関わる場合もあるため、この欄は築年数とセットで見てください。

物件の担保評価は、金融機関の91.0%が住宅ローンの審査項目としています(国土交通省 令和7年度調査)。審査で何がどの順番で見られるかは住宅ローン審査に落ちる理由で整理しました。

6号の2の建物状況調査(インスペクション)

もう1つ、既存建物に固有の項目があります。第35条第1項6号の2です。当該建物が既存の建物であるときは、建物状況調査を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要と、設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況を説明することとされています。

ここも「実施しているかどうか」が説明対象です。未実施なら、未実施であることが説明されます。買主として建物状況調査の結果を知りたい場合は、媒介契約の段階で調査を実施する業者をあっせんしてもらう、あるいは自分で手配するという選択になります。

もう1つの「書類の保存の状況」は見落とされがちですが、実務では効いてきます。設計図書が残っていないマンションでは、大規模なリノベーションの際に構造上の判断ができず、工事範囲が制限されることがあります。リノベーション前提で購入するなら、この欄も先に見ておいてください。

いつ渡されるか。読む時間をつくる方法

法律が求めているのは「契約成立まで」であって「何日前」ではない

第35条第1項は「契約が成立するまでの間に」と定めているだけで、何日前に渡さなければならないという期限は置いていません。したがって、契約当日に説明を受け、その直後に契約するという流れも、法律には違反しません。

ただし、これは事前に写しをもらってはいけないという意味ではありません。買主から「契約日より前に重要事項説明書の写しを見せてほしい」と依頼することは自由で、多くの不動産会社は応じます。法律上の権利ではないので断られることもありますが、依頼すること自体に問題はありません。

依頼のしかたとしては、買付申込みを入れる段階で「重要事項説明書の案を、契約日の数日前にいただけますか」と伝えるのが現実的です。管理会社への照会に時間がかかるため、直前まで内容が固まらないこともあります。その場合でも、管理費・修繕積立金・滞納の有無だけは先に確認できないかを聞いてみてください。

当日に読む場合の優先順位

事前に入手できなかった場合は、説明の場で順番を決めて読むことになります。宅地建物取引士は書面の順に読み上げますが、買主の側から「先にこの欄を確認させてください」と伝えることはできます。

優先するのは、これまで見てきた3か所です。管理費・修繕積立金の額と滞納の有無、積立総額と維持修繕の実施状況、そして災害・石綿・耐震の欄。この3か所に加えて、専有部分の利用制限(規則16条の2第3号)を見ておけば、契約後に「聞いていなかった」となる要素の多くはカバーできます。

読んで分からない箇所があれば、その場で聞いてください。説明を受けたうえで署名する書面なので、分からないまま署名する必要はありません。疑問が残るなら、日を改めて契約することも選択肢です。第35条が説明を契約前と定めているのは、判断する時間を買主に与えるためです。

区分所有法の規約と議事録は、重説の外にある

最後に、重要事項説明書だけでは足りない部分に触れておきます。規則第16条の2は「規約の定めがあるときは、その内容」を説明事項としていますが、規約そのものの全文が添付されるとは限りません。また、管理組合の総会議事録は説明事項に入っていません。

管理組合が現在どんな課題を抱えているか、修繕計画の見直しが議論されているか、滞納者への対応が議題になっているかといった情報は、議事録を読まなければ分かりません。直近2〜3年分の総会議事録と、管理規約の全文、長期修繕計画表。この3点は、重要事項説明書とは別に、売主または管理会社を通じて依頼する価値があります。

これらの提供は法令上の義務ではないため、必ず入手できるとは限りません。ただ、依頼して断られたという事実自体も、判断材料の1つになります。

まとめ

中古マンションの注意点を数で覚える必要はありません。金額に直結する情報のほとんどは、契約前に渡される重要事項説明書に、法令上の義務として記載されています。宅地建物取引業法第35条が、契約の成立前に宅地建物取引士が書面を交付して説明することを義務づけているからです。

