
返品の連絡が来たとき、返品を受けるかどうかは判断できます。特定商取引法の条文と、自分が表示した返品特約で決まるからです。
ただ、そこから先のお金の動き方は、調べてもなかなか出てきません。返金したら決済手数料はどうなるのか。一部だけ返せるのか。コンビニ払いの人にはどう戻すのか。
この記事では、各カートの公式ヘルプと条文から、返金の実務を確かめます。返品を受けるかどうかの判断基準は扱いません。 そちらは特商法の条文の話になるので、別の記事で書いています。
返金しても、決済手数料は戻らない
これが、この記事でいちばん伝えたいことです。返金処理をしても、すでに払った決済手数料は戻ってきません。
感覚的には、取引そのものが無かったことになるのだから手数料も戻る、と考えたくなります。ただ、決済は実際に行われています。カード会社のネットワークを通り、処理された。その作業に対する費用なので、取引を取り消しても発生済みという扱いになります。
BASEの公式ヘルプが、この点をはっきり書いています。
決済は発生しているため、BASE側で徴収している手数料などの返金はおこなっておりません
出典:BASE 公式ヘルプ
Shopifyの英語版公式ヘルプにも、同じ趣旨の記載があります。
When processing a refund, no additional transaction fee is incurred. However, the original credit card transaction fee isn’t refunded to you when issuing a refund.
(返金処理をしても追加の取引手数料は発生しません。ただし、元のクレジットカード取引手数料は返金時に返還されません)
出典:Shopify 公式ヘルプ(英語版)
これが意味すること
1万円の商品が返品になったら、返す1万円に加えて、その取引で発生した決済手数料も戻ってきません。売上はゼロになるのに、コストだけが残ります。
1件なら数百円です。ただ、返品率が上がると効いてきます。月に10件返品があれば、それだけで数千円が消えていく計算になります。
そして、ここに返送の送料と、再梱包の手間が加わります。返品は「売上が立たなかった」だけでは終わりません。
だから、この記事の結論は返金の手順そのものより手前にあります。返品を減らすほうが、返金を上手にやるより効きます。商品説明で書いておくべきことは、別の記事にまとめています。
例外も1つ見つかりました
STORESのキャリア決済については、公式ヘルプに次の記載がありました。管理画面上のキャンセル操作であれば、返金処理後に購入者負担となるキャリア決済手数料300円も返金される、というものです。
ただしこれは購入者が負担している手数料の話で、事業者側の決済手数料とは別です。決済方法によって扱いが違う例として挙げておきます。
返金の操作は、カートで大きく違う
次に、実際の操作です。ここは各カートで差が大きく、「全額しか返せない」カートもありました。
複数の商品を1回の注文で買われて、そのうち1点だけ返品になる。この場面は普通に起きます。ところが一部返金ができないカートだと、そこで手が止まります。
それから、返金できる期限が決まっているカートもありました。返品の連絡が来てから調べると、間に合わないことがあります。公式ヘルプで確認できた範囲を並べます。
Shopify
管理画面の注文ページから、全額返金も一部返金もできると書かれています
返金の期限についての記載は見つけられませんでした
STORES
クレジットカードの返金可能期間は「オーダー月の翌月20日まで」
ダッシュボードでは全額のみ対応で、一部返金はシステム上できません。金額を変えたい場合は「銀行振込などの方法で購入者様と直接やり取り」が必要とされています
BASE
手順が4段階で案内されています。購入者へ連絡して返金額と方法を確認し、注文ステータスを「発送済み」にして、振込申請をしてから返金する、という流れです
統一的な返金期限の記載は見つけられませんでした
カラーミーショップ
受注一覧でのキャンセルに加えて、決済代行会社側でのキャンセルも必要な2段階の操作です
決済代行会社の定めた取消・金額変更の期限がある、との案内があります
期限があるカートに注意する
STORESの「オーダー月の翌月20日まで」は、実務で効いてくる制約です。
たとえば月初に注文が入り、返品の連絡が来たのが翌月の下旬だった場合。期限を過ぎていると、管理画面からは返せません。 銀行振込で直接返すことになります。
そして公式ヘルプには、期限を過ぎた場合について「該当オーダーには決済手数料が発生し、売上は通常通り入金されます」という記載もありました。手数料がかかったうえで、手で返す作業が発生します。
カード明細への反映は、こちらでは分からない
返金したのに反映されない、という問い合わせは来ます。ここについてSTORESの公式ヘルプはこう書いています。
マイナス処理の情報が利用明細へ反映するタイミングは、ご利用のクレジットカード会社によって異なりますので、購入者様にてカード会社にご確認いただくようご案内ください
出典:STORES 公式ヘルプ
反映の時期は、ショップ側では決められません。 返金処理が終わった時点でその旨を伝え、反映時期はカード会社によると案内するのが、事実に沿った対応になります。
