当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。掲載リンクからご購入いただいた場合、当サイトに報酬が発生することがあります。

不動産投資ローンと住宅ローンの違い|転用が一括返済になる根拠と、住めなくなったときの手続【2026年版】

集合住宅と契約書類。不動産投資ローンと住宅ローンは返済の当てが違う

自宅を買うときの住宅ローンと、賃貸に出す物件を買うときの不動産投資ローン。名前が似ているせいか、「金利が低いほうで借りられないか」という発想が生まれやすい領域です。

結論から書くと、この2つは金利の高低で選べる商品ではありません。そもそも返済の当てにしているものが違い、その違いが契約の条件になっています。住宅ローンで投資物件を買えば、金利が得かどうか以前に契約違反になります。

ここまでは、多くの記事が書いています。この記事が足すのは、その先です。誰がどう見つけて、何が起きるのか。一括返済という結果は、どの文書に根拠があるのか。そして投資用ローンの側は、実際にはどういう審査をしているのか。

使うのは4つの一次情報です。住宅金融支援機構が公表している【フラット35】の利用条件と不適正利用への対応、会計検査院の検査結果を受けた機構のお知らせ(2022年10月6日)、金融庁「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」(平成31年3月公表)、そして民法と国税庁タックスアンサーです。

住宅ローンの審査項目そのものは住宅ローン審査に落ちる理由で、国土交通省の調査をもとに整理しました。

結論:違いは「何を返済の当てにするか」にある

人に貸すのが住宅ローン、事業に貸すのが投資用ローン

住宅ローンは、借りた本人の収入から返してもらう前提で組み立てられています。だから審査では年収、勤務先、勤続年数、ほかの借入れといった「人」の情報を中心に見ます。物件は担保として評価されますが、物件そのものが現金を生むことは想定されていません。自宅は収益を生まない資産だからです。

これに対して投資用ローンは、買った物件が生む家賃収入から返してもらう前提に立ちます。金融庁は調査報告のなかで、一棟のアパート・マンション向け融資について「物件の賃貸事業が長期的に生み出すキャッシュ・フローの水準が債務の返済可能性を大きく左右し、また、顧客の債務額が大きくなる傾向にあることから、事業性融資の性格が強い」と書いています。個人向けの消費者ローンではなく、事業への融資に近いという整理でした。

この違いは、審査で見る対象の違いにとどまりません。返済が滞ったときに何を売って回収するか、何年で返してもらうかという設計まで変わってきます。事業に貸すなら、その事業が続く期間を超えて貸すわけにはいきません。だから投資用ローンでは、建物があと何年キャッシュを生むかという見積もりが融資期間を決めます。

だから住宅ローンで投資物件を買うと、契約違反になる

返済の当てが違うということは、金融機関が引き受けているリスクの中身が違うということです。住宅ローンの条件は、本人が住むという前提の上に組まれています。その前提を後から外せば、契約の土台が変わってしまいます。

住宅金融支援機構は【フラット35】について、「お客さまの住まいの夢をかなえるために、利用目的を自ら居住する住宅の取得に限定し、長期にわたり固定金利でご融資しております」と説明しています。長期固定という条件と、使い道の限定が、同じ一文のなかで結びつけられている点に注目してください。条件の緩さと使い道の狭さは、切り離せないものとして提示されています。

つまり「住宅ローンのほうが条件がいいから、そちらで買う」という発想は、条件だけを取り出して前提を捨てる行為にあたります。機構はこれを不適正利用と呼び、後述する厳格な対応を公表しました。

返済の当てが違えば、審査で見る場所も変わる 住宅ローン 返済の当て 借りた本人の収入 主に見る 年収・勤続・信用情報 物件の役割 担保 使い道 自ら居住する住宅の取得 住むことが条件に組み込まれている 不動産投資ローン 返済の当て 物件が生む家賃収入 主に見る 収支計画・耐用年数 物件の役割 事業そのもの 使い道 賃貸事業のための取得 事業性融資の性格が強いとされる 出典:住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件、金融庁「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」

