
3社目、4社目を考えている。ただ「転職回数が多いと不利」という話が頭を離れない。何回までなら大丈夫なのか、基準を知りたい。
基準という形では存在しません。ただ、企業が何を見ているかは公的な調査に出ています。処遇を決めるときに最も重視されるのは「経験・能力・知識」で53.7%、前職の役職は0.6%です。回数という項目は、そもそも上位に入っていません。
この記事では、回数が実際にどう扱われるか、短い在籍の実態、回数が問題になる2つの条件、職歴の並べ方、面接で聞かれたときの答え方までを扱います。年収の実態は転職で年収は上がるのかで扱っています。
回数そのものを見ている会社は少ない
処遇を決める要素の順位
この順位が示すのは、企業が知りたいのは「何ができるか」であって、経歴の形ではないということです。前職の役職が0.6%、前職の賃金が0.4%という数字は、肩書きや前の年収がほぼ処遇を動かさないことを意味します。
回数が重視される項目として上位に出てこないのも同じ理由です。回数は能力を示す情報量が少ないため、判断材料として弱いのです。
それでも気にする会社はある
一方で、回数を気にする会社が存在しないわけではありません。定着を重く見る業界、年功的な処遇が残る企業では、回数が話題になります。ただしそれは「落とす基準」ではなく「確認したい点」として出てきます。
確認されているのは1点です。「うちでも同じ理由で辞めるのではないか」です。回数を責めたいわけではなく、次の定着を予測したいだけです。ここが分かると、答え方も決まります。
企業側にはそもそも評価の基準がない
転職者を採用するときの問題として、「応募者の能力評価に関する客観的な基準がない」と答えた事業所は38.8%あります(同調査)。4社に1社以上が、評価の物差しを持っていないと自認しています。
基準がない相手に対して、回数という数字だけが残ると、それが判断材料になってしまいます。だからこそ、こちらから能力の基準を渡す必要があります。書き方は異業種転職の職務経歴書で扱っています。
短い在籍は珍しくない
転職者の勤務期間の分布
| 直前の勤め先の通算勤務期間 | 割合 | 読み方 |
|---|---|---|
| 6か月未満 | 7.8% | 短期だけで1割弱 |
| 6か月〜1年 | 9.9% | 1年未満で合計17.7% |
| 1〜2年 | 17.1% | 2年未満で合計34.8% |
| 2〜5年 | 26.9% | 最も多い層 |
| 5〜10年 | 17.7% | 長期在籍から動く人も一定数 |
| 10年以上 | 19.7% | 2割は10年以上在籍してから移る |
最も多いのは2〜5年で26.9%です。「1社に10年」が標準ではありません。2年未満で動いた人が34.8%いるという事実は、短い在籍が例外的でないことを示しています。
「短い在籍が複数ある」が問題になる
1回の短い在籍は、理由を説明できれば通ります。問題になるのは、短い在籍が連続しているときです。1年・1年・1年と並ぶと、個別の理由よりも「パターンではないか」と読まれます。
逆に、5年・1年・4年という並びなら、1年の部分だけを説明すれば済みます。並びの中で例外が1つなら、それは例外として扱われます。職歴全体の形を見て、どこを説明すべきかを先に決めてください。
回数より在籍年数の合計
採用側が実際に見ているのは、その職種・業界で何年やってきたかです。3社で合計8年なら、8年の経験として評価されます。同じ領域で積み上がっているなら、社数は分母になりません。
逆に、領域が毎回変わっている場合は、合計年数が経験として積み上がりません。この場合は回数ではなく、共通して残ったものを抽出して書く必要があります。束ね方は職務経歴書の考え方が使えます。
回数が問題になる条件は2つだけ
条件① 理由に一貫性がない
1社目は人間関係、2社目は給与、3社目は業務内容。理由がばらばらだと、「その都度の不満で動いている」と読まれます。回数そのものではなく、理由の散らばりが問題です。
