
スキルを売る副業で、多くの人が向かう先がテンプレートや教材の販売です。1回作れば何度でも売れる。オンライン講座の回で扱った、時間を切り売りする形とは違う収入の作り方になります。
ただ、この形には見落とされやすい論点があります。繰り返し売ると、個人でも特定商取引法上の「販売業者」に当たる場合があるということです。そうなると、広告に表示しなければならない項目が決まってきます。
この記事では、テンプレート・教材の販売を、売る側の義務から整理します。扱うのは、販売業者の定義、広告に表示する項目、氏名と住所の問題、返品の条件、ソフトウェアの動作環境、最終確認画面、作る前に決めること、時間と値付け、つまずく場所です。作り方や売り方のコツは扱いません。
記述は消費者庁の特定商取引法ガイドを一次情報にしています。この記事は公開されている記述の紹介であり、法律の解説ではありません。自分の販売が該当するかどうかの判断は、必ず専門家や消費生活センター等の窓口にご相談ください。また、販売する場所によって仕組みは違うので、使うサービスの規定もご自身で確認してください。
テンプレート販売は、作った後に決めることが多い
まず、この分野の特徴を整理します。
作るところまでは、迷わない
自分が仕事で使っている型を、売れる形に整える。資料のひな形、表計算の集計シート、文章の構成の型。作る作業自体は、普段やっていることの延長です。
迷いが出るのは、売る段になってからです。いくらにするか、どこで売るか、返品はどうするか、問い合わせは誰が受けるか。この判断が多いことが、この分野の実際の負担です。
しかも、作る時間は自分で決められますが、判断は先送りできません。売り始めた瞬間に、全部が同時に必要になります。だから、作りながら決めていくのではなく、作る前に決めておくほうが結果として速い。
1回売って終わりではない
受注する仕事と違い、販売は続きます。買った人から質問が来る、使えないと言われる、返金を求められる。納品して終わりという区切りがありません。
そして、売った数だけ相手が増えます。10人に売れば10人分の対応が発生し得る。返品対応の回で書いたとおり、1件のトラブル対応には時間がかかります。
受注の仕事なら、相手は1件につき1人です。販売は、売れるほど相手が増える構造になっています。収入が増えるのと同じ速さで、対応も増える。これを設計に入れておかないと、売れたときに回らなくなります。
だから、売る前に決めておく
作ってから条件を考えると、後出しになります。買った人から見れば、条件は買う前に示されているべきものです。
そして、示すべき項目は、法律で定められている場合があります。次の章から、その前提を見ていきます。
先に書いておくと、これは面倒を増やす話ではありません。決めておけば、その後の判断がなくなります。毎回考えることが減るので、むしろ楽になります。
そして、決めた内容は次の商品でも使い回せます。2本目以降は、条件の欄をそのまま持ってくるだけ。最初の1本で作った型が、以降の資産になります。
繰り返し売ると、個人でも「販売業者」になる
最初に押さえるのが、この定義です。
通信販売とは何か
消費者庁の特定商取引法ガイドは、通信販売をこう説明しています。「『通信販売』とは、販売業者又は役務提供事業者が『郵便等』によって売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品、権利の販売又は役務の提供のことをいいます」。
具体例として「インターネット上のホームページ(インターネット・オークションサイトを含む)などによる広告」を見た消費者が「インターネット等で購入の申込みを行う取引方法」が挙げられています。ネット上でテンプレートを売る形は、ここに当たり得ます。
「業として営む」の意味
では「販売業者」とは誰か。ガイドはこう定義しています。「『販売業者又は役務提供事業者』とは、販売又は役務の提供を業として営む者を意味します」。
そして「業として営むとは、営利の意思を持って、反復継続して取引を行うことをいいます」と続きます。利益を得る意思があり、繰り返し売る。この2つが条件です。
1回だけ売る、という形は想定しにくいでしょう。テンプレートや教材は、何度でも売れることが利点の商品です。作った時点で、繰り返し売るつもりがあるのが普通です。
意思にかかわらず、客観的に判断される
さらに重要な記述があります。「なお、営利の意思の有無については、その者の意思にかかわらず、客観的に判断されることとなります」。
自分では商売のつもりがなくても、外から見た実態で判断されるということです。これは特定継続的役務提供の回で書いた「外形上は短くても実質で判断される」のと同じ考え方です。
