
住宅ローンの事前審査に落ちた。理由を聞いても「総合的な判断です」としか言われない。ネットで調べると「年収が足りない」「勤続年数が短い」「カードの延滞があった」と、それらしい理由がいくつも出てくる。どれが自分に当てはまるのか分からないまま、次の銀行に申し込む——住宅ローンでいちばん多い遠回りが、これです。
金融機関は落ちた理由を説明しません。これは意地悪ではなく、審査基準を明かすと不正な申込みを誘発するためで、どの金融機関も同じ扱いをします。ただし、「金融機関が何を見ているか」だけは、国が毎年調べて公表しています。国土交通省の「民間住宅ローンの実態に関する調査」です。
この記事では、令和7年度調査(令和8年3月公表)に回答した994機関のデータをもとに、審査項目を割合の高い順に並べます。そのうえで、申込前に自分で確認できる3つ——信用情報・返済負担率・年齢や勤続年数の枠——について、どこで何をすればいいかを手順で書きます。根拠は国土交通省、住宅金融支援機構(独立行政法人)、指定信用情報機関の公表資料だけを使います。
結論:落ちる理由は推測しない。金融機関が見る項目は国が毎年調べて公表している
「総合的な判断」の中身は、統計として公開されている
国土交通省は毎年、住宅ローンを供給している民間金融機関に調査票を郵送し、融資実績と審査の実態を集計しています。これが「民間住宅ローンの実態に関する調査」で、統計法に基づく国の一般統計調査です。令和7年度調査は対象1,175機関に対して1,112機関が回答(回答率94.6%)、うち住宅ローンを取り扱っている機関は1,021でした。
この調査には「融資を行う際に考慮する項目」という設問があり、複数回答で集計された結果が項目ごとの割合として公表されています。個別の銀行がどう判断したかは分かりませんが、業界全体として何がほぼ必ず見られ、何がそうでもないかは、この数字で分かります。落ちた理由を勘で探すより、まずこのリストを上から順に自分に当てはめるほうが速いということです。
調査の実施は令和7年10月〜11月、公表は令和8年3月。件数・金額に関する設問は令和6年度末の実績が対象になっています。以下の数値はすべてこの令和7年度調査のもので、確認日は2026年9月26日です。
結論:確認すべきは3つだけ。信用情報・返済負担率・枠
審査項目は20を超えますが、申込前に自分で確認できて、かつ結果を左右しやすいものは3つに絞れます。1つめは信用情報で、これは手数料500円〜800円で自分で取り寄せられます。2つめは返済負担率で、住宅ローン以外の借入れをすべて足して計算します。3つめは年齢・勤続年数・融資率といった、動かせないけれど先に知っておける枠です。
逆に、申込前に自分で動かせないものもあります。担保評価(物件の評価額)、雇用先の規模、業種などです。これらは「そういう見られ方をする」と知っておけば十分で、悩んでも変わりません。確認できるものを先に潰し、残った要因については物件や借入額のほうを調整する——これが遠回りしない順番です。
以下、まず審査項目の全リストを示し、そのあとで3つの確認手順をそれぞれ具体的に書きます。急ぐ場合は「申込前に確認する①」から読んでも構いません。
994機関が回答した「融資を行う際に考慮する項目」の全リスト
9割以上の機関が見る7項目
令和7年度調査で、回答した994機関のうち9割以上が「考慮する」と答えた項目は次の7つです。国土交通省は報告書本文で、この7項目について「引き続き9割以上の機関が融資を行う際の審査項目としている」と述べています。つまりこれらは、どの金融機関に申し込んでも見られると考えて差し支えありません。
| 審査項目 | 考慮する機関の割合 |
|---|---|
| 完済時年齢 | 98.4% |
| 借入時年齢 | 96.2% |
| 健康状態 | 96.1% |
| 年収 | 94.2% |
| 勤続年数 | 93.9% |
| 担保評価 | 91.0% |
| 返済負担率 | 90.9% |