一貫性は、辞めた理由ではなく選んだ理由で作ります。「一貫して、裁量のある環境を探してきた」「一貫して、専門性を深められる場を選んできた」。この形なら、複数回の移動が探索の過程として成立します。軸の作り方は転職の軸は何個必要かで扱っています。
条件② 積み上がっているものが見えない
もう1つは、各社で何が増えたのかが見えない場合です。3社経験しても、できることが1社目と同じなら、回数は無駄な移動として映ります。
対処は、社ごとに「できるようになったこと」を1行書くことです。1社目で受注から納品までの流れ、2社目で見積の設計、3社目で複数案件の並行管理。この積み上げが見えれば、回数は経験の幅として読まれます。
この2つ以外は気にしなくてよい
| よく心配されること | 実際の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 3回以上は多すぎる | 回数の上限という基準は存在しない | 処遇決定で重視されるのは経験・能力・知識53.7% |
| 前職の役職が下がる | ほぼ影響しない | 前職の役職を最重視は0.6% |
| 前職より年収が低かった | 次の処遇の基準にならない | 前職の賃金を最重視は0.4% |
| 在籍1年未満がある | 1つなら例外として説明可能 | 2年未満の転職者が34.8%存在 |
4つとも、心配の重さと実際の影響が釣り合っていません。時間を使うべきなのは、回数を隠す工夫ではなく、一貫性と積み上げの説明です。
職歴の並べ方で印象は変わる
時系列だけで書くと回数が前に出る
職務経歴書を編年体で書くと、最初に目に入るのが社名と在籍期間の並びになります。回数が多い人にとっては、最も不利な見せ方です。内容を読む前に、形で判断されます。
対処はキャリア式です。冒頭に「できること」を3つ置き、その下に各社の経験を紐づけます。読む順番が「何ができるか」→「どこでやったか」に変わるため、社数は背景情報の位置に下がります。
在籍期間の書き方
期間は年月で正確に書きます。ごまかすと、後で提出する書類との不整合が出ます。短く見せるための操作は、発覚したときの損失が大きすぎます。
ただし、書き方の工夫は可能です。短期の在籍が複数ある場合、同じ職種なら「営業職として通算7年(3社)」という要約を先に置き、その下に内訳を書く。要約が先にあると、読み手は合計年数で把握します。
説明が必要な箇所に印をつける
職歴を書き終えたら、自分で読み返して、面接官が引っかかるであろう箇所に印をつけてください。おそらく1〜2か所です。その箇所だけ、口頭で答える準備をします。
全部に準備しようとすると、話が長くなり、聞かれていないことまで話すことになります。聞かれるのは限られた箇所だけです。逆質問の設計は転職面接の逆質問で扱っています。
回数を聞かれたときの答え方
3つの要素で組む
| 要素 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| ① 一貫している基準 | 選ぶときに毎回見ていたもの | 裁量の範囲が広がるかどうかで選んできた |
| ② 各社で増えたもの | 社ごとに1行、できるようになったこと | 1社目で提案の型、2社目で見積の設計、3社目で複数案件の管理 |
| ③ 次で完結する理由 | 探していたものが応募先にある | 貴社は担当領域を自分で設計できると伺った |
③が最も重要です。回数の質問は、突き詰めれば「次も辞めるか」の確認だからです。探していたものが応募先で見つかる、という構造を示せば、回数は論点から外れます。
そのまま使える答え方
「転職が3回目ですが、理由を教えてください」への回答例
結果として3社になりましたが、選ぶ基準は変わっていません。担当できる範囲が広がるかどうかで判断してきました。
1社目では提案から受注までの流れを覚え、2社目では見積の設計まで任されました。3社目では複数案件の並行管理を担当し、案件ごとの採算を自分で見るようになりました。
次に必要なのは、案件の設計そのものに関わることです。貴社では担当者が要件から入ると伺ったので、ここで一段深いところまでやりたいと考えています。
