
「手付金は物件価格の5%から10%が相場です」と説明されます。ただ、この数字に法律上の根拠はありません。法律が定めているのは上限20%で、しかもそれは売主が不動産会社のときだけです。
宅地建物取引業法は、業者が自ら売主となる取引について、買主を守るための規定をいくつも置いています。手付の額の制限、手付金等の保全措置、損害賠償額の予定の制限。これらをまとめて8種制限と呼びます。
裏を返すと、個人が売主で不動産会社が仲介しているだけの取引には、これらが適用されません。中古住宅の多くがこちらです。同じ「手付金」でも、守られ方がまったく違います。
この記事では、宅地建物取引業法第38条・第39条・第41条・第41条の2と、同法施行令第3条の5だけを根拠に、手付金の上限・保全措置・解除の期限を整理します。
結論:規制がかかるのは「売主が業者のとき」だけ
条文はすべて「自ら売主となる」と書いている
第39条第1項は「宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して」と始まります。第38条も「宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において」。第41条も「自ら売主となるものに関しては」。
いずれも主語が同じです。不動産会社が売主本人である場合に限られます。仲介する立場では適用されません。
売主が誰かは、契約書と重要事項説明書で分かる
新築の分譲マンションや建売住宅は、売主が不動産会社です。この場合は規制がかかります。
一方、中古の戸建てやマンションは、個人が売主で不動産会社が仲介しているケースが多くなります。この場合、手付の上限も保全措置も適用されません。買取再販の物件なら業者が売主なので適用されます。
売主が誰かは、売買契約書の当事者欄と、重要事項説明書の冒頭で確認できます。重要事項説明書の読み方は中古マンション購入の注意点で扱いました。
結論:確認する順番
物件を決めて契約に進むとき、手付金まわりで確認することは4つに整理できます。順番も決まっています。
- 売主は業者か個人か(これで適用される規定が決まる)
- 手付の額は代金の何%か(業者売主なら20%が上限)
- 保全措置は講じられているか(業者売主で、一定額を超える場合)
- 手付解除の期限はいつまでか(契約書に日付が入っていることが多い)
手付の上限は代金の20%(39条1項)
条文は一文
手付の上限を定めているのは、宅地建物取引業法第39条第1項です。条文は短く、読めば意味が取れます。
第39条第1項はこうです。「宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二を超える額の手付を受領することができない」。
10分の2、つまり20%です。3,000万円の物件なら600万円が上限になります。
「5%から10%が相場」に法律上の根拠はない
実務でよく言われる5%から10%という数字は、法律が定めたものではありません。上限は20%で、下限については何も定められていません。
手付の額は当事者の合意で決まります。「相場だからこの金額です」と言われたら、それは慣行の説明であって、法律の説明ではありません。
金額の大小には、それぞれ意味があります。手付が大きいほど、後で手付解除をするときに放棄する額が大きくなる。小さいほど、売主側から倍返しで解除されやすくなる。どちらの立場で考えるかで、望ましい額が変わります。
売主が個人なら、20%の上限もかからない
繰り返しになりますが、この規定は業者が自ら売主となる場合のものです。個人が売主の中古住宅では、20%を超える手付を求めることも制度上は可能です。
実務でそうした契約は多くありません。仲介する業者が標準的な契約書式を使うためです。ただ、それは慣行がそうなっているだけで、法律が止めているわけではありません。
「法律で20%までと決まっているから安心」という理解は、売主が個人の場合には成り立たないということです。金額に違和感があれば、根拠を聞いてください。
手付解除の期限は「履行に着手するまで」
39条2項が定める2つの解除
第39条第2項は、業者が自ら売主となる売買で手付を受領したとき、「その手付がいかなる性質のものであつても、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる」としています。
買主は手付を放棄すれば解除でき、売主は手付の倍額を現実に提供すれば解除できる。「いかなる性質のものであつても」とあるので、契約書に「証約手付」などと書かれていても、この効果が発生します。
ただし「履行に着手した後」は使えない