注目したいのは順番です。一般に「年収」が最重要だと思われがちですが、実際にいちばん多くの機関が見ているのは完済時年齢で98.4%。次が借入時年齢と健康状態です。年収は4番目にあたります。年齢と健康は、返済期間の長さと団体信用生命保険の加入可否に直結するため、ほぼ全機関が確認しているわけです。
7割前後の機関が見る項目と、見ない機関のほうが多い項目
9割には届かないものの、多くの機関が見ている項目もあります。金融機関の営業エリア(89.2%)、連帯保証(84.7%)、国籍(80.6%)、カードローン等の他の債務の状況や返済履歴(72.5%)、雇用形態(70.6%)、融資可能額=融資率の購入時(69.1%)、借換え時(63.6%)が続きます。
営業エリアが9割近いのは意外に思えますが、地方銀行・信用金庫・農協が回答機関の多くを占めるためです。実際の内訳を見ると「エリア内に居住」が811機関、「エリア内に勤務」が565機関。勤務先が営業エリア内なら申し込める金融機関もあるということで、居住地だけで諦める必要はありません。
逆に、見ない機関のほうが多い項目もあります。業種(47.3%)、家族構成(39.1%)、所有資産(35.6%)、雇用先の規模(35.6%)、性別(24.9%)です。「勤め先が中小企業だから落ちた」「独身だから不利」といった話は、業界全体で見れば過半数の機関が考慮していない項目にあたります。心当たりを探すなら、まず9割の7項目から見るべきだということが、この数字から分かります。
スコアリング方式は4割超。ただし主流ではない
審査の方法についても設問があります。令和7年度調査では852機関が回答し、「スコアリング方式では審査を行っていない」が59.9%で最多でした。「スコアリング方式により一部審査を行っている」が24.4%、「スコアリング方式を中心にして審査を行っている」が15.7%で、合わせて4割を超えます。
スコアリング方式とは、報告書の定義によれば「申込者のデータにより審査項目(年収、返済負担率等)毎に点数を付け、その合計点によって融資するか否か等を決める方式」です。機械的に点数化される以上、基準に届かなければ機械的に落ちます。一方、6割の機関はスコアリングだけでは決めていません。
ここから言えるのは、1行で落ちたからといって全行で落ちるとは限らないということです。ただし後述するとおり、短期間に何行も申し込むこと自体が別のリスクを生みます。「次を探す」のは、落ちた原因の見当をつけてからにしてください。
数値基準が公表されている唯一の住宅ローン、フラット35の条件
民間銀行は基準を出さない。フラット35は出している
国交省の調査で分かるのは「どの項目を見るか」までで、「いくらなら通るか」は分かりません。民間の金融機関は基準を公表しないためです。ところが1つだけ、数値基準を明文で公表している住宅ローンがあります。独立行政法人住宅金融支援機構の【フラット35】です。
フラット35は民間金融機関が窓口になり、機構が住宅ローン債権を買い取る仕組みの全期間固定金利ローンです。機構が買い取る以上、条件は統一され、公開されます。民間銀行の基準そのものではありませんが、公的機関が「この水準なら貸す」と明示している唯一の物差しとして使えます。以下は2026年4月1日現在の公表条件です。
なお、フラット35はセカンドハウスや親族居住用には使えますが、第三者に賃貸する投資用物件の取得資金には利用できません。機構は転送不要郵便で残高証明書を送るなどして、申込本人か親族が実際に住んでいるかを定期的に確認しており、目的外利用が判明した場合は全額を一括返済することになると明記しています。
総返済負担率は年収400万円が境目
フラット35が最も明確に数値を出しているのが総返済負担率です。年収に占める年間合計返済額の割合について、次の基準を満たすことが条件とされています。
| 年収 | 総返済負担率の基準 |
|---|---|
| 400万円未満 | 30%以下 |
| 400万円以上 | 35%以下 |
重要なのは分子の範囲です。機構は「すべての借入れに関して」と書いており、対象にはフラット35以外の住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、カードローン(クレジットカードによるキャッシング、商品の分割払いやリボ払いによる購入を含む)が入ります。収入合算者の分も含み、賃貸予定または賃貸中の住宅に係る借入金も含みます。
