
ネットショップの開業資金を調べると、「0円で始められます」という説明と「100万円は必要です」という説明の両方が出てきます。どちらも嘘ではありません。
違いは何を数えているかです。そして、実際に効いてくるのは初期費用ではありませんでした。
この記事では、各社の公式料金ページを実際に開いて確認した金額だけを書きます。到達できなかったものは、そう書きます。 金額は変わることがあります。
月額より、手数料のほうが効く
費用を比べるとき、目に入りやすいのは月額です。0円か、3,300円か、4,950円か。ここで判断してしまいがちです。
ただ、実際に払う総額を左右するのは決済手数料とサービス利用料のほうです。売上に比例するので、売れるほど効いてきます。
具体的に見ます。月商10万円と月商100万円で、同じプランでも負担がまったく変わります。
月額0円・手数料6.6%のプラン
月商10万円 → 手数料6,600円。月額と合わせて6,600円
月商100万円 → 手数料66,000円。合わせて66,000円
月額16,580円・手数料2.9%のプラン
月商10万円 → 手数料2,900円。月額と合わせて19,480円
月商100万円 → 手数料29,000円。合わせて45,580円
月商10万円なら前者が安く、月商100万円なら後者が安い。どこかで逆転します。
だから「安いカート」は存在しません。自分の月商でどちらが安いかを計算するだけです。計算の仕方は後で書きます。
自社カート4社の実額
公式の料金ページを開いて確認した金額を並べます。税込と税別が社によって違うので、そこも書きます。ここを揃えずに比べると、判断を誤ります。
もうひとつ揃えるのが、年払いか月払いかです。同じプランでも、年払いにすると月あたりの額が下がるカートがあります。比較表で安く見えているほうが年払いの額だった、ということが起きます。
なお、決済手数料は決済方法によって変わります。以下はクレジットカード決済の標準的な率です。
BASE(税込表記)
スタンダードプラン:初期費用0円、月額0円。決済手数料3.6%+40円、サービス利用料3%
グロースプラン:初期費用0円、月額16,580円(年払いの1か月あたり/月払いは19,980円)。決済手数料2.9%、サービス利用料0円
PayPay・Amazon Pay・PayPalの場合は、決済手数料にシステム手数料相当額1%が加算されます
STORES(税込表記)
フリープラン:月額0円、決済手数料5.5%〜
スタンダードプラン:月額3,300円、決済手数料3.6%〜
月間売上150万円以上の場合は、月額が相談・決済手数料2.9%〜のプランが案内されています
カラーミーショップ(税込表記)
レギュラー:月額4,950円、初期費用3,300円、決済手数料3.4%〜
ラージ:月額9,595円、初期費用3,300円、決済手数料3.19%〜
プレミアム:月額35,640円〜、初期費用22,000円、決済手数料2.99%〜。販売手数料は全プラン0円です
Shopify(税別表記)
Basic:年払い3,650円/月、月払い4,850円/月
Grow:年払い10,100円/月、月払い13,500円/月
Advanced:年払い44,000円/月、月払い58,500円/月。決済手数料はShopify PaymentsでBasic 3.55%〜
比べるときに揃えること
3つあります。
1つ目、税込か税別か。Shopifyは税別、他の3社は税込表記でした。同じ「月額4,000円」でも中身が違います。
2つ目、年払いか月払いか。BASEのグロースプランは年払いで16,580円、月払いだと19,980円です。Shopifyも同様に差があります。年払いは安いぶん、途中でやめても戻りません。
3つ目、サービス利用料の有無。BASEのスタンダードプランには決済手数料とは別に3%のサービス利用料があります。カラーミーショップは販売手数料0円とされています。この項目を見落とすと、実際の負担を読み違えます。
モールは桁が変わる
自社カートとモールでは、費用の構造が違います。金額も桁が変わります。
いちばん大きな違いは、契約期間が定められていることです。自社カートは月額0円から始めていつでもやめられますが、モールはそうなっていません。
楽天市場の出店プランを公式ページで確認しました。金額はすべて税別とページに書かれています。
プランは3つあり、月額が25,000円から130,000円まで分かれています。違うのは金額だけでなく、登録できる商品数と画像容量、そしてシステム利用料の率です。
がんばれ!プラン
月額25,000円(年間一括払)、契約期間1年、登録可能商品数10,000商品まで、画像容量1.5GBまで
システム利用料:パソコン3.5%〜6.5%、モバイル4.0%〜7.0%
スタンダードプラン
月額65,000円(半年ごとの2回分割払)、契約期間1年、登録可能商品数50,000商品まで、画像容量100GBまで
システム利用料:パソコン2.0%〜4.0%、モバイル2.5%〜4.5%。公式は「目標月商が約178万円以上の事業者様におすすめ」としています
メガショッププラン
月額130,000円(半年ごとの2回分割払)、登録可能商品数・画像容量とも無制限(初期値は200,000商品と100GB)
全プラン共通でかかるもの
月額とは別に、共通の費用があります。ここも公式ページに載っています。