住宅ローンの使い道は「自ら居住する住宅の取得」に限定されている

利用条件に書かれている一文

【フラット35】の資金使途は、機構のサイトに明記されています。「お申込ご本人またはそのご親族の方がお住まいになる新築住宅の建設・購入資金または中古住宅の購入資金」。これが対象です。

読み落としやすいのが「またはそのご親族の方」の部分でしょう。申込本人が住む場合だけでなく、親族が住む住宅も対象になります。セカンドハウスや親族居住用については、機構が別枠の案内を用意しています。一方で、第三者に賃貸する物件は、この定義のどこにも入りません。

民間の住宅ローンにも同様の資金使途条項があります。ただし民間の金融機関は審査基準を公表しないため、条文として確認できる形で出ているのは機構の商品です。住宅ローン審査に落ちる理由でも触れたとおり、数値や条件を明文で公開している住宅ローンは【フラット35】だけになります。物差しとして使えるのはここです。

認められない4つの使い方

機構は「【フラット35】の不適正利用に巻き込まれないために」というページで、認められない使い方を4つ挙げています。投資目的だけではありません。

認められない使い方(機構の原文) よくある入口
自らは居住するつもりがなく、投資目的で住宅を取得すること 「住民票だけ移せば大丈夫」という勧誘
融資住宅に自ら居住せずに、事務所又は店舗として利用すること 開業にあたって自宅扱いで借りる
自動車の購入費用など住宅取得費以外の費用を上乗せして申し込むこと 諸費用に紛れさせる形の上乗せ
消費者ローンなどの返済に充てる費用を上乗せして申し込むこと(おまとめローン) 「立て替えるから上乗せして」という提案

3つめと4つめは、投資と関係のない行為です。住宅取得費以外の金額を上乗せして申し込むこと自体が、使い道の逸脱にあたるという整理です。機構は実際にあった事例として、「カードローンの残高を住宅取得価格に上乗せして契約書を締結していた事例」を紹介しています。事業者から「一時的に立て替えるので、その分を上乗せした金額で融資を申し込み、そのお金で返済すればよい」と言われたという内容でした。

この事例の本人は「他の客もみなそうしていると言われて、一括返済請求を受けるまで問題ないと思っていた」と述べています。違反の自覚がないまま契約に至る経路が、実際に存在するということです。

低い金利は、この限定と引き換えになっている

投資用ローンの条件が住宅ローンより厳しくなる理由は、貸し手から見たリスクの違いにあります。自宅の場合、住む場所を失うことを避けるために、借り手は他の支払いを削ってでも返済を優先しがちです。賃貸物件の場合、その動機は働きません。

加えて、投資用ローンは土地と建物を一体で取得するため、借入額そのものが大きくなります。金融庁も「顧客の債務額が大きくなる傾向にある」と指摘していました。金額が大きく、返済の動機が弱く、収入源が空室や家賃下落に左右される。この3つが同時に存在します。

だから両者は、同じ担保・同じ借り手でも別の商品になります。条件のいいほうを選ぶという考え方が成立しないのは、そもそも選択肢として並んでいないからです。

発覚したときに起きること。機構は6つを公表している

一括返済請求だけではない

不適正利用が判明した場合の対応として、機構は6項目を公表しています。多くの記事が触れるのは1つめだけですが、公表されているのは次の内容です。

機構が公表している対応
(1) 不適正利用が判明した融資の残債務の一括返済請求
(2) 不適正利用事案の警察への通報
(3) 不適正利用に関与した事業者の監督官庁への通報
(4) 住民票について虚偽の届出をした者に関する自治体への通報
(5) 不適正利用を行った者に対する損害賠償請求
(6) 不適正利用に関与した取扱金融機関に対する処分

(4)に注目してください。住民票の虚偽の届出が、独立した通報対象として挙がっています。「住民票だけ移しておけばいい」という勧誘は、機構の側から見れば通報対象の行為そのものを指示していることになります。

