
「AIでパワポを作ろうとしたら動かない」という相談が増えています。ボタンが出てこない、押しても何も起きない、提案が一切表示されない。公式ヘルプを読むと、止まる場所ごとに原因がはっきり分かれていました。
この記事では、Microsoftの公式ヘルプとLearnに書かれている内容だけを並べ、確認する順番に並べ直します。内容は公式ヘルプで確認したものです。仕様と対象プランは更新されるため、判断の前には原典で最新の記載をご確認ください。
結論:止まる場所は3層に分かれる
先に全体像を示します。公式の記載を並べると、動かない原因はライセンス・ファイルと形式・スライドの中身の3層に整理できました。上の層で引っかかっていると、下の層を何度直しても動きません。だから、上から順に確認するのが正しい進め方になります。
いちばん上の層が、いちばん見落とされる
結論から言うと、多くの人がつまずいているのは1層目のライセンスです。Copilotのライセンスを持っているのに作成系の機能が動かない、という状況が公式に説明されています。詳しくは次の節で引きますが、ライセンスがもうひとつ必要という構造になっています。これを知らないと、プロンプトを書き直したり、ファイルを作り直したりと、2層目以下をいくら触っても状況が変わりません。まず自分が1層目を通過しているかを確かめる。ここを飛ばすと、原因にたどり着けないまま時間だけが過ぎます。
3層目は、自分のスライドの作り方の話
一方で、3層目は設定でも契約でもなく、スライドをどう作ったかで決まります。テーマをどこから持ってきたか、図形を描いているか、写真を何枚置いているか。どれも自分で変えられる要素です。そして公式には、これらについて具体的な条件が数字つきで書かれています。「なんとなく提案が出ない」と思っていたものが、条件を読むとはっきり説明できることがあります。以降の節では、1層目から順に、公式に書かれている条件を確認していきます。自分がどこで止まっているかを特定するのが目的です。
上から順に確認する
上が通らないと、下を直しても動かない。
ライセンスが、もうひとつ要る
1層目です。ここが本記事でいちばん伝えたい部分で、公式FAQに明確な記載があります。Copilotが使える状態でも、できることとできないことが分かれる構造になっていて、しかもその境目が「作成できるかどうか」にきれいに一致しています。
Designerライセンスの有無で、機能が分かれる
Microsoftの公式FAQには、こう書かれています。ユーザーがMicrosoft Designerライセンスを持っていない場合、要約、オープンエンドのQ&Aプロンプト、基本的なチャット機能などのPowerPoint機能でCopilotにアクセスできます。つまり、まったく使えないわけではありません。問題は続きです。ただし、一部の機能は、ユーザーがDesignerライセンスを持っている場合にのみ機能します。これらの機能には、スライドの追加、特定のトピックに関するプレゼンテーションの作成、ファイルからのプレゼンテーションの作成、プレゼンテーションの整理、プレゼンテーションへの画像の追加などがあります。並んでいるのは、いずれも「作る」系の機能です。
「質問には答えるのに、作ってくれない」の正体
この記載を読むと、よくある症状の説明がつきます。資料について質問すると答えるのに、「この内容でスライドを作って」と頼むと何も起きない。これは不具合ではなく、ライセンスの範囲の違いである可能性があります。要約とQ&Aは動き、スライドの追加や生成は動かない。公式の分け方とぴったり一致します。ここで大事なのは、プロンプトの書き方を直しても解決しないという点です。同じ操作を何度試しても結果は変わりません。管理者に確認するのが最短で、聞くべきことは「Designerライセンスが自分に割り当てられているか」です。
Designer自体にも前提がある
Designerの側にも条件があります。公式ヘルプには、これはサブスクライバーのみのMicrosoft 365の機能ですと書かれており、デスクトップバージョンのPowerPointでは、サブスクライバーのみがデザインの提案を受け取りますとされています。加えて、1つのMicrosoft 365サブスクリプションパッケージにはデザインアイデアが含まれていません。Office 365 Germanyですという例外も明記されています。さらに、Designerはサブスクライバー向けの機能ですが、一部の組織ではこの機能をオフにしていますとも書かれています。契約していても、組織の設定で止まっている可能性があるということです。
ファイルと形式の条件
2層目です。ライセンスが通っていても、扱っているファイルの形や参照の仕方で止まることがあります。ここは条件が単純なので、確認も早く済みます。公式FAQに、対象となる形式と接続の要件が明記されています。
PowerPointファイルでのみ使える
基本の条件から。公式FAQには、PowerPointのCopilotは、PowerPointファイル(.ppt、.pptx)でのみ使用でき、使用するにはインターネット接続が必要ですと書かれています。2つ条件が入っています。1つはファイルの形式。他の形式で開いている場合や、互換モードのような状態では想定どおりに動かない可能性があります。もう1つがインターネット接続です。オフラインで作業していると使えません。移動中の新幹線や、接続が不安定な会議室で「動かない」と感じたことがあるなら、ここが原因のことがあります。まずファイルを保存し直して、接続を確かめる。1分で終わる確認です。