同項のただし書きが重要です。「ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない」。
相手方が履行に着手すると、手付解除はできなくなります。ここでいう「相手方」は、解除しようとする側から見た相手です。買主が解除したいなら売主の着手、売主が解除したいなら買主の着手が基準になります。
何が「履行の着手」に当たるかは個別の判断になりますが、実務では契約書に「手付解除の期限」として具体的な日付を定めることが一般的です。契約書のその欄を確認してください。
買主に不利な特約は無効
第39条第3項は、「前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする」としています。
「手付解除は契約後7日以内に限る」といった、法律より買主に不利な特約は効力を持ちません。逆に、買主に有利な特約は有効です。片面的な強行規定になっています。
なお、「倍額を現実に提供して」という文言にも意味があります。売主が解除するには、口頭で伝えるだけでなく実際に倍額を用意して提供する必要があるからです。
保全措置:未完成なら5%、完成済みなら10%が境目
「手付金等」の定義が広い
第41条第1項は、保全措置の対象となる「手付金等」を次のように定義しています。
手付金だけではありません。名義を問わず、代金に充当されるもので、契約後・引渡し前に支払うものはすべて含まれます。中間金や内金もここに入ります。
未完成物件(41条)と完成物件(41条の2)で境目が違う
保全措置が必要になるラインは、物件の状態で変わります。
| 物件の状態 | 根拠 | 保全措置が不要な範囲 |
|---|---|---|
| 工事完了前(未完成) | 第41条第1項ただし書 | 代金の額の100分の5以下かつ政令で定める額以下 |
| 工事完了後(完成済み) | 第41条の2第1項ただし書 | 代金の額の10分の1以下かつ政令で定める額以下 |
政令で定める額は、宅地建物取引業法施行令第3条の5が「千万円とする」と定めています。
つまり、未完成物件なら「代金の5%以下」かつ「1,000万円以下」の両方を満たす場合のみ保全措置が不要。どちらか一方でも超えれば必要になります。
すでに登記が済んでいれば不要
もう1つの例外があります。両条のただし書きは、「当該宅地若しくは建物について買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の登記をしたとき」にも保全措置を不要としています。
登記が移っていれば、業者が倒産しても物件は買主のものです。返還を求める場面自体が生じないので、保全する必要もない。そういう整理になっています。
裏返すと、保全措置が問題になるのは「お金は払ったが、登記も引渡しもまだ」という期間だけです。この期間が長いほどリスクは大きく、だから未完成物件のほうが基準は厳しくなります。
措置の中身は3種類
保全措置として認められる方法は、条文が列挙しています。
- 保証委託契約(41条1項1号):銀行等が返還債務を連帯保証することを委託する契約を結び、その書面を買主に交付する
- 保証保険契約(41条1項2号):保険事業者との間で、返還債務の不履行による損害を埋める保証保険契約を結び、保険証券等を買主に交付する
- 手付金等寄託契約と質権設定契約(41条の2第1項1号・2号):完成物件のみ。指定保管機関が手付金等を保管し、その返還請求権に質権を設定する
いずれも書面が買主に交付されます。保証書、保険証券、寄託契約を証する書面のいずれかです。受け取っていなければ、措置が講じられていない疑いがあります。
措置を講じないときは、支払わなくていい
条文に明記されている
ここは知っておく価値のある部分です。第41条第4項はこうなっています。
完成物件についても、第41条の2第5項に同趣旨の規定があります。
保全措置が講じられていなければ、買主は手付金等を支払わないことができる。これは条文に書かれた権利です。支払いを拒んでも債務不履行にはなりません。
順番が決まっている
第41条第1項は「次の各号のいずれかに掲げる措置を講じた後でなければ(中略)手付金等を受領してはならない」としています。
措置が先、受領が後です。「あとで保証書をお渡しします」という進め方は、条文の順序と逆になります。
金額が境目を超える取引では、契約時に保証書や保険証券が手元に来るはずです。来ていなければ、その場で確認してください。
保全措置は「売主の倒産」に備えるもの
何のための制度かを押さえておくと、判断しやすくなります。