- 初期登録費用 60,000円
- 楽天ポイント:楽天会員の購入代金(税抜)× 付与率(通常1.0%)
- 楽天スーパーアフィリエイト:アフィリエイト経由売上の2.6%〜5.2%
- モールにおける取引の安全性・利便性向上のためのシステム利用料:月間売上高の0.1%
- R-Messe:がんばれ!プラン3,000円/月、スタンダード・メガショップ5,000円/月(公式に「無料期間中(終了時期未定)」の注記あり)
- 楽天ペイ利用料:月間決済高の2.5%〜3.5%
月額25,000円のプランでも、実際の負担は月額だけでは終わりません。 契約期間が1年と定められている点も、自社カートとの大きな違いです。
なお、AmazonとYahoo!ショッピングについては今回の確認範囲に含めていません。出店を検討するなら、それぞれの公式の出店案内ページで直接確かめてください。
どこで逆転するかを計算する
ここまでの金額を並べても、まだ判断できません。自分の月商を入れて初めて決まります。
計算式は単純です。月額固定費と、売上に比例する分を足すだけです。
1か月の負担額
月額費用 + 月商 ×(決済手数料率 + サービス利用料率)
注文1件ごとにかかる固定額がある場合は、そこも足します。BASEのスタンダードプランなら決済手数料に「+40円」が付くので、注文件数 × 40円が加わります。
実際に当てはめてみる
月商30万円、注文30件で計算します。数字を入れるとどうなるかを見るためのもので、どのカートが良いという話ではありません。
BASEのスタンダードプランなら、月額0円 + 30万円 ×(3.6% + 3%)= 19,800円。これに40円 × 30件 = 1,200円が加わって、合計21,000円です。
BASEのグロースプランなら、月額16,580円 + 30万円 × 2.9% = 8,700円で、合計25,280円。
この月商だとスタンダードのほうが安い。逆転するのはもっと上です。
同じ計算を、自分が目標にしている月商でやってみてください。いま売れていない段階では、月額0円のほうがほぼ確実に安くなります。
「無料で始める」の意味
月額0円のプランは、初期費用も0円のことが多いです。ではリスクゼロで始められるのか、というと、そうではありません。
かかっているのは時間です。商品を用意し、写真を撮り、説明文を書き、ページを整える。ここに数十時間が消えます。
月額を払わない選択は、お金の話としては正しい。ただ、それで「損はしていない」と考えると、判断がずれます。
カート以外にかかるもの
カートの料金だけを見ていると、抜ける項目があります。ここを足さないと、開業資金の全体が見えません。
抜けやすいのは、カートの画面に出てこない費用です。仕入れ、資材、そして法人にする場合の登記費用。どれも別の場所で発生するので、カートの料金表を見ているだけでは気づきません。
公的機関の公式ページで確認できたものを挙げます。金額を確認できなかったものは、そう書きます。
法人にする場合の登録免許税
法人にするかどうかは、売上の見込みと取引先の要望で決まります。ただ、開業資金という観点では判断しやすい項目です。金額がはっきり決まっているからです。
法務省の公式ページに、次のように示されています。
株式会社の設立
資本金の1000分の7。計算額が15万円未満の場合は、申請1件につき15万円
合同会社の設立
資本金の1000分の7。計算額が6万円未満の場合は、申請1件につき6万円
個人で始めるなら、この費用はかかりません。開業届の提出に手数料は発生しません。
商品を仕入れる資金
ここが最も大きくなる項目ですが、金額は扱う商品で変わるので一般化できません。
ただ、判断の軸は書けます。最初から大量に仕入れないことです。売れるかどうかが分からない段階で在庫を積むと、その分が現金として寝ます。
そして、売れ残った在庫はその年の経費になりません。仕入れた金額のうち、売れた分だけが原価になります。仕入れた時点で経費になると考えていると、資金繰りを読み違えます。
撮影と梱包の資材
これは実額を出せます。この媒体で以前に調べたときの合計です。
撮影機材がまず買う3点で9,868円、梱包資材がまず買う4点で5,299円。合わせて15,000円ほどです。
カートの月額より小さい金額ですが、ここを削ると商品ページの質が落ちます。 削る順番としては最後のほうです。
確認できなかったもの
調べた範囲で、金額にたどり着けなかった項目もあります。ここを推測で埋めると、資金計画そのものが狂うので書きません。
次の項目は、公式ページの本文に到達できなかったか、金額の記載を見つけられませんでした。必要な方は、それぞれの公式ページで直接ご確認ください。
- 各カートの振込手数料と振込申請の下限金額(STORESのスピードキャッシュ利用時の振込手数料275円のみ確認できました)
- 独自ドメインの取得・更新料金(レジストラの価格表をテキストとして取得できませんでした)
- Amazon・Yahoo!ショッピングの出店費用(今回の確認範囲外)
- 小規模事業者持続化補助金の補助率と上限額(公募回によって変わるため、最新の公募要領で確認が必要です)
削っていいものと、削れないもの
資金が限られているとき、どこから削るか。ここには順番があります。
やりがちなのは、金額の大きいものから削ることです。ただ、それだと商品ページの質に関わる項目まで落ちてしまいます。