参照できるファイルは、一度に1つ
資料からスライドを作らせたい場合の条件も書かれています。既存のWordドキュメントのコンテンツに基づいてプレゼンテーションを生成します。一度に1つのファイルに対応しています。複数の資料をまとめて渡すことはできません。そして、Microsoft Copilotのライセンスをお持ちの場合は、WordまたはPDFから選択できます。また暗号化されたドキュメントも含まれますとされています。一方、Copilot Pro(ホーム)をお持ちの場合は、1つのWordファイルに基づくプレゼンテーションの作成のみがサポートされています。個人向けと法人向けで、扱える形式が違うということです。PDFを渡して動かない場合、これに当たっている可能性があります。
長さにも制限がある
もうひとつ、量の条件があります。公式FAQは、Copilotは現在、プロンプトごとに処理できる単語の数に制限されていますとしています。具体的な数字は示されていませんが、長い資料をそのまま渡すと全体を扱いきれない可能性がある、と読めます。元の資料が長いときは、章ごとに分けて渡すほうが確実です。また、参照の仕方についても書かれていて、Wordファイルは、Copilot作成ボックスに「/」と入力し、使用するファイルを選択することで参照できますとされています。ファイルを開いてコピーするのではなく、この参照の操作を使うのが正しい手順です。
テーマを変えると、提案が出なくなる
3層目に入ります。ここからは、自分のスライドの作り方が原因になる話です。最初に挙げるのが、いちばん気づきにくく、そして社内資料で頻発する条件です。公式ヘルプに一行で書かれていますが、読み飛ばしやすい場所にあります。
付属のテーマを使う、と書かれている
デザイン提案が表示されないときの確認事項として、公式ヘルプはこう書いています。PowerPointに付属しているテーマを使用します(ユーザー設定のテーマまたは別の場所からダウンロードしたテーマではありません)。つまり、自作のテーマや、外部から持ってきたテンプレートを使っていると、提案が出ない可能性があるということです。会社のテンプレートを使っている人は、まさにこの条件に当たります。多くの企業は独自のPowerPointテンプレートを配布しています。それを開いた状態でデザイン提案を待っても、出てこない。故障ではなく、条件どおりの動きです。
会社のテンプレートは、別の使い方をする
では会社のテンプレートは使えないのか、というと、そうではありません。Copilotの公式FAQには、ブランドの扱いについて別の記載があります。会社のブランドイメージが含まれた任意のPowerPointプレゼンテーションまたはテンプレートファイルをテンプレートとして使用できます。会社のテンプレートから新しいプレゼンテーションを作成することも、会社のブランドイメージが含まれたプレゼンテーションのコピーを保存してCopilotで新しいプレゼンテーションを作成することもできます。つまり、テンプレートから始めるという使い方は想定されています。デザイン提案とは別の道筋がある、と理解しておくと混乱しません。
接続エクスペリエンスの設定も要る
テーマと並んで確認したいのが、Office側の設定です。公式ヘルプには、Designerを使用するには、Officeの「接続エクスペリエンス」がオンになっていることを確認してくださいとあります。手順も書かれていて、「ファイル」タブで「アカウント」を選択し、「アカウントのプライバシー」で「設定の管理」を選択します。「オプションの接続エクスペリエンス」で、「オプションの接続エクスペリエンスを有効にする」のチェックボックスをオンにします。この設定は、セキュリティ方針でオフにされていることがあります。個人で変えられない場合は、情報システム部門に相談する項目です。ここがオフのままだと、他をいくら直しても提案は出ません。
図形とテキストボックスが、提案を止める
ここも見落としやすい条件です。しかも、資料を作り込む人ほど当てはまりやすいという、やっかいな性質があります。公式ヘルプにははっきりした一文が書かれていて、これを知っていると作り方そのものが変わります。
描いた時点で、提案できなくなる
公式ヘルプの見出しは「図形またはテキストボックスがあるスライドにデザインアイデアが表示されない」です。本文はこうなっています。スライドに図形またはテキストボックスが描画されている場合、Designerはデザイン候補を提案できません。プレースホルダーに写真やテキストを配置できます。つまり、自分でテキストボックスを挿入してそこに文字を書くと、提案が止まります。PowerPointに慣れている人ほど、テキストボックスを自由に置く癖がついています。その慣れが、この機能とは相性が悪いということになります。使いたいなら、レイアウトのプレースホルダーに入力する形に変える必要があります。
レイアウトの指定もある