この書き方は、他の分野でも繰り返し出てきます。自分の認識ではなく、実態で判断する。法律の文書を読むときの基本的な構えだと考えてください。
そして、個人でも該当する
決定的なのがこの一文です。「上記要件に該当すれば、個人でも特定商取引法上の『販売業者又は役務提供事業者』となります」。
法人でなければ関係ない、という理解は成り立ちません。個人が副業でテンプレートを繰り返し売る形は、この定義に当たり得ます。該当するかどうかの判断は、専門家や窓口にご相談ください。
ただし、適用されない場合もガイドには書かれています。「営業のため、又は営業として締結するもの」などが適用除外として挙げられています。誰に売るかによっても、扱いが変わり得るということです。
広告に表示する項目が決まっている
該当する場合、広告に書くべきことが定められています。
なぜ定められているのか
ガイドは理由も説明しています。「通信販売は、隔地者間の取引であり、販売条件等についての情報は、まず広告を通じて提供されます。そのため、広告の記載が不十分であったり、不明確であったりすると、後日トラブルを生ずることになります」。
顔を合わせずに売買するので、広告が唯一の情報源になる。だから書くべきことが決められている、という構造です。
この理由を理解しておくと、書き方の判断がしやすくなります。買う人が判断するために必要かどうか。迷ったときは、この基準で考えてください。形式的に埋めるより、実質的に伝わる書き方になります。
挙げられている項目
ガイドは「広告に表示する事項を次のように定めています」として、複数の項目を挙げています。主なものを表にします。
| 公式が挙げている表示事項(抜粋) |
|---|
| 販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要) |
| 代金(対価)の支払時期、方法 |
| 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期) |
| 申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容 |
| 契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(返品特約がある場合はその内容を含む) |
| 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号 |
| 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容及びその額 |
| いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境 |
| 契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件又は提供条件 |
デジタル商品でも、価格の書き方に注意
表の1行目に「送料についても表示が必要」とあります。データで渡す商品に送料はありませんが、価格以外に負担してもらう金銭があれば、その内容と額を表示する必要があると別の項目に書かれています。
決済の手数料を買う側に持ってもらう形にしているなら、そこも該当し得ます。総額でいくら払うことになるのかを、先に示す。これが表示の趣旨です。
消費税の扱いも、同じ考え方で見てください。買う人が最終的にいくら払うのかが、迷わず分かる形になっているか。税込と税抜が混ざった表示は、それだけで問い合わせの原因になります。
省略できる場合もあるが、条件がある
ガイドには「広告の表示事項を省略できる場合」という項目もあります。「消費者からの請求によって、これらの事項を記載した書面(インターネット通信販売においては電子メールでもよい)を『遅滞なく』提供することを広告に表示し、かつ、実際に請求があった場合に『遅滞なく』提供できるような措置を講じている場合」に、一部を省略できるとされています。
ただし「遅滞なく」については「販売方法等の取引実態に即して、申込みの意思決定に先立って十分な時間的余裕をもって提供されることをいいます」と説明されています。省略は、請求に応じる仕組みとセットです。
氏名・住所・電話番号という壁
個人で売る人が最初にぶつかるのが、この項目です。
表示事項に含まれている
表示事項の一覧に「事業者の氏名(名称)、住所、電話番号」が挙げられています。個人で売る場合、これは本名と住所と電話番号を意味し得ます。
これが、副業で販売を始める人にとって現実的にいちばん重い項目です。作る技術の問題ではなく、生活の問題になります。だからこそ、作り始める前に確認しておく価値があります。