保全措置が守るのは、手付金等を払ったあと、引渡しを受ける前に売主が倒産した場合です。未完成物件では契約から引渡しまでが長く、その間のリスクが大きい。だから未完成のほうが基準が厳しく、5%で線が引かれています。
逆に、引渡しと同時に残代金を払う取引では、そもそも保全の対象になる期間がありません。基準の違いは、リスクにさらされる期間の違いから来ています。
違約金も20%で頭打ち(38条)
損害賠償額の予定と違約金は合算する
第38条第1項を読みます。業者が自ら売主となる売買契約において、債務不履行を理由とする解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定めるときは、「これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない」。
ここでも20%です。そして第2項は「前項の規定に反する特約は、代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする」としています。
契約全体が無効になるのではなく、20%を超える部分だけが無効になる構造です。
手付解除と違約解除は別物
混同されやすいので整理します。
- 手付解除(39条2項):理由を問わず、手付を放棄すれば解除できる。ただし相手方が履行に着手するまで
- 違約解除(38条が上限を定める):相手方の債務不履行を理由とする解除。違約金または損害賠償が発生する
履行に着手したあとに「やっぱりやめたい」となった場合、手付解除はできません。契約を解除するなら債務不履行となり、違約金の条項が適用されます。
契約不適合責任の特約にも制限がある
関連する規定として、第40条があります。業者が自ら売主となる売買契約において、種類または品質に関する契約不適合を担保すべき責任について、民法第566条に規定する期間を「その目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き」、同条より買主に不利となる特約をしてはならないとしています。第2項により、反する特約は無効です。
つまり、業者が売主なら引渡しから2年以上の期間を確保する必要があります。ここも売主が個人なら適用されません。
個人が売主の中古住宅は、これらが適用されない
何が変わるか
ここまで見てきた規定は、すべて業者が自ら売主となる場合のものです。個人が売主で業者は仲介という取引では、次のようになります。
| 項目 | 業者が売主 | 個人が売主(業者は仲介) |
|---|---|---|
| 手付の上限 | 代金の20% | 法律上の定めなし |
| 手付金等の保全 | 一定額を超えれば義務 | 義務なし |
| 違約金・損害賠償の予定 | 合算で代金の20%まで | 法律上の定めなし |
| 契約不適合責任の期間 | 引渡しから2年以上 | 当事者の合意で決まる |
だから契約書を読む必要がある
個人が売主の場合、これらはすべて売買契約の取り決めで決まります。法律が最低ラインを引いてくれない分、契約書に書かれた内容がそのまま効きます。
とくに契約不適合責任の期間は、中古住宅では「引渡しから3か月」といった短い期間が設定されることがあります。業者が売主なら2年以上が必要ですが、個人が売主なら合意次第です。
それでも仲介業者には説明義務がある
売主が個人でも、仲介する業者には重要事項説明の義務があります。契約不適合責任の内容や、手付金等の保全措置の有無は、重要事項説明書に記載される事項に含まれます。
説明を受けたうえで、自分で判断するという構造です。業者売主のように、法律が自動的に守ってくれるわけではありません。
だからこそ、重要事項説明書を契約日より前に受け取って読む時間を作る意味があります。手順は中古マンション購入の注意点に書きました。
手付金と混同されやすい「申込証拠金」
契約前に払うお金は、手付金ではない
物件を押さえるために、契約前に「申込証拠金」「預り金」といった名目でお金を求められることがあります。金額は数万円から10万円程度が多いようです。
これは手付金ではありません。手付金は売買契約の締結に際して授受されるもので、宅地建物取引業法第39条も「売買契約の締結に際して」と書いています。契約前に払うお金は、別の扱いになります。
申込みを撤回したら、返還を拒むことは禁止されている
ここが重要です。宅地建物取引業法第47条の2第3項は、相手方等の利益の保護に欠ける行為として国土交通省令で定めるものを禁止しています。その省令が同法施行規則第16条の11で、第2号の内容は次のとおりです。
申込みを撤回したときに預り金の返還を拒むことは、業法で禁止された行為です。「申込証拠金はキャンセルしても返せません」という説明は、この条文に反します。