決済方法によって、戻し方が変わる
クレジットカード以外の決済は、扱いが変わります。カードのように自動で戻せないものがあるからです。
カード決済は、カード会社のシステムを通じて取り消しができます。ところがコンビニ払いや銀行振込は、いったん入金されると同じようには戻せません。現金が動いてしまっているからです。
まず、支払い前なら自動でキャンセルされる仕組みがあります。ここは各社で日数が違いました。
BASE(支払い前の自動キャンセル)
コンビニ払いは注文日より5日後、銀行振込は注文日より5営業日後に期限が来て、自動キャンセルになります
STORES(支払い前の自動キャンセル)
コンビニ決済・銀行振込とも支払い期限は3日間。経過すると自動キャンセルになり、在庫も自動で戻ります
入金後は、手で返すことになる
問題は、入金が済んでからです。
STORESの公式ヘルプには、コンビニ決済・銀行振込について「ダッシュボードからキャンセルや返金を行うことはできません」とあります。銀行振込などで直接返すことになります。
カラーミーショップも、銀行振込は「オーナー様から直接ご返金をする必要があります」とされています。コンビニ決済については、より強い記載がありました。
お支払い前、お支払い後どちらも決済をキャンセルできません(中略)すでに購入者様がお支払を完了されている場合は、購入者様とご相談の上、返金される等の対応を行ってください
出典:カラーミーショップ 公式ヘルプ
一方で、同じカラーミーショップでもAmazon PayとPayPayは扱いが違います。入金状態が「入金済」の状態で受注キャンセルまたは削除を行うと、請求金額を購入者へ全額返金する処理が自動で行われるとされています。
ここから分かること
返金の手間は、決済方法ごとにまったく違います。 同じカートの中でも違う。
だから、どの決済方法を入れるかを決めるときに、返金の手間も見ておく価値があります。手で銀行振込をするとなると、購入者の口座情報を聞くところから始まります。個人情報を新たに預かることにもなります。
返品が出やすい商品を扱うなら、自動で戻せる決済方法を中心にする。これは選択肢の1つです。
キャンセルと返品は、別の処理
同じ「注文を取り消す」でも、発送前と受け取り後では処理が変わります。ここを分けておかないと、手順が決まりません。
BASEの公式ヘルプは、支払い状況と発送状況の組み合わせで整理していました。分かりやすい区分なので、そのまま紹介します。
支払い前・発送前
入金期限が経過すれば自動キャンセル。何もしなくて済みます
支払い済み・発送前
ショップ側でキャンセルできるかどうかは、決済方法と注文状況によって変わります
支払い済み・発送済み
返品・交換・返金の可否はショップ次第。ここが自分で決めておくところです
STORESも、オーダーステータス(入金待ち・未発送・完了)によってダッシュボードでの対応可否が変わる構造でした。
なお、カラーミーショップについては、受け取り後の「返品」を明確に区別した専用のヘルプページを見つけられませんでした。キャンセルの手順は案内されていますが、返品は別だという前提で確認が要ります。
返送の送料をどう扱うか
返品を受けると決めたら、次は送料です。誰が負担するかで、手続きが変わります。
法律上の原則は、特定商取引法第15条の3第2項に書かれています。
申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、購入者の負担とする。
出典:特定商取引に関する法律 第15条の3第2項(e-Gov法令検索・強調は筆者)
ただし、これは返品特約が無い場合の話です。自分の判断でショップ負担にすることもできます。 商品説明と違っていた場合など、こちら側に原因があるときは負担するのが自然です。
ショップ負担にするときの方法
ショップが送料を持つ場合、着払いが使えます。日本郵便の公式ページには、着払いについて「通信販売の返品等に活用できます」という案内がありました。荷物の受取人が運賃・料金・手数料を負担する方式です。
ゆうパック等の着払いは手数料が無料とされています。ただし注意書きもあって、あらかじめ受取人に運賃・料金と手数料を支払うことの承諾を得てくださいとされています。
つまり、勝手に着払いで送られてくることを防ぐ仕組みになっています。逆に言えば、ショップ側から「着払いで送ってください」と伝えてから返してもらう形になります。
なお、ヤマト運輸については着払い伝票の入手方法(営業所・取扱店で入手できること、一部のサービスが非対応であること)は確認できましたが、手数料の額と、事業者が返送用の伝票をあらかじめ購入者へ送る方法についての案内は見つけられませんでした。
いつまでに返金するか、法律は決めていない
返品を受けると決めたあと、いつまでに返せばいいのか。ここに法律上の期限があるのかを、条文で確かめました。
結論から書くと、特定商取引法に代金返還の期限を定めた条文はありませんでした。 第15条の3は、返品ができる期間(引渡日から8日)と、返送費用の負担を定めているだけです。
返品できる期間についての条文はあるのに、返す側の期限は書かれていない。ここは意外なところでした。
ただし「不当な遅延」は禁止されている
期限の定めが無いからといって、いつまでも返さなくていいわけではありません。別の条文で、遅らせること自体が問題にされています。