(6)も見落とされがちです。処分の対象には取扱金融機関が含まれます。窓口となった金融機関にとっても不利益が生じる構造になっており、だからこそ金融機関の側にも確認する動機が働きます。

「事業者に任せていた」は通らない

機構は責任の所在についても明記しています。「たとえお客さまが手続を事業者任せにしていたとしても、虚偽の内容で融資を受けることは犯罪(詐欺罪)であり、お客さま自身が責任を問われることになります」。

この一文は、勧誘を受ける側にとって最も重い部分でしょう。書類を作ったのが事業者でも、申込書に署名するのは本人です。機構が挙げている4つの事例は、いずれも本人が「騙された」と認識した後のものですが、それでも責任が本人に帰属すると明示されています。

事例には、「就職の条件に投資マンション購入を強要させられていた事例」も含まれます。内定先から「不動産を持っていないと信用できない」と言われて住宅ローンを組んだところ、別の会社の採用試験を受けさせられ、結局ローンだけが残ったという内容でした。勧誘の入口が不動産業者とは限らないということです。

融資後に、利用状況を調査している

では、どうやって発覚するのでしょうか。機構のページには「融資実行後、定期的に融資住宅のご利用状況を調査しています。当該調査により不適正利用の懸念があった場合は、より詳細な調査を実施しています」と書かれていました。実行時点の審査だけでなく、その後も継続して見ているという建て付けです。

この体制は、外部の指摘を受けて強化された経緯があります。2022年10月6日、機構は会計検査院の検査結果についてお知らせを出しました。検査対象となった平成29・30年度に融資が実行されたフラット35に係る買取債権7,100件のうち、56件について融資要件に適合しない事案が判明したという内容です。

機構は「該当する56件いずれの案件についても融資要件に適合するよう是正を求め、これに応じない場合には一括返済を求めるなど厳正に対処して参ります」としたうえで、令和4年9月30日付けで新たに規定を整備し、毎年度の融資実行分について融資後状況調査を着実に実施すると述べています。調査の頻度と範囲は、この時点で引き上げられました。数年後に問い合わせが来る可能性を前提に考える必要があります。

「一括返済」は民法が決めているわけではない

民法137条が挙げる3つの事由に、資金使途違反は入っていない

借りたお金を期日まで返さなくてよい権利を、法律では期限の利益と呼びます。民法136条1項は「期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する」としています。分割で返せるのは、この期限の利益があるからです。

これを失う場合について、民法137条が定めを置いています。条文はこうです。「次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき」。

挙がっているのは3つだけです。資金使途違反はここに入っていません。つまり「住宅ローンを目的外に使うと、民法により当然に一括返済になる」という説明は、条文どおりではないことになります。

根拠は契約書の特約にある

では一括返済請求の根拠はどこにあるのでしょうか。金銭消費貸借契約書に置かれる期限の利益喪失条項です。民法137条が定めるのは法律上当然に失う場合であって、それ以外の事由については当事者が契約で定めることになります。

機構の説明も、この構造を前提にしています。不適正利用について「ローン契約違反であり、住宅金融支援機構では融資の残債務について一括返済請求を行うこととなります」と書かれていました。根拠として示されているのは法令ではなく、ローン契約です。財形住宅融資の案内でも「機構(旧公庫)とお客様との間で取り交わした契約に違反することとなり、融資金の全額を一括してお返しいただくこととなります」という表現が使われています。

この区別には実益があります。契約に書かれている以上、どの行為が該当するかは契約書を読めば分かるということです。法律の一般論を調べるより、自分の契約書の該当条項を探すほうが早く、かつ正確です。金銭消費貸借契約証書と、機構の住宅ローンであれば業務方法書に基づく条件が手元にあるはずですから、期限の利益喪失に関する条項を確認してください。