関連して、使うレイアウトについても条件が書かれています。画像付きのスライドについては、スライドにタイトル、またはタイトル+コンテンツのスライドレイアウトが適用されていることを確認します。プロセスを示すスライドについては、スライドにタイトル+コンテンツのスライドレイアウトが適用されていることを確認しますとされています。白紙のレイアウトに自由に配置していくやり方は、条件から外れます。ここまで読むと、Designerが想定している作り方が見えてきます。レイアウトを選び、プレースホルダーに内容を入れる、という標準的な手順です。自由に作るほど、支援を受けにくくなるという関係になっています。
共同編集中も、表示されない
もうひとつ、チームで作業しているときの条件があります。他のユーザーとプレゼンテーションを共同編集していて、複数のユーザーが1つのスライドを同時に編集している場合、Designerではそのスライドのデザイン候補が表示されません。これは知らないと原因不明の不調に見えます。締切前に複数人で分担して1つのファイルを触る、というのはよくある場面です。そのとき、たまたま同じスライドを開いていると提案が出ない。公式には続きもあり、1人のユーザーがスライドを編集している場合、Designerは、写真の挿入など、ユーザーが実行した特定のアクションに応じてデザインの提案を再開しますとされています。分担するなら、スライド単位で分ける。これが対処になります。
写真には、枚数と大きさの条件がある
画像を入れたスライドで提案が出ないときの条件も、数字つきで書かれています。ここは確認が簡単で、しかも当てはまっていることが多い部分です。写真の扱い方を少し変えるだけで結果が変わるので、試す価値があります。
1枚につき4枚まで、200ピクセルより大きく
公式ヘルプには、画像付きのスライドについての確認事項が並んでいます。使用する写真(.jpg、.png、.gif、または.bmp)はスライド1枚につき4枚までとします。写真のサイズが200×200ピクセルより大きいことを確認してください。2つの条件が入っています。枚数の上限が4枚であること、そして最小のサイズが決まっていること。ロゴやアイコンのような小さい画像を並べていると、サイズの条件に引っかかる可能性があります。逆に言えば、大きめの写真を4枚以内に抑えれば条件を満たします。形式も4つに限定されているので、あまり見かけない形式を使っている場合は変換が要ります。
写真と図形を同居させない
同じ節に、もうひとつ条件があります。写真と同じスライド上で、他のオブジェクトまたは図形を使用しないでください。プロセスベースのスライドについても同様で、他の写真、オブジェクト、図形をプロセステキストと同じスライド上で使用しないでくださいとされています。前の節の内容と合わせると、方針が見えてきます。1枚のスライドに要素を詰め込むほど、提案は出にくくなる。写真なら写真、プロセスならプロセスと、1枚の役割を絞ったほうが支援を受けられます。これは資料の読みやすさとしても悪くない方向なので、従って損はありません。
そもそも生成できないと、何も出ない
最後に、条件を全部満たしても提案が出ない場合について書かれた一文を引きます。Designerは比較的新しいサービスであるため、まだ新しいテクニックを学習しています。Designerが高品質のオプションを生成できない場合、オプションはまったく表示されません。質の低い候補を出すくらいなら何も出さない、という設計です。つまり「何も出ない」は、エラーではなく正常な結果である場合があります。ここを知っていると、無駄に原因を探さずに済みます。スライドの内容を少し足す、写真を差し替えるなど、材料を変えて試すほうが早いこともあります。
ボタンが灰色のときの確認順
最後に、症状別の確認順をまとめます。ボタン自体が見当たらない場合と、ボタンはあるが灰色の場合とで、見るところがまったく違います。公式ヘルプはこの2つを分けて説明しているので、そのまま手順として使えます。
ボタンがない場合
公式ヘルプには、「デザインの提案」ボタンがない場合は、次の点を確認する必要がありますとして、いくつか挙げられています。前の節までで見たとおり、デスクトップバージョンではサブスクライバーのみがデザインの提案を受け取ること、Office 365 Germanyにはデザインアイデアが含まれていないこと、接続エクスペリエンスがオンになっているか、そして一部の組織ではこの機能をオフにしていること。もうひとつ、環境固有の話もあります。Microsoft 365からMicrosoft 365サブスクリプションにアップグレードした場合、サブスクライバー機能を利用するには、アンインストールしてから再インストールする必要があります。アップグレード直後に出てこない場合は、これに当たることがあります。
ボタンが灰色の場合
こちらは原因が絞られます。公式ヘルプには、リボンに「デザイン候補」ボタンがあるのに淡色表示されている場合として2つ挙げられています。インターネットに接続していない可能性があります。そして、1枚のスライドが選択されていない。後者には詳しい説明が続きます。これは、標準表示のスライドのサムネイルウィンドウで複数のスライドが選択されている場合、またはサムネイルウィンドウのフォーカスが2つのスライドの間にある場合に発生します。また、「ノート」ウィンドウが選択されている場合、または標準ビューではなくスライドショービューで表示している場合にもこの状態になります。サムネイルを1枚だけ選び直す。これで直ることがあります。