長さはこの程度で十分です。辞めた理由を1社ずつ説明しないのがこの答え方の要点です。選んだ基準を1つ示し、各社で増えたものを並べ、応募先で完結する理由を置く。それ以上は聞かれてから答えます。
言わないほうがよいこと
前職への批判は避けます。回数が多い人が前職を批判すると、「合わない環境が続いた」のではなく「合わせられない人」と読まれます。主語を人や会社から、業務の構造に移してください。
「今回は長く働きたいです」という表明も、それだけでは弱いです。意欲は確認材料になりません。長く働ける構造上の理由を1つ挙げるほうが、はるかに効きます。
3回目以降で気をつけること
領域を固定する
3回目以降は、領域を変えないほうが説明が通ります。同じ職種・同じ業界で積み上がっていれば、社数は経験の幅として機能します。領域まで毎回変えると、合計年数が経験として計上されません。
すでに領域がばらついている場合は、共通して使ってきた能力を1つ抽出します。「業種は違うが、いずれも法人相手の提案業務だった」のように、横串を1本通す形です。異業種からの書き換えは営業から他職種への分解方法が応用できます。
次は在籍年数を作る
回数が増えたぶん、次の在籍年数の重みが上がります。3年続けば、直近の実績として最も強い材料になります。逆に次も短いと、パターンとして固定されます。
そのため、次の1社は条件の確認を厚くしてください。労働条件通知書の内容、配属先、担当範囲の変更の余地。入社後に判明する不一致を減らすのが、在籍年数を作る最も確実な方法です。確認項目は内定を承諾する前にで整理しています。
年収は一度下がる可能性を見込む
転職による賃金変化は、増加39.0%・変わらない20.2%・減少40.1%です(同調査 表13)。3割以上減った人も10.9%います。回数が多い場合、直近の実績が短いため、提示額が控えめになることもあります。
下がる前提で、貯蓄で何か月成り立つかを先に計算してください。数字があると、低い提示を受けるかどうかを感情ではなく条件で判断できます。
次を最後にするための条件
転職後も半数近くが「終点ではない」
転職した人のうち、45.9%は現在の勤め先で「ここが終点」と思えていません(同調査 表23)。転職すれば迷いが終わるわけではない、ということです。
この数字は、回数を気にしている人にとって二重の意味を持ちます。次の1社で終わらない可能性が半分近くあるのだから、終わらせるための条件を先に決めておく必要があります。
3つの条件を書き出す
次を最後にするには、満たすべき条件を事前に言語化しておきます。3つだけです。①身につけたい能力 ②任されたい範囲 ③許容できない条件。③が最も抜けます。
③を書くと、選ぶときの下限が決まります。「通勤1時間以上は不可」「年間休日110日未満は不可」のような形です。下限が決まっていれば、迷う対象が減ります。準備の手順は転職の準備は何をするかで扱っています。
今の会社で済む可能性も確認する
回数を増やす前に、社内で変えられるかを確認してください。引き止めの提示で最も多いのは「配置転換をする」で37.0%です(同調査 表12)。会社側も異動という手を持っています。家族がいる場合は、相談の順番も先に決めてください。手順は転職を家族に相談すべきかで扱っています。
異動で解決するかどうかの判定は、担当業務が理由なら有効、処遇や制度が理由なら効きにくい、という分け方です。判定の手順は社内異動という選択肢で扱っています。
まとめ
- 処遇を決めるとき最も重視されるのは「経験・能力・知識」で53.7%。前職の役職は0.6%、前職の賃金は0.4%で、回数は上位の項目として現れない
- 回数を気にする会社でも、確認されているのは「うちでも同じ理由で辞めるか」の1点
- 転職者を採用する際の問題として「客観的な評価基準がない」と答えた事業所は38.8%。基準がない相手には、こちらから能力の基準を渡す
- 直前の勤め先の勤務期間は2〜5年が26.9%で最多。2年未満で34.8%おり、短い在籍は例外ではない