第14条第1項第1号に、主務大臣による指示(行政処分)の対象となる行為が挙げられています。
通信販売に係る売買契約(中略)の解除によつて生ずる債務の全部又は一部の履行を拒否し、又は不当に遅延させること
出典:特定商取引に関する法律 第14条第1項第1号(強調は筆者)
具体的な日数は書かれていません。「不当に遅延させること」の禁止だけです。
だから自分で決めておく
法律が日数を決めていないということは、自分で基準を作れるということでもあります。そして、作っておいたほうが揉めません。
返品特約に返金の時期を書いておく。たとえば「商品到着確認後◯営業日以内に返金します」という形です。特約に書いておけば、その内容に従う構造になります。
基準が無いまま対応すると、こちらは急いでいるつもりでも相手には遅く見えます。日数を先に示しておくのが、いちばん簡単な予防策です。
この記事で確認した仕様のまとめ
返金は、判断より先に仕組みを知っておく領域でした。カートによって操作が違い、決済方法によって戻し方が違い、しかも手数料は戻りません。
下にまとめたのは、各カートの公式ヘルプとe-Gov法令検索の条文を確認できた範囲です。自分のカートの行が空いているなら、そこは確かめるべき項目です。
公式の情報は更新されます。このページを読んだ時点の内容は、必ず元のページで確かめ直してください。
決済手数料の返還
BASE:「決済は発生しているため、BASE側で徴収している手数料などの返金はおこなっておりません」
Shopify(英語版):元のクレジットカード取引手数料は返金時に返還されない
カラーミーショップ:返還の有無についての記載は見つけられませんでした
返金の操作
Shopify:全額・一部とも可能
STORES:ダッシュボードは全額のみ。期限は「オーダー月の翌月20日まで」
カラーミーショップ:受注側と決済代行側の2段階操作
支払い前の自動キャンセル
BASE:コンビニは注文日より5日後、銀行振込は5営業日後
STORES:ともに3日間。経過すると在庫も自動で戻ります
入金後の返金
コンビニ・銀行振込は、多くの場合ダッシュボードから返せず手で対応します
カラーミーショップのAmazon Pay・PayPayは、受注キャンセルで全額返金が自動で行われます
法律の定め
返送費用は原則として購入者の負担(第15条の3第2項)
代金返還の期限を定めた条文はありません。 ただし「不当に遅延させること」は指示の対象(第14条第1項第1号)
※各社の公式ヘルプとe-Gov法令検索の条文を確認したものです。仕様は変わります。なお、ヤマト運輸の着払い手数料の額、事業者が返送用伝票を事前に送る方法、カラーミーショップの受取後の返品に関する専用ヘルプ、Shopifyの日本語版での同等記載については、到達できなかったため扱っていません。
よくある質問
返金したら決済手数料は戻ってきますか
確認できた範囲では、戻りません。BASEの公式ヘルプは「決済は発生しているため、BASE側で徴収している手数料などの返金はおこなっておりません」としています。Shopifyの英語版ヘルプにも、元のクレジットカード取引手数料は返金時に返還されないという記載があります。カラーミーショップについては返還の有無の記載を見つけられませんでした。つまり、返品が増えると売上はゼロなのに手数料だけが積み上がります。
一部だけ返金したいのですが
カートによります。Shopifyは管理画面から全額も一部も返金できると書かれています。一方STORESは、ダッシュボードでは全額のみ対応で、金額の一部変更はシステム上できません。この場合は銀行振込などで購入者と直接やり取りすることになります。複数商品のうち1点だけ返品、という場面は起きるので、自分のカートでできるかを先に確かめておいてください。
返金したのに反映されない、と言われました
クレジットカードの場合、反映の時期はショップ側では決められません。STORESの公式ヘルプは「マイナス処理の情報が利用明細へ反映するタイミングは、ご利用のクレジットカード会社によって異なりますので、購入者様にてカード会社にご確認いただくようご案内ください」としています。返金処理が完了したことを伝えたうえで、反映時期はカード会社によると案内するのが事実に沿った対応です。
コンビニ払いで入金済みの人には、どう返しますか
多くの場合、管理画面からは返せません。STORESは「ダッシュボードからキャンセルや返金を行うことはできません」、カラーミーショップのコンビニ決済は「お支払い前、お支払い後どちらも決済をキャンセルできません」としています。購入者と相談のうえ、銀行振込などで直接返すことになります。口座情報を新たに預かることになるので、その扱いも決めておいてください。
返金までの日数に決まりはありますか
特定商取引法に、代金返還の期限を定めた条文はありません。ただし第14条第1項第1号で、契約の解除によって生ずる債務の履行を拒否したり「不当に遅延させること」が指示の対象とされています。日数が決まっていないぶん、自分で返品特約に返金の時期を書いておくほうが揉めません。基準が無いと、こちらは急いでいるつもりでも相手には遅く見えます。
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