つまり、スマートフォンの分割払いや家電のリボ払いも、住宅ローンの審査では「借入れ」として数えられるということです。年収は原則として申込年の前年の収入を証する公的証明書に記載された金額で、給与収入のみの方は給与収入金額、それ以外の方は事業所得・不動産所得・利子所得・配当所得・給与所得の所得金額の合計額とされています。手取りではなく額面です。
年齢・借入期間・団信の扱い
フラット35の申込要件は、申込時の年齢が満70歳未満であること(親子リレー返済を使う場合は70歳以上も可)、および日本国籍・永住許可・特別永住者のいずれかであることです。借入期間は15年以上(申込本人または連帯債務者が満60歳以上なら10年以上)で、上限は「80歳-申込時の年齢(1年未満切上げ)」と35年のいずれか短いほうになります。
この式は、国交省調査で98.4%の機関が見ていた「完済時年齢」が、数値としてどう効くかを示しています。たとえば申込時50歳なら上限は30年、55歳なら25年です。借入期間が短くなれば毎月の返済額は増え、その分だけ返済負担率の基準に引っかかりやすくなります。年齢は年収より先に効いてくるというのは、こういう意味です。
団体信用生命保険については、フラット35は加入を必須にしていません。機構は「健康上の理由その他の事情で団体信用生命保険に加入されない場合も【フラット35】はご利用いただけます」と明記しています。一方、国交省調査で健康状態を見る955機関の内訳を見ると「団信加入が必要」が834機関、「団信加入は選択可能」が89機関、「団信加入は不要」が2機関でした。健康上の理由で民間ローンが難しい場合に、フラット35が選択肢になる根拠がここにあります。保証人も必要ありません。
申込前に確認する① 信用情報を自分で取り寄せる
3つの機関があり、見ている範囲が違う
「カードの延滞が響いたのでは」と心配するなら、推測せずに取り寄せてください。信用情報を保有しているのは3機関で、それぞれ加盟している会社の種類が違います。銀行の住宅ローンで参照されるのは主に全国銀行個人信用情報センター(KSC)ですが、クレジットカードや割賦の履歴はCICに、消費者金融系はJICCに集まります。1機関だけ見ても全体は分かりません。
開示の手数料・所要日数は次のとおりです(2026年9月26日確認)。いずれもマイナンバーカードを使ったオンライン開示が最も速く、安く済みます。
| 機関 | ネット開示の手数料と所要 |
|---|---|
| CIC クレジット・割賦 |
500円。受付8:00〜21:45。初回はスマートフォンのみ。96時間以内の再開示は無料。郵送は1,500円 |
| JICC 貸金業者系 |
700円。専用スマホアプリから申込み。受取りまで1〜3日程度(土日祝・年末年始を除く) |
| KSC 銀行・信金など |
800円。最短3〜5営業日。即日開示は不可 |
3機関すべてを取っても合計2,000円です。事前審査に落ちてから次の銀行を探すより、先にこれを済ませたほうが確実に速く、費用も安く済みます。KSCはマイナンバーカードによる公的個人認証が必須で、CICとJICCもオンライン開示にはマイナンバーカードを使います。手元にない場合は郵送開示になり、日数がかかります。
何が、いつまで残るのか
開示報告書を見るときに知っておくべきなのが保有期間です。CICの場合、情報の種類ごとに次の期間が定められており、期間が過ぎた情報は自動的に抹消されます。
| 情報の種類 | 保有期間 |
|---|---|
| 申込情報(申し込んだ事実) | 照会日より6か月間 |
| クレジット情報(契約内容と支払状況) | 契約期間中および契約終了後5年以内 |
| 利用記録(途上で照会された記録) | 利用日より6か月間 |
クレジット情報には「異動(延滞・保証履行・破産)の有無」「異動発生日」「延滞解消日」といった項目が含まれます。いわゆる「事故情報」はここに載ります。JICCも同様に、2019年10月1日以降の契約については契約継続中および契約終了後5年以内という登録期間を定めています。