基準は1つで、売れるかどうかが分かってから判断できるものは後回しにすることです。逆に、売れるかどうかを判断するために必要なものは削りません。
先に削れるもの
カートの上位プラン。月商が読めるまでは月額0円か低額のプランで足ります
モール出店。契約期間1年と初期登録費用がかかるので、自社カートで売れ方を見てからです
法人化。個人で始めて、必要になってから移れます
削らないほうがいいもの
撮影のライト。商品ページの見え方が変わります
梱包資材のメジャー。サイズ区分が1段変わると1個あたり数百円違います
どちらも数百円から数千円で、削っても浮く額が小さいのに、影響が大きい項目です
年払いを選ぶ判断
月額は、年払いにすると下がります。BASEのグロースプランなら月払い19,980円が年払いで16,580円、Shopifyも同様に差があります。
ただし、年払いは途中でやめても戻りません。 売れるかどうかが分かっていない段階で1年分を先に払うのは、判断を早めているだけです。
月払いで始めて、続けると決めてから年払いに切り替える。差額は、判断を後ろに倒すための費用だと考えます。
この記事で確認した金額のまとめ
開業資金の話は、金額そのものより何を数えるかで結論が変わります。月額だけを見ると安いプランが、手数料を足すと高くなることがあるからです。
下にまとめたのは、各社の公式料金ページを実際に開いて確認した金額です。料金は変わるので、契約前に必ず公式ページで確かめてください。
並べるときは、税込か税別か、年払いか月払いか、サービス利用料が別にあるか。この3つを揃えてから比べます。
自社カート(月額・税表記に注意)
BASE(税込):スタンダード0円+3.6%+40円+利用料3%/グロース16,580円+2.9%
STORES(税込):フリー0円+5.5%〜/スタンダード3,300円+3.6%〜
カラーミーショップ(税込):レギュラー4,950円+初期3,300円+3.4%〜/販売手数料0円
Shopify(税別):Basic 年払い3,650円/月、月払い4,850円/月
楽天市場(すべて税別)
がんばれ!プラン25,000円/スタンダード65,000円/メガショップ130,000円。契約期間1年
別途:初期登録費用60,000円、楽天ポイント(通常1.0%)、システム利用料(月間売上高の0.1%)など
法人化する場合(法務省)
登録免許税は資本金の1000分の7。最低額は株式会社15万円、合同会社6万円。個人で始めるならかかりません
計算式
月額費用 + 月商 ×(決済手数料率 + サービス利用料率)+ 注文件数 × 1件あたりの固定額
※各社の公式料金ページを確認したものです。振込手数料と振込申請の下限金額、独自ドメインの更新料、Amazon・Yahoo!ショッピングの出店費用、補助金の補助率と上限額については、公式ページの本文に到達できなかったか記載を見つけられなかったため、この記事では扱っていません。
よくある質問
結局いくらあれば始められますか
カートの費用だけで言えば、月額0円のプランを選べば0円です。ただし撮影と梱包の資材で15,000円ほど、そして商品の仕入れ資金がかかります。仕入れは扱う商品で変わるので一般化できません。金額より、最初から大量に仕入れないことのほうが重要です。売れ残った在庫はその年の経費にならず、現金として寝ます。
どのカートがいちばん安いですか
月商によって逆転するので、一律には決まりません。月額0円・手数料が高いプランと、月額が高く・手数料が低いプランは、どこかの月商で入れ替わります。この記事の計算式に自分の目標月商を入れて比べてください。売れていない段階では、月額0円のほうがほぼ確実に安くなります。
最初からモールに出したほうが売れますか
売れやすさについては、この記事では扱っていません。費用の観点だけで言うと、楽天市場は契約期間が1年と定められていて、初期登録費用60,000円と月額25,000円以上(すべて税別)がかかります。売れなかった場合でも契約期間中は続きます。自社カートは月額0円から始められて、いつでもやめられます。この違いは、費用より判断の自由度の違いとして効いてきます。
年払いにして月額を下げるべきですか
続けると決めてからにしてください。年払いは途中でやめても戻りません。売れるかどうかが分かっていない段階で1年分を先に払うのは、判断を早めているだけです。差額は、判断を後ろに倒すための費用だと考えます。BASEのグロースプランなら月払い19,980円と年払い16,580円で、差は月あたり3,400円です。
サービス利用料と決済手数料は何が違いますか
決済手数料は決済代行の費用、サービス利用料はカートの利用に対する費用です。BASEのスタンダードプランには決済手数料3.6%+40円とは別にサービス利用料3%があり、合計6.6%+40円になります。カラーミーショップは販売手数料0円とされています。この項目を見落とすと、実際の負担を読み違えます。
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自分の目標月商で、2つのプランを計算する
月額費用 + 月商 ×(決済手数料率 + サービス利用料率)。この式に数字を入れて、月額0円のプランと有料プランを比べてください。どちらが安いかは、月商で入れ替わります。