投資用ローンの側は、何を見て貸しているのか

金融庁が示した3つの審査の柱

ここからは投資用ローンの側を見ます。手がかりになるのは、金融庁が平成31年3月に公表した「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」です。平成30年10月・11月に、121の銀行、261の信用金庫、148の信用組合に対して行われた調査でした。

金融庁は、一棟建(土地・建物)向け融資の審査について3つの柱を示しています。第1に「主たる返済原資は融資対象物件が生み出すキャッシュ・フローであると捉える」こと。第2に「物件がキャッシュ・フローを生み出す期間をできる限り客観的に検証したうえで、当該耐用年数と整合的な融資期間を設定」すること。第3に「賃料水準の下落や空室の増加等のストレスも勘案した完済までの収支シミュレーションを踏まえ、賃貸事業としての妥当性や返済可能性を見極める」ことです。

この3つを裏返すと、借りる側が用意すべきものが見えてきます。物件が何年間いくらのキャッシュを生むのか、その見込みが下振れしたときにどうなるのか。住宅ローンで問われる「あなたはいくら稼いでいますか」とは、まったく別の質問です。

融資期間は「あと何年キャッシュを生むか」で決まる

投資用ローンで特徴的なのが、融資期間の決め方でしょう。金融庁は、期間設定の基礎となる耐用年数について、税法上の法定耐用年数と、劣化や陳腐化を勘案した経済耐用年数の2つがあると整理しています。どちらを使うべきかについては「融資の方針、物件の用途や過去および将来の管理状況等によって異なると考えられ、画一的な正解はない」とし、調査でも「どちらがより多く用いられているかについて有意な傾向は見出しがたい」という結果でした。

ただし金融庁は、次の点に注意を促しています。「一部の金融機関では、中古物件を取得するための融資において経済耐用年数を基に融資期間を設定する中、築年数を考慮すると法定耐用年数を大幅に超過する融資期間となることを許容しているケースもある」。長い期間で借りられたという事実は、その物件が長くもつという評価とイコールではないということです。

法定耐用年数は減価償却の計算にも直結します。建物の構造ごとの年数と、中古物件の見積もり方については不動産投資の減価償却で扱いました。融資期間が償却期間を超えると、経費にできる金額が減ったあとも返済が続く局面が生まれます。

収支シミュレーションは、ほぼ全件で行われている

収支シミュレーションについては、実施率そのものは高い水準でした。金融庁の集計では92%の銀行、89%の信用金庫・信用組合が、全件で審査時に収支シミュレーションを実施していると回答しています。

ただし金融庁は、中身にばらつきがあると指摘しました。「完済までの全期間における重要な収支を網羅的に記載させる場合が多いものの、中には完済に至る前の一部期間に限ったシミュレーションにとどまっていたり、保証付融資ではシミュレーションを行わない場合もあるなど、精緻さにはばらつきがある」。

借りる側から見れば、ここは確認できる項目です。提示された収支シミュレーションが何年目までを対象にしているか。大規模修繕の費用は入っているのか。家賃下落と空室率について、どの程度のストレスをかけた数字なのか。金融庁が改善事例として挙げたのも「全融資期間をシミュレーションの対象としたり、定期的に発生する大規模修繕も返済計画に織り込むこととした事例」でした。

金融庁が問題にしたのは「住宅ローンの延長として審査していること」

95%の銀行が、物件の収支だけでは見ていない

この調査で最も示唆的なのは、次の数字です。「95%の銀行および91%の信用金庫・信用組合が、返済能力を検証するにあたり物件の収支のみならず顧客の給与収入等を考慮していると回答している」(有効回答は115の銀行、305の信用金庫・信用組合)。物件の収支だけを見ていると答えたのは、残りのごく一部でした。

金融庁は、給与収入を考慮すること自体を否定してはいません。「一般的に顧客の給与収入等は、物件のキャッシュ・フローが一時的に減少した際の副次的な返済原資として考慮されることが信用リスク管理上あり得るものと考えられる」としています。問題にされたのは、その位置づけでした。