副業を始めるときに、ここで止まる人は多い。自宅の住所を公開することになるからです。ですが、これは表示事項として明記されています。
プラットフォームを使う場合
スキル販売のサービスや、テンプレートを扱うサービスを経由して売る場合、表示の扱いがサービス側の仕組みに含まれていることがあります。
どうなっているかは、使うサービスによって違います。利用規約や出品者向けの案内で、必ず確認してください。ノーコードの回で書いたとおり、プラットフォームを使っていても、売っている主体は自分です。
確認する場所は、出品者向けのヘルプが早い。購入者向けのページには書かれていないことが多いからです。出品を始める前の案内や、よくある質問の出品者編を探してください。
自分のサイトで売るなら
自分で作ったページで直接売る形を選ぶなら、表示の責任は全部こちらにあります。手数料は減りますが、義務は増えます。
この選択は、金額だけで決めないでください。手数料の差と、表示や問い合わせ対応の負担を並べて考える。最初はプラットフォームを使い、慣れてから自分で売る形に移るのが現実的です。
移るときも、全部を一度に移す必要はありません。両方で売って、比べてみる。手数料と負担の実感が分かってから、寄せる先を決めるほうが判断を誤りません。
判断に迷うなら、窓口へ
該当するかどうか、どこまで表示すべきかは、個別の事情によります。この記事は公開されている記述を紹介したもので、判断を示すものではありません。
消費生活センターや専門家に相談してください。売り始める前に聞くのが、いちばん安く済みます。
相談するときは、売ろうとしているものを具体的に説明できる状態にしておきます。何を、いくらで、どこで、誰に、どれくらいの頻度で売るのか。この5つを書いてから相談すると、話が早い。
返品の条件は、省略できない
デジタル商品で、いちばん実務に効く記述です。
公式の記述
ガイドには、省略できる項目の表の下にこう書かれています。「通信販売における売買契約の申込みの撤回等についての特約(返品特約)がある場合はその内容(返品の可否、返品の期間等条件、返品に係る費用負担の有無)に係る事項の省略が認められない」。
つまり、返品の条件を決めているなら、それは必ず表示するということです。他の項目のように、請求に応じる仕組みで省略することができません。
省略が認められない、と名指しされている項目は限られます。それだけ重要だと位置づけられているということでしょう。買う人にとって、返せるかどうかは購入の判断に直結する情報です。
データ商品こそ、決めておく
テンプレートや教材は、渡してしまえば返せません。だから「返品不可」としたい場面が多いはずです。
その条件を決めるなら、可否、期間などの条件、費用負担の有無まで含めて表示する。「返品不可」とだけ書いて足りるかは、個別の判断になります。ガイドは「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」を参考に表示を工夫するよう求めているので、そちらも確認してください。
書く場所も考えてください。商品説明の最後に小さく書くのと、価格のすぐ下に書くのでは、読まれ方が違います。買う判断に関わる情報は、判断する場所の近くに置く。これは表示の趣旨にも沿っています。
返金の基準は、先に決める
表示の話とは別に、実務としても基準が要ります。内容が合わなかった、期待と違った、使えなかった。どこまでを返金の対象にするかを、売る前に決めておいてください。
決めていないと、言われるたびに判断が揺れます。仕入れ判断の回で書いた「基準を先に紙に書く」のと同じです。
そして、応じる場合の手順も決めます。どこから連絡をもらい、何を確認し、いつまでに処理するか。基準だけでなく、手順まで決めておくと迷いません。
プラットフォームの仕組みも確認する
サービスを経由して売る場合、返金の仕組みがサービス側にあることが多い。その場合、こちらの判断だけで決まらない部分があります。
どういう場合に返金が行われるのか、その判断は誰がするのか。売り始める前に、出品者向けの案内で確認しておいてください。
こちらの意向と、サービスの仕組みが食い違うこともあります。返品不可と書いていても、サービス側の判断で返金される場合がある。そうした可能性も含めて、値付けや在庫の考え方を決めてください。
ソフトウェアなら、動作環境も
デジタル商品に直接関わる項目です。
表示事項に明記されている
表示事項の一覧に「いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境」が挙げられています。
