この記事の内容
記録が続かないのは、項目が多いから
架電の記録は、たいてい2週間で止まります。理由は担当者のやる気ではありません。項目が多すぎて、通話中に書けないからです。
そして通話中に書けなかった分は、後から書くことになります。後から書こうとすると、記憶が曖昧なので手が止まる。手が止まると、次の架電を優先する。こうして記録が消えていきます。
記録が無いと何が起きるか
| 起きること | 損の中身 |
|---|---|
| 同じ会社に同じ入り方で掛ける | 前回断られた理由が分からないので、同じ結果になる |
| 断られた相手に再度掛ける | 相手にとっては反復。会社ごとブロックされる |
| どこで落ちているか分からない | 接続率も通過率も出せないので、改善の場所を特定できない |
| 担当が変わると全部消える | 引き継ぎの材料が無い。ゼロから始めることになる |
3つ目が効いてきます。記録が無い状態では、トークを直しても効果が測れません。測れないので、何が良かったのかも分からないまま進むことになります。
設計の原則は1つ
この記事で書くことは、突き詰めると1つです。通話中に書ける量に絞り、選択肢から選ぶ形にする。
自由記述を減らし、選ぶだけにすれば、手が止まりません。そして選択肢を固定すると、後から集計できるようになります。この2つは同じ設計から出てきます。
通話中に書く4項目
通話中に記録するのは4つだけです。これ以上増やすと、会話に集中できなくなります。
6項目の構成。通話中は4つ、通話後に2つ。
1. 日時
手で入れないでください。行を作った時点で自動的に入る形にします。スプレッドシートなら、記録用の行を追加したときに日時が入る設定にしておきます。
日時が要るのは、再送や再架電の間隔を判断するためです。時刻まで残すと、後から時間帯ごとの接続率を出せます。日付だけだと、この分析ができません。
2. どこまで届いたか
歩留まりを出すための項目です。5択にします。
| 選択肢 | 意味 |
|---|---|
| 不通 | 呼び出しても出ない、番号が使われていない |
| 受付止まり | 人は出たが、取り次がれなかった |
| 担当者不在 | 取り次ごうとしたが、担当者がいなかった |
| 担当者と会話 | 担当者本人と話せた |
| 折り返し待ち | 伝言を残した、または折り返しを依頼された |
この5つで、接続率も通過率も接触率も計算できます。率ごとに別の項目を作る必要はありません。1つの項目から、複数の率を導けます。
5択にする理由
もっと細かく分けたくなりますが、選択肢が増えると選ぶのに時間がかかります。通話中に7つ以上から選ぶのは現実的ではありません。
そして細かく分けても、集計するときには結局まとめることになります。「受付で切られた」と「受付で保留にされたあと切られた」を分けても、改善する場所は同じです。
逆に、5つより減らすと歩留まりが出せなくなります。たとえば「不通」と「受付止まり」を同じにすると、番号の問題とトークの問題が区別できません。5つは、集計に必要な最小の数です。
3. 結果
次の章で詳しく書きます。ここも選択肢から選ぶ形にします。
4. 相手の言葉
1行だけ、相手が言ったとおりに書き写します。要約しないでください。
「間に合っています」と「今は予算がないんです」は、どちらも断りですが意味が違います。要約して「断り」とだけ書くと、この差が消えます。
そして、この項目が改善に最も効きます。選択肢だけでは、なぜその結果になったのかが分からないからです。
結果の選択肢を固定する
結果を自由記述にすると、集計も検索もできなくなります。選択肢を固定します。
6つに分ける
| 結果 | 意味 | 次の扱い |
|---|---|---|
| 前進 | アポ、資料送付の許可、次回の約束が取れた | 次のアクションへ |
| 保留 | 時期を理由に断られたが、次の時期が聞けた | その時期に再架電 |
| 断り・今回 | 今回は不要。将来の接触は妨げられていない | 一定期間後に再架電可 |
| 断り・恒久 | 今後連絡しないでほしいと言われた | 恒久的に除外 |
| 到達せず | 不通、番号違い | 番号を確認するか、対象外へ |
| 再架電 | 不在、時間が合わなかった | 日を改めて掛け直す |
「断り」を2つに分ける理由
ここが最も重要です。「今回は不要」と「今後連絡しないで」を同じ扱いにすると、大きな損をします。