続く一文が核心です。「一棟建(土地・建物)向け融資を住宅ローンの延長と捉え、物件収支と給与収入の合算を要返済額と比較したうえで返済能力を判定するなど、給与収入を主要な返済原資のひとつとして考えている場合もあり、物件の経常的なキャッシュ・フローのみで債務を返済できる見込みがなくとも融資が実行されるケースもある」。金融庁は「住宅ローンの延長」という言葉を、貸し手側の審査を批判する文脈で使っていました。

実行後の見直しを「一切行っていない」が約半数

もう1つ、期中管理についての結果があります。金融庁の公表資料は、実績を踏まえた収支見込の更新を「一切行っていない」とする金融機関が約半数だったとしています。融資のあとに返済可能性が見直されないケースが多いと推察される、という書き方でした。

あわせて、実行後に空室率や賃料の実績を確認する比率が低い金融機関もあると指摘されています。つまり、審査の時点で作られた収支計画が、その後に検証されないまま残ることがあるということです。

この事実は、借りる側の実務に直結します。計画が現実からずれても、誰も教えてくれない可能性があると考えるべきでしょう。家賃の実績、空室の期間、修繕費の発生額を自分で記録し、当初の計画と突き合わせる作業は、借り手の側でやるしかありません。

顧客のリスク理解の確認も、徹底されていなかった

顧客への説明についても差がありました。金融庁の集計によると、変動金利の場合に将来的に支払利息が増加する可能性がある旨を説明しているかについては、銀行の85%が必ず実施と回答しています。一方、収支見込やサブリースの条件など物件取得にあたり重要な点について顧客の理解を確認しているかについては、必ず実施と答えた銀行は53%でした。

金融庁は「物件収支の見込みやリスクに関する顧客の理解度の確認が徹底されていない金融機関が相当数あり」と総括しています。金利の話は説明されるが、事業の話は確認されないことがある、という構図です。

サブリースについては、機構の不適正利用の事例にも登場します。「サブリースなので家賃収入は安心と言われて、投資物件を購入したが、購入後半年過ぎた頃から家賃の振込が途絶えがちになり、ここ2ヶ月はまったく振込がない」という内容でした。賃貸住宅管理業法による規制の中身はサブリース新法で扱っています。表面利回りの数字だけを見ることの危うさについてはワンルーム投資やめとけの根拠も参照してください。

投資用ローンの審査と説明の実態(銀行の回答) 給与収入等も考慮 95% 収支試算を全件実施 92% 金利上昇を必ず説明 85% 収支理解を必ず確認 53% 出典:金融庁「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」平成31年3月公表 平成30年10月・11月に121の銀行等へ発出。設問ごとに有効回答数が異なる

転勤などで住めなくなったときの手続

「留守管理」は【フラット35】の制度ではない

ここまでは意図的な転用の話でした。では、転勤のようにやむを得ない事情で住めなくなった場合はどうなるのでしょうか。

機構のサイトには「転勤などで一時的に住めなくなったとき」という案内があり、管理人を選任することで返済を継続できる留守管理という手続が説明されています。期間は3年以内で、転勤の場合は辞令または勤務先が発行する証明書を金融機関に提出します。

ただし、ここで注意が必要です。この案内のタイトルには「(財形住宅融資のみ)」と明記されています。留守管理は財形住宅融資の手続であって、【フラット35】に同じ制度があるとは書かれていません。フラット35を利用している場合は、返済中の取扱金融機関に事情を伝えて相談することになります。ネット上には両者を区別せずに書いている記事がありますが、自分が借りている商品がどちらなのかを先に確かめてください。

無断で貸すと、やむを得ない事情でも一括返済になる

共通しているのは、無断で貸してはいけないという点です。機構は財形住宅融資の案内で「無断で融資住宅を知人に賃貸したり、融資住宅にお住みにならないと機構(旧公庫)とお客様との間で取り交わした契約に違反することとなり、融資金の全額を一括してお返しいただくこととなりますので、ご注意ください」と書いています。