省略できる項目の表にも「ソフトウェアを使用するための動作環境」という行があります。動く環境を示すことが、表示事項として位置づけられているということです。
ここは、デジタル商品を扱う人にとって直接関わる項目です。形のない商品だから書くことが少ない、とはならない。むしろ、形がないぶん、動く条件を示す必要があります。
テンプレートにも、環境がある
ソフトウェアという言葉から自分の商品は関係ないと考えがちですが、テンプレートにも動作する環境があります。どのソフトの、どのバージョンで開けるのか。
表計算のファイルなら、関数が動くかどうかはソフトによって変わります。「この環境で作成し、動作を確認しています」と書いておくと、買った側が判断できます。
閲覧だけなのか、編集するのかでも条件が変わります。見るだけなら開けても、編集すると崩れるという場合がある。どちらの使い方を想定しているかも、あわせて書いてください。
環境の記載は、問い合わせを減らす
実務上の効果も大きい。「開けません」「表示が崩れます」という問い合わせの多くは、環境の違いから来ます。
先に書いておけば、買う前に相手が確認できます。売れる数は少し減るかもしれませんが、対応の時間は大きく減ります。返品対応の回で書いた「書いてあった不備では揉めない」のと同じ構造です。
そして、環境が合わずに買った人は、たいてい返金を求めます。売れた数ではなく、返金されなかった数が実際の売上です。この観点で見ると、書かないことに利点はありません。
試せる形を用意する
さらに進めるなら、一部を試せる形にする方法もあります。見本のページ、一部だけの無料版、画面の写真。
買う前に中身が分かるほど、後のトラブルは減ります。ただし、見本の作り方によっては、それだけで用が足りてしまうこともあります。どこまで見せるかは、商品によって設計してください。
目安としては、構造は見せて、中身は見せない。目次や項目の一覧、画面の写真までは出して、実際に使える形では渡さない。これなら、判断の材料になりつつ、代わりにはなりません。
最終確認画面にも表示が要る
ネットで売る場合に、追加で書かれている項目です。
最終確認画面についての記述
ガイドには「更に、インターネット通販の場合には、最終確認画面においても表示することを定めています(法第15条の3ただし書、省令第44条)」と書かれています。
広告のページに書いてあればよい、という話ではない。申込みを確定する画面にも、表示が求められているということです。
買う人の動きを考えると、理由が分かります。商品ページを読んでから決済までの間に、時間が空くこともある。最後に確認する場所にも書いてあれば、勘違いのまま買ってしまうことが減ります。
自分で決済の流れを作る場合
自分のサイトで売る形を選ぶと、この画面の設計も自分の責任になります。何を、どの画面に表示するか。
ここは技術の問題ではなく、表示の問題です。決済の仕組みを導入して終わり、ではありません。導入する前に、何を表示する必要があるかを確認してください。
決済のサービスによっては、確認画面の項目を設定できるものもあります。導入する前に、この画面をどこまで作り込めるかを見ておく。後から変えられない仕様だと、選び直しになります。
プラットフォームなら、仕組みに含まれることが多い
既存のサービスを使う利点が、ここにもあります。購入の画面はサービス側が作っているので、こちらで設計する必要がありません。
手数料を払う対価として、こうした仕組みを借りている。そう考えると、手数料の見え方が変わります。これはオンライン講座の回で書いた、手数料の構造の話ともつながります。
集客、決済、購入の画面、返金の仕組み、問い合わせの窓口。手数料で買っているものを数えると、意外と多い。自分でやる場合に何時間かかるかを見積もってから、比べてみてください。
広告のしかたにも規制がある
ガイドは、誇大広告等の禁止(法第12条)として「『著しく事実に相違する表示』や『実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示』を禁止しています」と説明しています。
また「未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止」として「消費者があらかじめ承諾しない限り、事業者が電子メール広告を送信することを、原則禁止しています」とも書かれています。宣伝のメールを送る形を考えているなら、この点も確認が要ります。
作る前に決める3つのこと
ここまでを踏まえて、着手前に決めることを3つに絞ります。
1・どこで売るか
プラットフォームを使うか、自分のサイトで売るか。この選択で、表示や画面の設計にかかる負担が変わります。