優先して読むのは3か所です。1つめは管理費・修繕積立金の額と滞納の有無。国土交通省の解釈・運用の考え方は、滞納があればその額を告げることとしており、区分所有法第8条によって、売主の未払いは買主に請求できます。2つめは修繕積立金の積立総額と維持修繕の実施状況で、将来の値上げや一時金の見通しにつながります。3つめは災害警戒区域・水害ハザードマップ・石綿・耐震診断の欄です。

これらは内見では分かりません。契約当日に初めて読むのでは、交渉の余地がなくなります。買付申込みの段階で写しを依頼し、あわせて管理規約の全文、直近の総会議事録、長期修繕計画表を求める。ここまでやって、ようやく物件の全体像が見えます。

よくある質問(FAQ)

前の所有者の滞納は、本当に買主が払うことになりますか

管理組合から請求されうる立場になります。建物の区分所有等に関する法律第7条は、管理者等が区分所有者に対して有する債権について先取特権を認めており、第8条は「前条第1項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる」と定めています。売買で区分所有権を取得した買主は特定承継人にあたります。支払った分を売主に請求できるかは売買契約の内容によるため、契約前に滞納の有無を確認し、決済までに清算することを条件に入れておくのが確実です。

重要事項説明書は契約日より前にもらえますか

法律は「契約が成立するまでの間に」交付して説明することを義務づけているだけで、何日前という期限は定めていません。したがって当日交付も違法ではありません。一方で、事前に写しを求めること自体に制限はなく、多くの不動産会社は応じます。買付申込みの段階で依頼しておくのが現実的です。管理会社への照会に時間がかかり直前まで確定しないこともあるため、その場合は管理費・修繕積立金・滞納の有無だけでも先に確認できないか聞いてみてください。

「石綿の調査記録なし」と書かれていました。安全ということですか

そうではありません。施行規則第16条の4の3第4号は「石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているとき」にその内容を説明するという条件つきの規定です。調査が行われていなければ記録が存在せず、説明する内容もありません。つまり、記録がないことは石綿が使われていない証明にはならない、ということです。同じく耐震診断についても、第5号は「耐震診断を受けたものであるとき」にその内容を説明するという規定なので、未実施であれば耐震性に関する客観的な情報は存在しないことになります。

ペット可かどうかは重要事項説明書で分かりますか

規約に定めがあれば分かります。施行規則第16条の2第3号が「専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときは、その内容」を説明事項としており、ペットの飼育制限はここに含まれます。ただし説明されるのは規約の定めの内容であり、細則で頭数や体格が制限されている場合など、規約本体に書かれていない運用は読み取れないことがあります。飼育を前提に購入するなら、規約と細則の全文を別途確認してください。

修繕積立金が安い物件は、お得ということですか

そうとは限りません。施行規則第16条の2第6号は、月々の額とは別に「既に積み立てられている額」を説明事項としています。国土交通省の解釈・運用の考え方によれば、これは一棟の建物に係る修繕積立金積立総額と、売買対象の専有部分に係る修繕積立金等を指します。月額が安くても積立総額が計画に対して不足していれば、大規模修繕の際に値上げ、一時金の徴収、借入れのいずれかが必要になります。月額だけでなく総額と維持修繕の実施状況を合わせて見てください。

管理組合の総会議事録は見せてもらえますか

重要事項説明の対象には入っていないため、法令上の提供義務はありません。実務では、売主または管理会社を通じて依頼すれば提供されることが多く、直近2〜3年分を求めるのが一般的です。修繕計画の見直しや滞納者への対応、管理会社の変更といった議題は、重要事項説明書には現れません。依頼して入手できない場合、その事実自体も管理状態を推し量る材料になります。あわせて管理規約の全文と長期修繕計画表も求めてください。

条文と運用は、e-Govと国土交通省で確認できます

重要事項説明書に何を書くかは宅地建物取引業法と施行規則が、滞納額の扱いは国土交通省の解釈・運用の考え方が定めています。担当者に確認する前に、条文を手元に置いておくと話が早く進みます。

e-Gov 宅地建物取引業法
国土交通省 解釈・運用の考え方

本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の物件・投資・税務の判断は、宅地建物取引士・税理士など専門家にご相談ください。法令・運用の情報は2026年9月時点で確認したものです。

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