ここで押さえておきたいのが、申込情報が6か月残るという点です。短期間に何行も申し込むと、その事実が各社から見えます。国交省調査でも「カードローン等の他の債務の状況や返済履歴」を見る機関が721(72.5%)ありました。落ちたあとすぐに次へ、を繰り返すのが不利に働きうるのは、この仕組みによります。
開示しても「落ちた理由」は書いていない
期待値を先に調整しておきます。KSCは自らのサイトで「当センターでは審査業務を一切行っておりません。また、本人開示は金融機関における審査結果の理由を特定するものではありません」と明記しています。開示報告書を見れば、延滞や異動の記録があるかは分かりますが、「これが原因で落ちた」とは書かれていません。
それでも取る価値があるのは、否定できる材料が手に入るからです。異動情報が1件もなく、延滞の記録もないと確認できれば、落ちた原因は信用情報以外にあると絞り込めます。逆に心当たりのない記録が載っていれば、その会社に問い合わせて訂正を求める道があります。原因を1つずつ消していく作業の、最初の1歩がこれです。
なお、開示で得た情報を不動産会社や住宅メーカーの担当者に安易に渡すのは避けてください。CICも「第三者への安易な提供は、不測のトラブルにつながるおそれがあります」として、慎重な取扱いを求めています。自分で内容を確認し、必要な部分だけを口頭で伝えれば足ります。
申込前に確認する② 返済負担率を他の借入れも含めて計算する
分子に入れるもの、入れないもの
返済負担率は、年間の返済額合計を年収で割った割合です。計算そのものは単純ですが、分子に何を入れるかで結果が変わります。フラット35の定義に従うと、住宅ローン以外の次のものがすべて分子に入ります。
- 他の住宅ローン(既存の住宅を残す場合)
- 自動車ローン、教育ローン
- カードローン、クレジットカードのキャッシング
- 商品の分割払い、リボ払いによる購入
- 収入合算者の同種の借入れ
- 賃貸予定または賃貸中の住宅に係る借入金(1棟のアパートローンは除く)
スマートフォンの端末代金を分割で払っている場合、それは割賦販売にあたるため信用情報にも載り、返済負担率にも影響します。金額が小さくても、契約が生きている以上は年間返済額として数えられます。申込前にリボ払いを一括で清算しておくと数字が改善するのは、この理屈です。
分母の年収は額面です。原則として申込年の前年の収入を証する公的証明書(源泉徴収票や確定申告書)に記載された金額を使います。1月〜5月頃に申し込む場合は前年分の証明書がまだ発行されないことがあり、金融機関によって取扱いが分かれます。
審査金利という見えない上乗せ
計算するときに、実際に借りる金利で計算すると甘くなります。多くの民間金融機関は、返済負担率を算出する際に実行金利ではなく、それより高い金利(いわゆる審査金利)を使って年間返済額を計算します。将来の金利上昇に耐えられるかを見るためです。この審査金利の水準は各行が公表していないため、外部から確認する方法はありません。
確実に言えるのは、実行金利で計算してぎりぎり基準内という状態は、実質的には基準を超えている可能性が高いということです。自分で試算するときは、実行金利よりかなり高い金利でも基準内に収まるかを見ておくと、想定が外れにくくなります。フラット35は全期間固定金利なので、この上乗せの問題は生じません。
もう1つ効いてくるのが借入期間です。前述のとおりフラット35の上限は「80歳-申込時の年齢」と35年の短いほうです。期間が短くなれば毎月の返済額は増え、返済負担率は上がります。年齢が上がるほど、同じ借入額でも返済負担率の基準に当たりやすくなる構造になっています。
融資率が9割を超えると審査が変わる
もう1つ、数値で明示されている条件があります。機構はフラット35の案内で「融資率が9割を超える場合は、返済の確実性等をより慎重に審査します」と書いています。融資率とは、借入額を住宅の建設費または購入価額で割った割合です。
