
注文のメールが届かない、と言われることがあります。送ったはずなのに見ていない。迷惑メールのフォルダに入っていた。
この話には、自分でできることと、できないことがはっきり分かれています。カートを使っている場合は、できないことのほうが多いからです。
この記事では、Googleが公開している送信者向けの要件と、各カートの公式ヘルプを確かめたうえで、自分の店で手を動かせる範囲を整理します。
カートの自動メールは、カートのドメインから出ている
まず、前提から確かめます。注文が入ったときに購入者へ届くメールは、どこから送られているのか。
各カートの公式ヘルプに、差出人のアドレスが書かれていました。自分のショップのアドレスではありません。
ここを知っているかどうかで、届かないと言われたときの動き方が変わります。自分のメール設定を疑っても、何も出てこないからです。
まず引きます。
BASE
「購入時に購入完了(注文控え)メールなど、自動送信されるメールの送信元アドレスは、【noreply[at]thebase.in】です」
STORES
「購入完了メールや発送完了メールはhello@stores.jp からメールが送られます」
出典:BASE 公式ヘルプ(2026年9月25日更新)/STORES 公式ヘルプ(2026年8月20日更新)。いずれも
つまり、認証の設定はカート側の話になります
自分のショップのドメインではなく、カートのドメインから出ています。ということは、送信ドメイン認証の設定も、カートの会社がやっていることになります。
ここは自分では触れません。届かないと言われても、送信側の設定を直すという対処が取れないわけです。
ただ、そのぶん見る場所がはっきりします。自分でできるのは、受信側の設定を案内することと、あとで書くカラーミーショップのように送信元を変えられる場合の設定です。
2024年2月から、Googleの要件が変わった
背景も知っておくと、話が通りやすくなります。Gmailに送るメールについて、Googleが送信者向けの要件を公開しています。
2024年2月1日以降、Gmailに送るすべての送信者が満たすべき条件が示されています。ここが厳しくなったので、各カートも対応を進めてきました。
店側が直接やることではありませんが、何が求められているかを知っておくと、あとの話が分かりやすくなります。すべての送信者に適用される要件として、次のものが挙げられていました。
すべての送信者に適用される要件(2024年2月1日以降)
「送信元ドメインに SPF または DKIM メール認証を設定します」
「送信元のドメインまたは IP に、有効なフォワードおよびリバース DNS レコード(PTR レコードとも呼ばれます)があることを確認します」
「メールの送信に TLS 接続を使用します」
「Postmaster Tools で報告される迷惑メール率を 0.3% 未満に維持します」
「Internet Message Format 標準(RFC 5322)に準拠する形式でメールを作成します」
出典:Gmail ヘルプ「メール送信者のガイドライン」(日本語)
SPFとDKIMは、なりすましを防ぐ仕組み
用語が出てきたので、同じページの説明を引いておきます。
SPFについては「スパマーが未認証のメールをお客様のドメインからのものであると装って送信することを防ぎます」とあります。
DKIMについては「受信サーバーは DKIM を使用して、実際にメールを送信したのがドメイン所有者であることを確認します」。
そしてDMARCは「メールが SPF または DKIM の認証に合格しなかった場合、DMARC はそのようなメールの処理方法を受信サーバーに指示します」と説明されていました。3つはそれぞれ役割が違います。
1日5,000件を超えると、要件が増える
件数によって、求められるものが変わります。ここは自分の店がどちらに当たるかを知っておく部分です。
1日あたり5,000件を超える送信者には、追加の要件が示されていました。件数が増えるほど、求められる水準が上がる作りになっています。
自分の店が当てはまるかどうかは、1日に送るメールの数を数えれば分かります。
1日あたり5,000件を超える場合の追加要件
「ドメインに SPF および DKIM メール認証を設定します」(5,000件未満は「SPF または DKIM」)
「送信元ドメインに DMARC メール認証を設定します」
「ダイレクト メールの場合、送信者の From: ヘッダー内のドメインは、SPF ドメインまたは DKIM ドメインと一致している必要があります」
「マーケティング目的のメールと配信登録されたメールは、ワンクリックで登録解除できるようにし、メッセージ本文に登録解除のリンクをわかりやすく表示する必要があります」
出典:Gmail ヘルプ「メール送信者のガイドライン」(日本語)
小さな店なら、5,000件には届きません
注文のたびに送るメールだけなら、1日5,000件には遠く及びません。この追加要件に当たるのは、メールマガジンをまとめて配信している場合です。