手数料の差だけで決めないでください。表示事項の扱い、購入の画面、返金の仕組み、問い合わせの窓口。これらをどちらが持つかで、手数料の意味が変わります。
そして、売る場所は1つに絞らなくても構いません。同じ商品を複数の場所に置くことはできます。ただし、条件の表示は場所ごとに必要です。数が増えるほど、更新の手間も増えると考えてください。
2・返品と返金の条件
返品特約は省略が認められない項目とされています。決めるだけでなく、表示するところまでが前提です。
そして、実務の基準も決めます。どういう申し出を返金の対象とするか。対象にしない場合の説明も、あらかじめ文章にしておいてください。その場で考えると、毎回違う対応になります。
文章にしておく利点は、感情を抑えられることです。断る場面で一から書くと、どうしても言い訳めいた文になります。落ち着いているときに書いた文のほうが、丁寧で短い。
3・問い合わせをどこまで受けるか
売った後の対応範囲です。使い方の質問に答えるのか、カスタマイズの相談まで受けるのか、期間の制限はあるのか。
ここを決めないと、1本売るたびに、無期限の相談窓口が増えていきます。「ご購入後30日以内の、使い方に関するご質問にお答えします」のように、範囲と期間を書いてください。
範囲外の相談が来たときの答え方も、決めておきます。「その内容は個別のご相談となりますので、別途お見積もりいたします」。断るのではなく、別の形に変える。これは他の分野でも繰り返してきた受け方です。
3つとも、商品ページに書く
決めたことは、買う人が見られる場所に書きます。自分のメモに留めても意味がありません。
買う前に条件が分かることが、この分野でいちばん効くトラブル対策です。そして表示事項として求められている項目もあります。
書く場所は、商品ページの中で決めておきます。説明の後に条件をまとめた欄を作る、という形が読みやすい。毎回同じ場所に同じ順で書くと、自分の確認も楽になります。
そして、公開する前に自分で読み返してください。買う人の立場で、上から順に読む。疑問が残る箇所があれば、そこが問い合わせになります。公開前の10分が、後の何時間かを守ります。
1本にかかる時間と、値付けの考え方
制作時間に公的な統計はありません。以下は、自分が使っている型を商品にする場合を置いた本メディアの想定モデルで、統計ではありません。
| 工程 | 時間 | 備考 |
|---|---|---|
| 表示事項と規約の確認 | 90分 | ガイドと、使うサービスの案内 |
| 商品の整形 | 180分 | 自分用から、他人が使える形へ |
| 使い方の説明を作る | 120分 | 問い合わせを減らす投資 |
| 商品ページの作成 | 120分 | 表示事項と3つの条件を含む |
| 見本の用意 | 60分 | 買う前に中身が分かる形 |
9時間半で、損益分岐を計算する
合計は9時間30分です。時間あたりの目標を3,000円に置くと、必要な手取りは28,500円。
1本3,000円で売るなら、手数料を引いた後の手取りで28,500円に届く本数が、損益分岐になります。手数料が2割なら、1本あたりの手取りは2,400円。約12本です。
手数料の率は、売る場所によって変わります。率が変われば、損益分岐の本数も変わる。売る場所を決める前に、この計算をしておくと、どこで売るかの判断材料になります。
12本という数字を、どう見るか
12本売れれば、以降はほぼ利益になります。追加の作業は、問い合わせの対応だけです。
逆に、12本売れなければ、時間あたりは目標を下回ります。受注の仕事と違い、売れるかどうかは事前に分かりません。この不確実性が、テンプレート販売の本質的な難しさです。
だから、受注の仕事と組み合わせるのが現実的です。受注で収入を確保しながら、販売を少しずつ育てる。販売だけに切り替えるのは、売れ方が見えてからで間に合います。
だから、最初は本業の副産物から
ゼロから作るのではなく、すでに自分が使っている型を整える形なら、整形の180分で済みます。作るために時間を使うのではなく、あるものを売れる形にする。
この順番なら、売れなかったときの損失も小さい。売れ方を見てから、次に作るものを決められます。
そして、自分が使っている型は、実際に機能することが分かっています。使ったことのないものを売るより、はるかに説明しやすい。どういう場面で役に立つかを、経験として書けます。
問い合わせ対応も、原価に入れる
売れた後の対応時間は、見えにくいコストです。1本あたり10分の対応でも、50本売れれば8時間を超えます。
だから、使い方の説明を作る120分には価値があります。先に書いておけば、後の8時間が減ります。これはテロップの回で書いた、定型化できる作業に投資する話と同じです。