同じ扱いにして両方を除外すると、将来の接触が可能な相手まで失います。逆に両方を再架電可にすると、連絡しないでほしいと言った相手に掛けてしまいます。
断られ方の型についてはテレアポの切り返しで整理しています。記録の選択肢は、その型と対応させておくと判断が速くなります。
迷ったときの決め方
選択肢があっても、どれに入れるか迷う場面は出ます。迷ったら、より厳しいほうを選んでください。
断り・今回か断り・恒久かで迷ったら、恒久にします。前進か保留かで迷ったら、保留にします。
理由は単純で、厳しく記録して機会を逃すより、甘く記録して相手を怒らせるほうが損が大きいからです。厳しく入れた行は、次の接触で戻せます。
自由記述に何を書くか
自由記述は1つだけ、「相手の言葉」の欄です。ここに何を書くかで、記録の価値が変わります。
書くのは、相手が言ったこと
こちらの感想や判断は書きません。「脈がなさそう」「感じが悪かった」は、次の人の役に立ちません。むしろ先入観を作ります。
書くのは事実です。相手が何と言ったか。それだけです。
悪い例 反応が薄かった。あまり興味なさそう。 良い例 「今は他社さんにお願いしていて」 「担当は別の者なので、また改めて」
自由記述の書き方。感想ではなく、聞こえた言葉を残す。
要約しない
「予算がないと言われた」ではなく「来期にならないと予算が取れない、と言われた」と書きます。
前者だと、恒久的に予算がないのか、今期だけなのかが分かりません。後者なら、次に掛ける時期が決まります。
書けなかったときは空欄にする
思い出せないなら、書かないでください。曖昧な記憶で埋めると、記録が信用できなくなります。
空欄は「書かなかった」という情報です。適当に埋めた行と混ざると、どの行が信用できるのか分からなくなります。
肯定的な言葉も残す
断り文句ばかり記録して、うまくいった通話の記録が薄くなることがあります。失敗のほうが印象に残るからです。
ですが前進した通話で相手が何と言ったかは、そのまま次のトークの材料になります。「その話なら聞きたい」と言われたなら、直前に何を言ったかが効いています。
結果が「前進」の行は、相手の言葉を必ず埋めてください。数が少ないので、負担にはなりません。そしてこの数十行が、スクリプトを改訂するときの最も価値のある材料になります。
長く書かない
1行から2行で足ります。長く書くと、次の架電までの時間が伸びて、結局続かなくなります。
詳しく残したい商談は、別の場所に書いてください。架電の記録は、量ではなく継続が目的です。
通話後に足す2項目
通話が終わってから、30秒以内に2つ足します。
5. 次にすること
資料を送る、日程を調整する、指定された時期に再架電する。約束したことを書きます。
無ければ「なし」と書いてください。空欄にすると、書き忘れたのか本当に無いのかが分かりません。
そして期限も書きます。「資料を送る」だけだと、いつまでに送るのかが決まりません。「今日中に資料を送る」まで書いて、初めて実行できる形になります。
6. 次回の可否と時期
次に掛けてよいか、掛けるならいつか。これをリストの状態に反映させます。
| 結果 | リストの状態 | 次回 |
|---|---|---|
| 前進 | 進行中 | 約束した日 |
| 保留 | 有効 | 聞いた時期の1か月前 |
| 断り・今回 | 有効 | 一定期間後(自社で決めた間隔) |
| 断り・恒久 | 対象外・恒久 | なし |
この反映を自動にできると、記録が確実に運用につながります。手で状態を変える運用だと、記録はしたが状態が更新されていない行が生まれます。
30秒で終わらせる
2項目とも、選ぶか短く書くだけです。これ以上かかるなら、項目の設計が重すぎます。
次の架電に移る前に終わることが条件です。後でまとめて入力する運用にすると、まず続きません。
どこに記録するか
項目を決めても、置き場所が悪いと続きません。
架電画面と同じ場所に置く
別のアプリを開かないと記録できない状態だと、それだけで手が止まります。通話中に視線を移すだけで書ける場所に置いてください。
専用のツールが無ければ、スプレッドシートを画面の半分に開いておくだけで足ります。重要なのはツールではなく、開く動作が要らないことです。
会社の表と履歴の表を分ける
1社1行に記録を上書きしていくと、前回の記録が消えます。履歴は別の表に、1接触1行で積みます。
会社の表 会社ID / 法人番号 / 社名 / 電話番号 / 状態 / 次回予定日 架電履歴の表 履歴ID / 会社ID / 日時 / 到達段階 / 結果 / 相手の言葉 / 次にすること