「知人に」という具体例が入っている点に意味があります。営利目的の賃貸事業でなくても、住まない状態で第三者に使わせれば契約違反になり得るという趣旨です。空き家にしておくのがもったいないという善意の判断が、そのまま違反になります。

やむを得ない事情があるかどうかと、手続を踏んだかどうかは別の問題です。転勤の辞令が出た時点で、まず借入先に連絡する。順序はこれになります。

住宅ローン控除は「住まなくなる日までに」届出を出す

税務の側にも期限があります。国税庁タックスアンサーNo.1234「転勤と住宅借入金等特別控除等」は、令和8年4月1日現在の法令等に基づく内容として、住まなくなった場合の取扱いを示しています。

家族と共に住まなくなった場合、その年以降は控除を受けられません。ただし再び住んだときに残りの控除期間について再適用を受けられる場合があり、その要件が2つ挙げられています。1つは「勤務先からの転任の命令その他これに準ずるやむを得ない事由があること」。もう1つが「家屋を居住の用に供しなくなる日までに、一定の手続を行っていること」です。

この手続とは、「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を家屋の所在地の所轄税務署長に提出することを指します。期限は住まなくなる日までです。引っ越してから気づいても間に合いません。さらに、再適用が始まるのは再び住んだ年からですが、その年にその家屋を賃貸に供していた場合は、翌年以後となります。貸していた期間があると、1年ずれる仕組みです。単身赴任で家族が住み続ける場合の取扱いは別に定められており、一定の要件を満たせば控除は継続します。控除の要件そのものは住宅ローン控除の条件で整理しました。

まとめ

住宅ローンと不動産投資ローンは、返済の当てにしているものが違います。前者は借りた本人の収入、後者は物件が生む家賃収入です。この違いが商品の条件を決めているため、金利の高低で選ぶという発想は成り立ちません。

住宅ローンの使い道は「自ら居住する住宅の取得」に限定されています。機構は認められない使い方を4つ挙げており、投資目的だけでなく、事務所・店舗としての利用や、住宅取得費以外の費用の上乗せも含まれます。発覚した場合の対応として公表されているのは6項目で、一括返済請求のほか、警察への通報、自治体への通報、損害賠償請求、取扱金融機関への処分が並びます。手続を事業者に任せていた場合でも、責任は本人に及ぶと明記されています。

一括返済の根拠は民法ではありません。民法137条が挙げる3つの事由に資金使途違反は含まれておらず、根拠はローン契約の特約にあります。したがって確認すべきは法律の一般論ではなく、自分の契約書の期限の利益喪失条項です。

投資用ローンの側では、金融庁が「事業性融資の性格が強い」と整理したうえで、返済原資・耐用年数・ストレスを勘案した収支シミュレーションの3点を審査の柱として示しています。ただし実態としては95%の銀行が給与収入等も考慮しており、金融庁はこれを「住宅ローンの延長と捉え」た審査として問題視しました。実行後の収支見込の更新を一切行っていない金融機関も約半数にのぼります。計画と実績の突き合わせは、借りる側が自分で続けるしかありません。

やむを得ず住めなくなった場合は、無断で貸さずに借入先へ連絡してください。留守管理は財形住宅融資の手続であり、フラット35の制度としては案内されていません。税務では、再適用を受けるための届出書を住まなくなる日までに提出する必要があります。

よくある質問(FAQ)

住宅ローンで買った家に数年住んでから貸すのは問題ありませんか

自己判断で貸し始めることは避けてください。機構は財形住宅融資の案内で「無断で融資住宅を知人に賃貸したり、融資住宅にお住みにならないと機構(旧公庫)とお客様との間で取り交わした契約に違反することとなり、融資金の全額を一括してお返しいただくこととなります」としています。何年住んだかによって扱いが変わるとは書かれていません。賃貸に出したい事情が生じたら、まず借入先の金融機関に相談し、投資用ローンへの借り換えを含めて条件を確認してください。あわせて、賃貸に出すと住宅ローン控除の取扱いも変わります。