問い合わせが来たら、説明を足していく形にすると、さらに効きます。同じ質問が2回来たら、説明に追記する。説明書は、売りながら育てるものだと考えてください。
つまずく場所は5つに決まっている
この分野でつまずくのは、ほぼ5つです。
| つまずく場所 | 公式に書かれていること |
|---|---|
| 個人だから関係ないと考える | 該当すれば個人でも「販売業者」となる |
| 作ってから条件を考える | 広告に表示する事項が定められている |
| 返品の条件を書かない | 返品特約は省略が認められない |
| 動作環境を書かない | ソフトウェアの動作環境は表示事項 |
| 問い合わせの範囲を決めない | (公式の記載外。実務上の必須事項) |
1・個人だから関係ないと考える
いちばん多い誤解です。ガイドは「上記要件に該当すれば、個人でも特定商取引法上の『販売業者又は役務提供事業者』となります」と明記しています。
そして「営利の意思の有無については、その者の意思にかかわらず、客観的に判断されることとなります」とも。自分の認識ではなく、実態で判断される。
趣味の延長のつもりでも、繰り返し売っていれば実態は販売です。気持ちの問題ではなく、行動の問題として見られる。始める前に、この前提を持っておいてください。
2・作ってから条件を考える
商品を完成させてから、価格や返品の条件を考える。順番としては自然に見えますが、表示すべき項目が決まっているなら、それを知ってから作るほうが早い。
特に、動作環境や問い合わせの範囲は、作り方そのものに関わります。後から決めると、作り直しになることがあります。
たとえば、問い合わせを受けない形にするなら、説明書をより丁寧に作る必要があります。条件を先に決めると、作るものの中身が変わる。だから、決めてから作るほうが早いんです。
3・返品の条件を書かない
デジタル商品は返品できないから書かなくてよい、とは限りません。ガイドは、返品特約がある場合の内容について「省略が認められない」としています。
どう書くべきかは個別の判断になるので、公式が参考に挙げているガイドラインを確認し、迷うなら窓口に相談してください。
そして、書いたつもりで書けていないことがあります。可否だけ書いて、期間と費用負担が抜けている。3つの要素が揃っているかを、公開前に確認してください。
4・動作環境を書かない
「いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境」が表示事項に挙げられています。
実務上も、環境の記載は問い合わせを大きく減らします。どのソフトの、どのバージョンで確認したかを書いてください。
確認していないバージョンについては、確認していないと書く。動くかもしれない、と曖昧に書かないでください。動かなかったときに、書き方の問題になります。
環境が増えたら、追記していきます。買った人から報告をもらえることもある。動作を確認した環境の一覧は、売りながら増やすものだと考えてください。
5・問い合わせの範囲を決めない
これは公式の表示事項ではありませんが、実務では必須です。範囲と期間を決めずに売ると、無期限の窓口が増え続けます。
「ご購入後30日以内の、使い方に関するご質問」のように、何を、いつまで受けるかを商品ページに書いてください。
期間は、短すぎても長すぎても問題が出ます。短いと不親切に見え、長いと自分の負担が読めなくなる。30日前後から始めて、実際の問い合わせの量を見て調整するのが現実的です。
調整するときは、新しく売る分から変えます。すでに買った人の条件を後から変えないでください。買ったときの条件が、その人にとっての約束です。
30代につながるのは、売る側の義務を知っていること
このメディアは、20代の副業を「30代に何が残るか」で選ぶ立場で書いています。テンプレート販売で残るのは、作る技術だけではありません。
商品を売るということの、手続きを知っていること
残るのは、人に物を売るときに、何を示す必要があるかを知っていることです。価格、引渡しの時期、返品の条件、連絡先。
30代になると、商品やサービスを作る側に回る場面が増えます。販売ページを作る、規約を確認する、購入の画面を設計する。どこに何を書く必要があるかを知っている人は、抜けのない仕事ができます。
そして、知らない人が作ったページの抜けにも気づけます。確認する側に回ったときに効く知識でもあります。自分で作らなくなっても、見る目は残ります。
自分の立場が変わることに、気づけること
1回売るのと、繰り返し売るのでは、立場が変わります。この境目を知っている人は、事業が育つ過程で必要な手続きに先回りできます。