- 問題になるのは短い在籍が連続しているとき。並びの中で例外が1つなら例外として扱われる
- 回数が問題になる条件は2つ。①理由に一貫性がない ②積み上がっているものが見えない。これ以外は気にしなくてよい
- 一貫性は辞めた理由ではなく選んだ理由で作る。複数回の移動が探索の過程として成立する
- 編年体で書くと社名と期間の並びが最初に目に入る。キャリア式で「できること3つ」を先に置くと社数は背景に下がる
- 在籍期間はごまかさない。同職種なら「営業職として通算7年(3社)」の要約を先に置く書き方は可能
- 聞かれたときは①一貫している基準 ②各社で増えたもの ③次で完結する理由の3要素。辞めた理由を1社ずつ説明しない
- 3回目以降は領域を固定する。ばらついている場合は共通して使ってきた能力で横串を1本通す
- 転職後も45.9%が「ここが終点」と思えていない。次を最後にするには身につけたい能力・任されたい範囲・許容できない条件の3つを先に書き出す
よくある質問(FAQ)
転職回数は何回までなら大丈夫ですか。
上限という基準は存在しません。処遇を決めるときに最も重視されるのは「経験・能力・知識」で53.7%、前職の役職は0.6%、前職の賃金は0.4%で、回数は上位の項目として現れません。回数が話題になる場合も、確認されているのは「同じ理由でまた辞めるか」の1点です。回数を減らして見せる工夫より、一貫した基準と各社で増えたものの説明に時間を使ってください。
在籍1年未満の会社があります。書かないほうがいいですか。
書いてください。ごまかすと、後で提出する書類や社会保険の記録との不整合が出ます。2年未満で転職した人は34.8%おり、1つなら例外として説明できます。問題になるのは短い在籍が連続している場合です。5年・1年・4年のような並びなら、1年の部分だけ準備すれば済みます。
面接で回数を指摘されたらどう答えますか。
3要素で組んでください。①毎回変わっていない選ぶ基準 ②社ごとに1行、できるようになったこと ③探していたものが応募先にある理由です。③が最も重要で、回数の質問は突き詰めれば「次も辞めるか」の確認だからです。辞めた理由を1社ずつ説明する形にしないでください。話が長くなり、前職批判に流れやすくなります。
職務経歴書はどう書けばいいですか。
編年体をやめて、冒頭に「できること」を3つ置くキャリア式にしてください。編年体だと社名と在籍期間の並びが最初に目に入り、内容を読む前に形で判断されます。キャリア式なら読む順番が「何ができるか」→「どこでやったか」に変わり、社数は背景情報の位置に下がります。同職種なら「通算7年(3社)」という要約を先に置くのも有効です。
回数が多いと年収は上がりませんか。
回数が直接の要因になるという公的データはありません。ただし転職による賃金変化は増加39.0%・変わらない20.2%・減少40.1%で、4割が下がります。3割以上減った人も10.9%います。直近の在籍が短い場合は、実績として示せる材料が少ないため提示額が控えめになることもあります。下がる前提で、貯蓄で何か月成り立つかを先に計算してください。
次が4社目です。転職しないほうがいいでしょうか。
判断はご自身の軸次第ですが、先に2つ確認してください。1つは社内で変えられる余地です。引き止めの提示で最も多いのは「配置転換をする」で37.0%なので、会社側も異動という手を持っています。もう1つは、次を最後にするための条件です。身につけたい能力・任されたい範囲・許容できない条件の3つを書き出してください。転職後も45.9%が「ここが終点」と思えていないため、条件を決めずに動くと同じ状態が続きます。
転職は、人生の経営判断です
回数を隠す工夫に時間を使わないでください。企業が見ているのは経験・能力・知識で53.7%、前職の役職は0.6%です。選んだ基準を1つと、各社で増えたものを1行ずつ書けば、回数は論点から外れます。
出典:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」(図1・表12・表13・表23・転職者を採用する際の問題)