国交省の調査でも、購入時の融資可能額(融資率)を審査項目とする機関が687(69.1%)あり、その内訳では「100%以内」と答えた機関が380と最多でした。次いで「80%以内」が40、「110%以内」が38、「120%以内」が20、「150%以内」が16です。頭金を入れずにフルローンを組むこと自体は多くの機関が対応していますが、9割を超えるかどうかで審査の厳しさが変わるという点は、公表されている数少ない手がかりです。
借入額を減らせないなら、物件価格を下げるか、頭金を増やすか、諸費用をローンに含めない、という方向で調整することになります。返済負担率と融資率は連動するので、どちらか一方だけを見て判断しないようにしてください。
申込前に確認する③ 年齢・勤続年数・物件で決まる枠を知る
勤続年数は「1年以上」が最多
勤続年数を審査項目とする機関は933(93.9%)ありました。具体的な基準を挙げた機関の内訳(複数回答)は、「1年以上」が612機関で圧倒的に多く、「3年以上」が128、「2年以上」が53、「その他」が168です。
「転職したばかりだと住宅ローンは組めない」とよく言われますが、この数字を見る限り、3年を求める機関は少数派で、1年を基準とする機関が最も多いというのが実態です。転職から1年を超えていれば、少なくとも勤続年数だけを理由に門前払いになる可能性は下がります。転職直後であれば、前職からの継続性や職種の同一性を説明できるかが分かれ目になります。
雇用形態を審査項目とする機関は702(70.6%)で、内訳は「派遣社員は対象外」が368機関、「契約社員は対象外」が312機関、「自営業者は対象外」が10機関でした。自営業を一律に対象外とする機関はごく少数で、多くは確定申告の内容で判断していることになります。フラット35は自営業者も対象で、年収は事業所得などの所得金額の合計額で見ます。
年齢の上限は「完済時」で決まる
完済時年齢を審査項目とする機関は978(98.4%)で、全項目中で最多です。具体的な基準の内訳(複数回答)は「80歳未満」が716機関で最も多く、「85歳未満」が65、「75歳未満」が42、「70歳未満」が5、「なし」が2、「その他」が158でした。フラット35の「80歳-申込時の年齢」という式は、業界の最頻値と一致しています。
借入時年齢についても956機関(96.2%)が見ており、内訳は「その他」が477と最多ですが、数値を挙げた中では「65歳未満」247、「70歳未満」194、「75歳未満」13、「60歳未満」30、「55歳未満」9でした。申込時点で何歳かより、返し終わるときに何歳かのほうが厳しく見られているというのが、この2つの数字の関係です。
年齢は変えられませんが、借入期間を短くする、親子リレー返済を使う、といった調整はできます。フラット35の親子リレー返済は、申込本人の子や孫など(直系卑属)またはその配偶者で定期的収入があり、申込時の年齢が満70歳未満で、連帯債務者になる方を1人だけ後継者にできる仕組みです。この場合、申込本人が満70歳以上でも申し込めます。
担保評価と物件の要件は自分では動かせない
担保評価を審査項目とする機関は905(91.0%)で、内訳は「融資判断に影響」が498、「融資判断の参考にする」が342、「融資判断に影響せず」が22でした。物件の評価額が借入額に届かない場合、年収や信用情報に問題がなくても希望額が通らないことがあります。
担保評価そのものは申込者に開示されませんが、同じ地域・同じ面積帯の物件が実際にいくらで成約しているかは、公的なサイトで誰でも無料で調べられます。手順はレインズを一般人が見る方法にまとめています。
フラット35の場合、物件側にも明文の要件があります。住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合すること、床面積が一戸建て・連続建て・重ね建てで50㎡以上、共同建て(マンションなど)で30㎡以上であることです。敷地面積の要件はありません。技術基準への適合は適合証明書で確認され、物件検査手数料がかかります。