2つの表に分ける。履歴は消さずに積み上げる。
この形にすると、同じ会社への3回の架電が、3行として残ります。前回何を言って何と言われたかが見えるので、入り方を変えられます。
紙で運用してもよい
システムが無いからと、記録を始めないのが最も損です。紙のメモでも、選択肢に丸を付ける形なら通話中に書けます。
ただし紙のまま置いておくと集計できないので、1日の終わりにまとめて表へ移す工程を入れてください。5分で終わります。
この方法の利点は、項目の設計を試せることです。紙の様式を1週間使ってみて、書きにくい項目や使わない項目が見えてから、表の設計を固めます。最初からシステムを組むと、直すのに手間がかかります。
架電の直前に前回の記録を見る
記録は、書くより読むほうが価値があります。掛ける前に、その会社の履歴を見る動作を手順に入れてください。
見ないなら、書く意味がありません。会社の表に「前回の結果」「前回の相手の言葉」を表示しておくと、探さずに済みます。
記録をどう読むか
たまった記録から何を読むか。3つの見方があります。
1. 歩留まりを出す
「どこまで届いたか」の項目を集計すれば、接続率・通過率・接触率が出ます。どこで落ちているかが1つに絞れます。
指標の割り方と、低いときに直す場所はインサイドセールスのKPI設計で整理しています。
2. 断りの理由を分類する
「相手の言葉」を月に1回読み返して、似たものをまとめます。同じ断り文句が集中しているなら、そこに対策の余地があります。
たとえば「担当が分からない」が多いなら、リストの担当部署情報が足りていません。「今は忙しい」が多いなら、架電の時間帯を見直します。
分類は、最初から完璧にしなくて構いません。3つか4つの山にまとまれば十分です。
読むのは月に1回でよい
毎日読み返す必要はありません。日々の記録は書くだけにして、読むのは月に1回にまとめます。
理由は2つあります。1つは、日次では件数が少なすぎて傾向が見えないこと。もう1つは、毎日読むと目先の数字に反応して、施策を頻繁に変えてしまうことです。
月に1回、1時間を確保してください。その時間で、歩留まりの計算と、断りの理由の分類と、次の月に変えることの決定を全部やります。分けて何度もやるより、まとめて1回のほうが続きます。
3. 時間帯ごとの接続率を見る
日時を時刻まで記録していれば、時間帯ごとの接続率が出せます。
ただし件数が足りないうちは見ないでください。1つの時間帯につき数十件たまるまでは、偶然の差のほうが大きくなります。
読まない項目は削る
3か月運用して、一度も読んでいない項目があれば削ってください。読まない項目は、書く時間を消費するだけです。
削ることに抵抗があるかもしれませんが、項目が少ないほど記録は続きます。続く記録のほうが、多くの項目を持つ止まった記録より価値があります。
複数人で回すときの設計
選択肢の意味を全員で揃える
「受付止まり」と「担当者不在」の区別が人によって違うと、集計が意味を持ちません。各選択肢の定義を1行ずつ書いて、記録画面の近くに置いてください。
とくに迷いやすいのが、受付で「担当は席を外している」と言われた場合です。受付止まりなのか、担当者不在なのか。どちらでも構いませんが、全員が同じように入れることが条件です。
記録の入力率を見る
架電数に対して、記録がある行の割合を出してください。これが低いなら、項目が重すぎます。
入力率が低いことを担当者の問題にしないでください。書けない設計になっていることのほうが多い。入力率は、設計の評価指標です。
新しく入った人には、まず読ませる
記録の書き方を教える前に、既存の記録を読ませてください。読んで役に立った経験がないと、書く意味が伝わりません。
具体的には、これから掛ける会社の履歴を10件ほど読んでもらいます。前回何と言われたかが分かると、入り方を変えられることが実感できます。
その後で書き方を教えると、「何を書けば次の人が助かるか」が分かった状態で書き始められます。様式の説明から入ると、埋める作業として覚えてしまいます。
週に1回、記録を読む時間を作る
各自が自分の記録を読み返す時間を、15分でよいので作ります。書きっぱなしにすると、書く動機が失われます。
読み返して気づいたことを1つだけ共有する。これを続けると、記録が「やらされる作業」から「自分のための材料」に変わります。
個人別の数字は慎重に扱う
記録がたまると、個人別の率が出せるようになります。ここで比較を始めると、記録の質が落ちます。