同じ第16条の11第3号は、「宅地建物取引業者の相手方等が手付を放棄して契約の解除を行うに際し、正当な理由なく、当該契約の解除を拒み、又は妨げること」も禁止しています。手付解除を妨げることも、禁止行為です。
50万円以上なら、保全措置の有無が重要事項説明に出る
預り金についても、別の仕組みがあります。同法施行規則第16条の3は、重要事項説明の対象となる「支払金又は預り金」を「代金、交換差金、借賃、権利金、敷金その他いかなる名義をもつて授受されるかを問わず、宅地建物取引業者の相手方等から宅地建物取引業者がその取引の対象となる宅地又は建物に関し受領する金銭」と定義しています。
ただし、次のものは除かれます。
- 受領する額が50万円未満のもの
- 第41条・第41条の2により保全措置が講ぜられている手付金等
- 売主または交換の当事者である業者が登記以後に受領するもの
- 報酬
つまり、50万円以上の支払金・預り金を業者が受領する場合、保全措置を講ずるかどうかが重要事項説明書に記載されます。措置の内容は同規則第16条の4が定めており、銀行等との一般保証委託契約などです。
名目ではなく、性質で判断する
整理すると、契約前後のお金は次のように分かれます。
- 申込証拠金・預り金:契約前。撤回時の返還拒否は禁止行為(規則16条の11第2号)。50万円以上なら保全措置の有無が重要事項説明の対象
- 手付金:契約締結に際して授受。業者売主なら20%が上限で、放棄による解除ができる
- 中間金・内金:契約後・引渡し前。手付金等として保全措置の対象になる
条文が使っているのは「いかなる名義をもつて授受されるかを問わず」という書き方です。呼び名ではなく、いつ・何のために払うお金かで扱いが決まります。領収書に書かれた名目だけを見て判断しないでください。
契約前に確認する5項目
この順で見る
- 売主は誰か。契約書の当事者欄と重要事項説明書の冒頭。業者か個人かで、適用される規定が変わります
- 手付の額は代金の何%か。業者売主なら20%が上限。個人売主なら上限はありません
- 手付解除の期限はいつか。契約書に日付が入っているのが一般的です。その日を過ぎると手付解除はできません
- 保全措置の有無と、その書面。業者売主で金額が境目を超えるなら、保証書・保険証券・寄託契約書面のいずれかが交付されます
- 違約金の額と、契約不適合責任の期間。業者売主なら20%まで・2年以上。個人売主なら契約書の記載がすべてです
3番目を手帳に書く
5つのうち、後から効いてくるのが3番目です。手付解除の期限は契約時に決まりますが、その後の数週間で忘れられがちです。
住宅ローンの審査結果が出るのが期限の後になる場合、ローン特約(融資が否決されたときに契約を白紙に戻す条項)の期限とあわせて確認してください。2つの期限が別に設定されていることがあります。
保全措置の書面が来ないとき
業者が売主で、手付金等の額が境目を超えているのに書面が交付されない場合、第41条第4項・第41条の2第5項により買主は手付金等を支払わないことができます。
まず担当者に、保全措置をどの方法で講じるのかを確認してください。それでも書面が出てこない場合は、免許を出した行政庁に相談するという選択肢があります。相談先の調べ方は不動産の囲い込みとはで扱いました。
まとめ
手付金の「5%から10%が相場」という説明に、法律上の根拠はありません。宅地建物取引業法が定めているのは代金の20%という上限で、しかもそれは業者が自ら売主となる場合に限られます。
手付解除については、第39条第2項が「その手付がいかなる性質のものであつても」買主は放棄、売主は倍額を現実に提供して解除できるとしています。ただし相手方が契約の履行に着手した後はできません。買主に不利な特約は無効です。
保全措置の境目は、未完成物件なら代金の5%、完成物件なら10分の1。あわせて施行令第3条の5が定める1,000万円という額も基準になり、いずれか一方でも超えれば措置が必要です。所有権移転の登記が済んでいれば不要になります。
そして、条文に明記された権利があります。「措置を講じないときは、買主は、手付金等を支払わないことができる」。措置が先、受領が後という順序です。
最後に、いちばん大事な点をもう一度。これらはすべて、売主が業者のときの話です。個人が売主の中古住宅では、手付の上限も保全措置も違約金の上限も適用されません。契約書に書かれた内容がそのまま効きます。だから、売主が誰かを最初に確認してください。
よくある質問(FAQ)
手付金は物件価格の何%にすべきですか