この要件は、狭小のワンルームや一部の中古物件がフラット35の対象外になることを意味します。民間ローンでも独自の面積要件を置いている場合があり、物件を決めてから融資が付かないと分かるケースはここで生じます。物件の申込みを入れる前に、床面積と築年数を確認しておいてください。
落ちたあとにやること。同時に何行も申し込まない理由
申込情報は6か月、各社から見える
すでに落ちてしまった場合、最もやってはいけないのが、原因を特定しないまま次々に申し込むことです。前述のとおり、CICの申込情報は照会日より6か月間保有され、他の加盟会社から参照できます。JICCも申込みに関する情報を照会日から6か月以内としています。
短期間に複数の申込記録が並ぶと、資金繰りに窮していると受け取られる余地が生まれます。国交省調査で「カードローン等の他の債務の状況や返済履歴」を見る機関が721(72.5%)、「申込人との取引状況」を見る機関が549(55.2%)あることを踏まえると、申込みの履歴そのものが審査材料になりうると考えたほうが安全です。
順番としては、まず3機関の信用情報を開示し(合計2,000円・1週間以内)、返済負担率を他の借入れ込みで計算し直し、年齢から逆算した借入期間の上限を確認する。ここまでやってから、次にどこへ申し込むかを考えます。
原因別に打てる手
確認の結果、原因の見当がついたら、対応は分かれます。信用情報に異動の記録があった場合、記録が消えるまで待つのが原則です。クレジット情報は契約終了後5年以内に抹消されるため、完済からの経過年数を数えることになります。記録に誤りがある場合は、登録した会社に訂正を申し立てます。
返済負担率が原因と思われる場合は、分子を減らすか分母を増やすかです。カードローンやリボ払いを完済して契約を解約する、自動車ローンを繰上返済する、収入合算やペアローンを検討する、といった手があります。ただし収入合算は合算者の借入れも分子に入るため、必ず両方を合わせて計算してください。
健康状態が原因と思われる場合は、フラット35の団信任意加入が選択肢になります。機構は団信に加入しない場合も利用できると明記しており、その場合の借入金利は別に設定されています。「団信に入れない=家が買えない」ではないという点は、民間ローンだけを見ていると分かりにくいところです。
金融機関を変えるなら、性格の違う先を選ぶ
同じ性格の金融機関に連続で申し込むのは効率が良くありません。国交省調査の回答機関1,021のうち、農業協同組合等が491、信用金庫等が241、信用組合等が131を占め、国内銀行は115です。営業エリアを審査項目とする機関が887(89.2%)あり、その内訳は「エリア内に居住」811、「エリア内に勤務」565でした。
都市銀行で落ちた場合、次の候補として地域の信用金庫や労働金庫、あるいは勤務先が営業エリアに入る金融機関を検討する、という順番が考えられます。そのうえで、審査基準が公表されているフラット35を1本の基準線として持っておくと、自分がどのくらいの位置にいるかを測れます。
いずれにしても、次の申込みまでに時間を置くことと、原因を絞り込んでおくことがセットです。落ちた理由は教えてもらえませんが、「何を見られているか」と「自分の数字」の両方が分かれば、残る可能性は数えられる範囲に収まります。
まとめ
住宅ローンの審査に落ちても、金融機関は理由を教えません。しかし、金融機関が何を見ているかは国土交通省が毎年調査して公表しています。令和7年度調査では、994機関のうち9割以上が完済時年齢(98.4%)、借入時年齢(96.2%)、健康状態(96.1%)、年収(94.2%)、勤続年数(93.9%)、担保評価(91.0%)、返済負担率(90.9%)を考慮していました。年収より先に、年齢と健康が見られています。
申込前に自分で確認できるのは3つです。1つめは信用情報で、CIC(500円)・JICC(700円)・KSC(800円)の3機関から合計2,000円で取り寄せられます。2つめは返済負担率で、住宅ローン以外のカードローン・分割払い・リボ払いもすべて分子に入れて計算します。フラット35の基準は年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下です。3つめは年齢から決まる借入期間の上限で、フラット35では「80歳-申込時の年齢」と35年の短いほうになります。