これは規模が大きくなるほど効きます。気づかないまま続けて、後から整えるほうが高くつく。これは他の分野の記事でも繰り返してきたことです。
立場が変わる境目は、どの分野にもあります。個人から事業者へ、趣味から商売へ、小規模から一定の規模へ。境目があることを知っているだけで、近づいたときに気づけます。
買う人の立場から、設計できること
表示の項目は、どれも買う人が判断するために必要な情報です。いくらか、いつ届くか、返せるか、誰が売っているか。
これを揃えることは、義務であると同時に売れるための条件でもあります。情報が揃っていない商品は、そもそも買われません。規制を守ることと、良い商品ページを作ることは、同じ方向を向いています。
この一致に気づくと、面倒だと感じなくなります。やらされる作業ではなく、買ってもらうための作業として取り組める。同じ手間でも、意味づけが変わると続けやすくなります。
まとめ
- ネットでテンプレートや教材を売る形は、特定商取引法の「通信販売」に当たり得る(消費者庁)
- 「業として営むとは、営利の意思を持って、反復継続して取引を行うこと」とされ、「営利の意思の有無については、その者の意思にかかわらず、客観的に判断される」
- そして「上記要件に該当すれば、個人でも特定商取引法上の『販売業者又は役務提供事業者』となります」
- 該当する場合、広告に表示する事項が定められている。販売価格(送料も)、支払時期と方法、引渡時期、申込みの期間の定め、申込みの撤回や解除に関する事項、事業者の氏名・住所・電話番号、価格以外に負担する金銭、ソフトウェアの動作環境など
- 返品特約がある場合の内容(返品の可否、期間等条件、費用負担の有無)は「省略が認められない」
- インターネット通販では、最終確認画面においても表示することが定められている(法第15条の3ただし書、省令第44条)
- 作る前に決めるのは3つ。どこで売るか/返品と返金の条件/問い合わせをどこまで受けるか
- 想定モデルは9時間30分。1本3,000円・手数料2割なら、約12本が損益分岐
よくある質問(FAQ)
個人が数本売るだけでも、対象になりますか。
この記事では該当の判断は示しません。消費者庁のガイドは「業として営むとは、営利の意思を持って、反復継続して取引を行うことをいいます」とし、「営利の意思の有無については、その者の意思にかかわらず、客観的に判断されることとなります」「上記要件に該当すれば、個人でも特定商取引法上の『販売業者又は役務提供事業者』となります」と説明しています。自分の販売が該当するかどうかは、専門家や消費生活センター等の窓口にご相談ください。
住所や電話番号は、必ず公開しなければいけませんか。
ガイドの表示事項には「事業者の氏名(名称)、住所、電話番号」が挙げられています。ただし、消費者からの請求に応じて遅滞なく提供する措置を講じている場合に一部の事項を省略できる、という規定についても説明されています。また、販売する場所によっては、表示の扱いがサービス側の仕組みに含まれていることがあります。使うサービスの案内を確認し、判断に迷う場合は専門家や窓口にご相談ください。
データ商品なので「返品不可」と書けば十分ですか。
ガイドは、返品特約がある場合の内容(返品の可否、返品の期間等条件、返品に係る費用負担の有無)について「省略が認められない」としています。そのうえで「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」を参考に表示を工夫するよう求めています。どう書けば足りるかは個別の判断になるため、そちらのガイドラインを確認し、迷う場合は窓口にご相談ください。
テンプレートは「ソフトウェア」に当たりますか。
該当の判断はここでは示しません。ただし表示事項に「いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境」が挙げられており、省略できる項目の表にも「ソフトウェアを使用するための動作環境」の行があります。実務としては、どのソフトのどのバージョンで作成し動作を確認したかを書いておくと、買う側が判断でき、問い合わせも減ります。
副業として始めるとき、確定申告や会社への影響はどうなりますか。
この記事では販売時の表示と条件の整理だけを扱っています。副業全般の論点は姉妹メディア「20代の放課後」で扱っています。確定申告と20万円ルール、副業の始め方を参照してください。
作り始める前に、表示事項の一覧を読んでおく
販売価格、支払時期、引渡時期、返品特約、氏名と住所と電話番号、ソフトウェアの動作環境。消費者庁の特定商取引法ガイドに、通信販売の表示事項がまとまっています。商品ページを作る前に、一度通しで読んでおいてください。