法律が定めているのは上限だけで、下限や「適正な額」の定めはありません。宅地建物取引業法第39条第1項は、業者が自ら売主となる場合について「代金の額の十分の二を超える額の手付を受領することができない」としています。20%が上限で、それ以下であれば当事者の合意で決まります。実務で言われる5%から10%という数字は慣行であって、法律の根拠はありません。金額の大小には意味があり、手付が大きいほど後で手付解除をするときに放棄する額が大きくなり、小さいほど売主側から倍返しで解除されやすくなります。どちらのリスクを重く見るかで、望ましい額は変わります。
契約後に気が変わったら、手付を放棄すれば解除できますか
相手方が契約の履行に着手する前であれば、できます。宅地建物取引業法第39条第2項は、業者が自ら売主となる売買について「買主はその手付を放棄して(中略)契約の解除をすることができる」としたうえで、「ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない」と定めています。何が履行の着手に当たるかは個別の判断になるため、実務では契約書に「手付解除の期限」として具体的な日付を定めることが一般的です。契約書のその欄を確認し、日付を控えておいてください。なお、期限を過ぎたあとに解除する場合は債務不履行となり、違約金の条項が適用されます。
保全措置が講じられているかは、どう確認しますか
書面で確認します。宅地建物取引業法第41条は、保証委託契約の場合は銀行等が返還債務を連帯保証することを約する書面を、保証保険契約の場合は保険証券またはこれに代わるべき書面を、それぞれ買主に交付することを求めています。完成物件で指定保管機関を使う場合は、手付金等寄託契約を証する書面と質権設定契約を証する書面です。いずれも交付されるので、受け取っていなければ措置が講じられていない可能性があります。また、同条第1項は「措置を講じた後でなければ手付金等を受領してはならない」としており、措置が先・受領が後という順序になっています。
中古住宅を買うのですが、保全措置はありますか
売主が個人であれば、ありません。宅地建物取引業法第41条・第41条の2はいずれも業者が「自ら売主となる」場合の規定で、個人が売主で業者が仲介しているだけの取引には適用されないためです。中古の戸建てやマンションは、このケースが多くなります。ただし、業者が買い取って再販している物件(買取再販)は業者が売主なので、適用されます。売主が誰かは、売買契約書の当事者欄と重要事項説明書の冒頭で確認できます。なお、売主が個人でも仲介業者には重要事項説明の義務があり、保全措置の有無は説明事項に含まれます。
違約金が代金の30%と書かれていました
売主が業者なら、20%を超える部分は無効です。宅地建物取引業法第38条第1項は、業者が自ら売主となる売買契約において損害賠償の額を予定しまたは違約金を定めるとき、「これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない」としており、第2項が「前項の規定に反する特約は、代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする」と定めています。契約全体が無効になるのではなく、超える部分だけが無効になる構造です。一方、売主が個人であればこの上限は適用されず、契約書の記載がそのまま効きます。契約前に、売主が誰かとあわせて確認してください。
中間金も保全措置の対象ですか
対象になります。宅地建物取引業法第41条第1項は「手付金等」を、「代金の全部又は一部として授受される金銭及び手付金その他の名義をもつて授受される金銭で代金に充当されるものであつて、契約の締結の日以後当該宅地又は建物の引渡し前に支払われるもの」と定義しています。名義を問わず、代金に充当されるもので、契約後・引渡し前に支払うものが含まれるため、中間金や内金もここに入ります。また、基準額の判定は累計で行われ、条文は「既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額」としています。手付金だけでは境目を超えていなくても、中間金を加えて超えるなら保全措置が必要になります。
条文はe-Govで確認できます
手付の上限と解除は宅地建物取引業法第39条に、保全措置は第41条・第41条の2に、基準となる1,000万円は同法施行令第3条の5にあります。契約書に署名する前に、売主が誰かとあわせて確認してください。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の契約内容の判断は、宅地建物取引士または弁護士にご相談ください。