落ちたあとに何行も申し込むのは避けてください。申込みの記録は6か月間、他の加盟会社から見えます。先に信用情報を取り、返済負担率を計算し直し、原因を絞ってから次を考える。この順番のほうが、結果として速く進みます。団信に入れない場合は、加入を必須としないフラット35という選択肢が残っています。
よくある質問(FAQ)
事前審査に通れば本審査も通りますか
通るとは限りません。事前審査は申込者の申告内容をもとにした簡易な確認で、本審査では収入や勤務先を証明する書類、物件の担保評価、団体信用生命保険の加入可否が改めて確認されます。事前審査のあとに転職した、カードローンを新たに借りた、申告した年収と源泉徴収票の金額が違った、といった事情があると本審査で覆ることがあります。事前審査から本審査までの間に、新たな借入れや契約を増やさないようにしてください。
スマートフォンの分割払いは審査に影響しますか
影響します。携帯端末の分割払いは割賦販売にあたり、信用情報機関に契約内容と支払状況が登録されます。フラット35の総返済負担率でも「商品の分割払いやリボ払いによる購入」は分子に含めるとされています。金額が小さくても契約が生きていれば年間返済額として数えられ、支払いが遅れていれば延滞として記録されます。心当たりがある場合は、開示報告書で入金状況を確認してください。
信用情報に「異動」と書かれていました。どれくらいで消えますか
CICのクレジット情報は契約期間中および契約終了後5年以内、JICCも2019年10月1日以降の契約については契約継続中および契約終了後5年以内が登録期間です。異動には延滞・保証履行・破産が含まれ、異動発生日と延滞解消日も記録されます。完済していれば、契約終了から5年を経過した時点で消えます。開示報告書には契約終了予定日や終了状況も載るため、いつを起点に数えるかはそこで確認できます。
年収が低くても住宅ローンは組めますか
フラット35には年収の下限がありません。年収に占める年間合計返済額の割合(総返済負担率)が、年収400万円未満なら30%以下、400万円以上なら35%以下であることが条件です。国交省調査でも、年収を審査項目とする936機関の内訳では「100万円以上」が288機関、「150万円以上」が390機関と、下限を低めに置く機関が多数を占めています。年収の絶対額より、借入額との比率のほうが問われます。
健康に不安があり団信に入れそうにありません
フラット35は団体信用生命保険の加入を必須としていません。機構は「健康上の理由その他の事情で団体信用生命保険に加入されない場合も【フラット35】はご利用いただけます」と明記しており、その場合の借入金利は別に設定されています。国交省調査で健康状態を見る955機関のうち、団信加入を必要とする機関が834、選択可能とする機関が89、不要とする機関が2でした。民間ローンが難しい場合の現実的な選択肢になります。
複数の銀行に同時に申し込んでもいいですか
おすすめしません。CICの申込情報は照会日より6か月間、JICCの申込みに関する情報は照会日から6か月以内、他の加盟会社から参照できる状態で残ります。短期間に複数の申込記録が並ぶと、審査で不利に働く余地があります。国交省調査でも、他の債務の状況や返済履歴を見る機関が721、申込人との取引状況を見る機関が549ありました。先に信用情報を開示して原因を絞り、時間を置いてから次に申し込んでください。
審査の実態と数値基準は、国と機構が公表しています
審査項目の割合は国土交通省の調査報告書に、通る条件の数値はフラット35のご利用条件に載っています。担当者に相談する前に、この2つを手元に置いておくと、話が具体的になります。
国土交通省 民間住宅ローンの実態に関する調査
住宅金融支援機構 フラット35ご利用条件
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の物件・投資・税務の判断は、宅地建物取引士・税理士など専門家にご相談ください。統計・制度の情報は2026年9月時点で確認したものです。