確認する順番
以上をまとめると、確認の順番はこうなります。1つ目、Designerライセンスが割り当てられているか。作成系だけ動かないなら、ここです。2つ目、ファイルが.pptまたは.pptxで、インターネットに接続しているか。3つ目、接続エクスペリエンスがオンか。4つ目、テーマがPowerPoint付属のものか。5つ目、図形やテキストボックスを描いていないか、レイアウトのプレースホルダーを使っているか。6つ目、写真が4枚以内で200×200ピクセルより大きいか。7つ目、同じスライドを他の人が編集していないか。この順で見れば、たいていどこかで止まっている理由が見つかります。
まとめ
PowerPointでAIの機能が動かないとき、原因はライセンス・ファイルと形式・スライドの中身の3層に分かれます。いちばん大きいのが1層目で、公式FAQはDesignerライセンスを持っていない場合、要約、オープンエンドのQ&Aプロンプト、基本的なチャット機能などにアクセスできるとしたうえで、スライドの追加、特定のトピックに関するプレゼンテーションの作成、ファイルからのプレゼンテーションの作成、プレゼンテーションの整理、プレゼンテーションへの画像の追加はDesignerライセンスを持っている場合にのみ機能すると明記しています。質問には答えるのに作ってくれない、という症状は、ここで説明がつきます。
2層目は形式です。PowerPointファイル(.ppt、.pptx)でのみ使用でき、使用するにはインターネット接続が必要とされ、参照は一度に1つのファイル、Copilot Pro(ホーム)は1つのWordファイルのみ、法人向けのライセンスならWordまたはPDFから選択でき、暗号化されたドキュメントも含まれるとなっています。3層目はスライドの作り方で、PowerPointに付属しているテーマを使用します(ユーザー設定のテーマまたは別の場所からダウンロードしたテーマではありません)という条件と、スライドに図形またはテキストボックスが描画されている場合、Designerはデザイン候補を提案できませんという条件が効きます。
写真については、スライド1枚につき4枚まで、サイズが200×200ピクセルより大きいこと、そして写真と同じスライド上で、他のオブジェクトまたは図形を使用しないとされています。さらに、複数のユーザーが1つのスライドを同時に編集している場合、Designerではそのスライドのデザイン候補が表示されません。最後に、Designerが高品質のオプションを生成できない場合、オプションはまったく表示されません。上の層から順に確認する。それだけで、原因を探す時間が大きく減ります。
よくある質問(FAQ)
質問には答えるのに、スライドを作ってくれません
公式FAQには、Designerライセンスを持っていない場合、要約やQ&A、基本的なチャット機能にはアクセスできるが、スライドの追加、トピックからのプレゼンテーション作成、ファイルからのプレゼンテーション作成、整理、画像の追加はDesignerライセンスを持っている場合にのみ機能する、と書かれています。
会社のテンプレートを開くと、デザイン提案が出ません
公式ヘルプには、PowerPointに付属しているテーマを使用する(ユーザー設定のテーマまたは別の場所からダウンロードしたテーマではない)と書かれています。ただしCopilotのFAQでは、会社のブランドイメージが含まれたプレゼンテーションやテンプレートファイルをテンプレートとして使用できる、とも案内されています。
テキストを入れたのに提案が表示されません
公式ヘルプには、スライドに図形またはテキストボックスが描画されている場合、Designerはデザイン候補を提案できない、と書かれています。プレースホルダーに写真やテキストを配置するよう案内されています。
写真を入れたスライドで提案が出ないのはなぜですか
公式ヘルプには、タイトルまたはタイトル+コンテンツのレイアウトを適用すること、写真と同じスライド上で他のオブジェクトや図形を使用しないこと、写真は1枚のスライドにつき4枚までで200×200ピクセルより大きいこと、が挙げられています。
ボタンが灰色で押せません
公式ヘルプには、インターネットに接続していない可能性、または1枚のスライドが選択されていない可能性が挙げられています。後者は、複数のスライドが選択されている場合、サムネイルウィンドウのフォーカスが2つのスライドの間にある場合、ノートウィンドウが選択されている場合、スライドショービューで表示している場合に起きるとされています。
条件を満たしているのに何も出ないことがあります
公式ヘルプには、Designerが高品質のオプションを生成できない場合、オプションはまったく表示されない、と書かれています。何も出ないこと自体が正常な結果である場合があります。内容や写真を変えて試すのが有効です。
自分の環境の条件を確かめる
ライセンスと機能の対応は更新されます。判断の前に、PowerPoint の Designer を使用して本格的なスライド レイアウトを作成する(Microsoft Support)で最新の記載をご確認ください。