理由は単純で、自分の数字が悪く見える記録を、誰も進んで残さなくなるからです。断りを「保留」に寄せる、不在を記録しない、といった歪みが出ます。
そうなると、記録は改善の材料ではなく評価の材料になり、正確さを失います。個人別の数字は、評価ではなく本人の振り返りに使ってください。
チームとして見るときは、全体の歩留まりで判断します。個人差が大きいと感じたら、数字ではなく実際の通話を聞いて原因を探すほうが確実です。
担当が変わるときに引き継ぐ
履歴が残っていれば、引き継ぎは表を渡すだけで済みます。口頭の引き継ぎに頼ると、担当が変わった時点で情報が消えます。
引き継ぎの前に、「対象外・恒久」の行だけは必ず確認してください。ここを引き継ぎ損ねると、断られた相手に新しい担当者が掛けることになります。
まとめ
- 記録が続かないのは担当者のやる気ではなく、項目が多すぎて通話中に書けないから
- 設計の原則は1つ。通話中に書ける量に絞り、選択肢から選ぶ形にする
- 通話中に書くのは4つ。日時、どこまで届いたか、結果、相手の言葉。日時は自動で入る形にする
- 「どこまで届いたか」は5択。この1項目から、接続率・通過率・接触率がすべて出せる
- 結果は6択に固定する。とくに「断り・今回」と「断り・恒久」を必ず分ける
- 迷ったら厳しいほうを選ぶ。厳しく入れた行は次の接触で戻せるが、甘く入れて怒らせると戻せない
- 自由記述は「相手の言葉」1つだけ。感想ではなく、聞こえた言葉を要約せずに書く
- 思い出せないときは空欄にする。曖昧な記憶で埋めると、記録全体が信用できなくなる
- 通話後に2つ足す。次にすること(期限つき)と、次回の可否と時期
- 会社の表と履歴の表を分ける。1社1行に上書きすると、前回の記録が消える
- 掛ける前に前回の記録を見る動作を手順に入れる。読まないなら書く意味がない
- 3か月読んでいない項目は削る。項目が少ないほど記録は続く
- 入力率が低いのは担当者の問題ではなく、設計の問題
架電の記録は、管理のために取るものではありません。次に同じ会社へ掛けるときの自分のために取ります。そう考えると、何を残すべきかが決まります。
よくある質問
記録の項目はいくつが適切ですか
通話中に4つ、通話後に2つの合計6つです。これ以上増やすと通話中に書けなくなり、後から書こうとして手が止まり、結果として記録が止まります。項目が多い記録より、少なくても続く記録のほうが価値があります。3か月運用して一度も読んでいない項目があれば、削ってください。
結果はどう分類すればいいですか
6択にしてください。前進、保留、断り・今回、断り・恒久、到達せず、再架電です。とくに重要なのが「断り」を2つに分けること。同じ扱いにして両方除外すると将来の接触が可能な相手まで失いますし、両方を再架電可にすると連絡しないでほしいと言った相手に掛けてしまいます。
どの選択肢か迷ったときはどうしますか
より厳しいほうを選んでください。断り・今回か恒久かで迷ったら恒久、前進か保留かで迷ったら保留です。厳しく記録して機会を逃すより、甘く記録して相手を怒らせるほうが損が大きいためです。厳しく入れた行は、次の接触で戻せます。
「相手の言葉」には何を書けばいいですか
相手が言ったとおりに、要約せずに書いてください。「予算がないと言われた」ではなく「来期にならないと予算が取れない、と言われた」です。前者だと恒久的に予算がないのか今期だけなのか分かりませんが、後者なら次に掛ける時期が決まります。こちらの感想は書かないでください。次の人の役に立たず、先入観を作ります。
思い出せないときは、だいたいで書いてもいいですか
空欄にしてください。曖昧な記憶で埋めると、記録全体が信用できなくなります。空欄は「書かなかった」という情報です。適当に埋めた行と混ざると、どの行が信用できるのか分からなくなります。
記録はどこに置くのがよいですか
通話中に視線を移すだけで書ける場所です。別のアプリを開かないと記録できない状態だと、それだけで手が止まります。専用のツールが無ければ、スプレッドシートを画面の半分に開いておくだけで足ります。重要なのはツールではなく、開く動作が要らないことです。
記録の入力率が低いのですが、どう改善すればいいですか
担当者の問題にしないでください。書けない設計になっていることのほうが多いからです。入力率は、記録設計の評価指標だと考えてください。項目を減らす、選択肢から選ぶ形にする、置き場所を架電画面の隣にする。この3つで、たいていは改善します。