住民票を移しておけば分からないと言われました

機構が公表している対応の(4)は「住民票について虚偽の届出をした者に関する自治体への通報」です。住民票の操作は、発覚を防ぐ手段としてではなく、独立した通報対象として位置づけられた行為です。また機構は「融資実行後、定期的に融資住宅のご利用状況を調査しています」としており、会計検査院の検査を受けて令和4年9月30日付けで規定を整備し、毎年度の融資実行分について融資後状況調査を実施するとの方針を示しました。あわせて、虚偽の内容で融資を受けることは詐欺罪にあたり、手続を事業者に任せていた場合でも本人が責任を問われると明記されています。

親が住む家を自分の住宅ローンで買えますか

【フラット35】の資金使途は「お申込ご本人またはそのご親族の方がお住まいになる新築住宅の建設・購入資金または中古住宅の購入資金」とされており、親族が住む住宅は対象に含まれます。機構は親族居住用住宅の申込みについて別途の案内を用意しているため、条件はそちらで確認してください。ただしこれは「自分は住まないが親族が住む」場合の話であって、第三者に賃貸する物件は対象外です。民間の金融機関の場合は商品ごとに取扱いが異なるので、申込先に直接ご確認ください。

投資用ローンの審査で、自分の年収は見られますか

見られます。金融庁の調査では、95%の銀行および91%の信用金庫・信用組合が、返済能力を検証するにあたり物件の収支のみならず顧客の給与収入等を考慮していると回答しました。ただし金融庁は、給与収入を主要な返済原資のひとつとして扱い、物件の経常的なキャッシュ・フローのみで返済できる見込みがなくても融資が実行されるケースがあることを問題として指摘しています。年収で通ったという事実は、その物件が事業として成立することを意味しません。物件単体の収支で返済できるかどうかは、自分で確かめる必要があります。

提示された収支シミュレーションは、どこを見ればよいですか

金融庁が挙げた論点がそのまま確認項目になります。第1に対象期間です。完済までの全期間か、途中までか。金融庁は「完済に至る前の一部期間に限ったシミュレーションにとどまっていたり、保証付融資ではシミュレーションを行わない場合もある」と指摘しています。第2に大規模修繕が織り込まれているかどうか。改善事例として「定期的に発生する大規模修繕も返済計画に織り込むこととした事例」が挙げられていました。第3にストレスです。金融庁が求めているのは「賃料水準の下落や空室の増加等のストレスも勘案した」シミュレーションですから、家賃と入居率をどの水準で置いているかを確認してください。

転勤で家を離れます。何から手をつければよいですか

順序としては、借入先への連絡と、税務署への届出の2つを並行して進めることになります。借入先については、無断で第三者に住まわせることが契約違反にあたるため、辞令が出た段階で連絡してください。留守管理という手続が案内されていますが、機構のページには「(財形住宅融資のみ)」と明記されており、フラット35の制度としては案内されていません。自分の借入商品がどれかを確認したうえで問い合わせてください。税務については、再適用を受けたい場合、「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を家屋の所在地の所轄税務署長に、居住の用に供しなくなる日までに提出する必要があります。なお家族が住み続ける単身赴任の場合は、別の取扱いとなります。

契約書を開く前に、この2つを読んでください

住宅ローンで投資物件を買うことが何を招くかを、機構は正面から公表しました。投資用ローンの審査がどう行われているかは、金融庁の調査結果に書かれています。どちらも勧誘する側が引用しない資料です。

機構 不適正利用への注意喚起
金融庁 投資用不動産向け融資の調査

本記事は一般的な情報提供を目的としています。特定の金融機関・商品・物件を推奨または否定するものではなく、投資を勧誘するものでもありません。融資の条件および契約上の期限の利益喪失事由は金融機関および商品によって異なります。金融庁の調査結果は平成31年3月公表のもので、現在の実態と異なる場合があります。個別の判断は、金融機関、税理士または弁護士にご相談ください。

上部へスクロール