ただ、メールマガジンを始めるなら話が変わります。配信の登録者が5,000人を超えた時点で、一斉配信すると要件に入ります。
ワンクリックの登録解除については、同じページに具体的な指定がありました。送信メールに「List-Unsubscribe-Post: List-Unsubscribe=One-Click」と「List-Unsubscribe:」の両方のヘッダーを含める、というものです。配信サービスを使うなら、この設定ができるかを確かめてください。
迷惑メール率の数字が2つ書いてある
同じページの中に、迷惑メール率の数字が2か所ありました。値が違うので、両方を引きます。
1つ目は要件として挙げられているもの。「Postmaster Tools で報告される迷惑メール率を 0.3% 未満に維持します」。
迷惑メール率というのは、送ったメールのうち、受け取った人が迷惑メールとして報告した割合のことです。
2つ目は、Postmaster Toolsの説明の中にあるものです。
Postmaster Tools で報告される迷惑メール率を 0.10% 未満に維持し、迷惑メール率が決して 0.30% 以上にならないようにします。
出典:Gmail ヘルプ「メール送信者のガイドライン」(日本語)
0.3%は、1,000通に3通です
数字だけ見ると小さく感じますが、1,000通送って3通が迷惑メールに分類されると、この線に当たります。
続けて「迷惑メール率を低く維持すれば、時折急上昇してもメールがシステムによって迷惑メールとしてマークされる可能性が低くなります」という説明もありました。
なお、この2つの数値の関係を明確に定義した一文は、同じページの中に見つけられませんでした。0.10%のほうが、より低く保つ目安として書かれているという読み方になりますが、断定はしません。
独自ドメインを送信元にできるカートがある
ここから、自分で手を動かせる部分です。カートによっては、送信元を自分のドメインに変えられます。
カラーミーショップの公式ヘルプに、設定の説明がありました。独自ドメインを持っている場合に選べるようになっています。
送信元が自分のドメインになると、受け取る側から見て差出人がはっきりします。店名と同じドメインから届くからです。
ショップに独自ドメインを設定中の場合、利用できるメールアドレスとして「”@shop-pro.jp”のメールアドレス」、「”@独自ドメイン”のメールアドレス」が表示されます。
出典:カラーミーショップ 公式ヘルプ(2026年9月21日更新)
そして、そのときに必要な設定も案内されています。SPF、DMARC、DKIMのレコードを、ドメイン側に書く手順です。
設定するレコードも公開されています
同じ会社の別のヘルプページに、具体的な値が書かれていました。SPFレコードなら「v=spf1 include:spf001.shop-pro.jp ~all」、DMARCレコードなら「v=DMARC1; p=none; pct=100; adkim=r; aspf=r;」といった形です。
DKIMについては、CNAMEレコードを設定する形が案内されていました。ドメインを管理している側で、この3つを書くことになります。
一方、BASEとSTORESについては、送信元を独自ドメインに変更できるかを明記した記事を見つけられませんでした。確認できた範囲では、それぞれ固定のアドレスから送られると読める記述だけです。
設定しないと、勝手に差出人が変わることがある
ここは知らないと驚く部分です。カラーミーショップの公式ヘルプに、注意書きがありました。
送信元を独自ドメインにしたつもりでも、設定が足りないと元に戻されることがあります。
SPFやDMARCを設定していない場合について、こう書かれています。
SPF/DMARC未設定の場合、2024年5月以降自動変更されている可能性があります。
出典:カラーミーショップ 公式ヘルプ「メールが届かない場合の原因と対策」(2026年9月22日更新)
独自ドメインのアドレスを設定していたつもりでも、認証の設定がないと、カートのドメインのアドレスに戻されている可能性があります。
Googleの要件に合わせた改修でした
同じ会社の別のページに、背景が書かれていました。購入者へ送るメールの「エンベロープFromアドレス」を、ショップオーナーが設定した管理者メールアドレスに変更する改修を行った、というものです。
理由として「『エンベロープFromアドレス』と『ヘッダFromアドレス』を同一にすることで、Gmailのガイドラインの要件を満たし」と説明されていました。
つまり、さきほどのGoogleの要件に合わせた変更です。カート側が対応した結果、店側にも設定が必要になったという流れになります。自分のショップの管理画面で、いま何が差出人になっているかを一度見てください。
届かないと言われたときに見る順番
ここから実務です。届かないと連絡が来たときに、どこから見るかを決めておきます。
各カートの公式ヘルプが挙げている原因を並べると、共通するものがありました。
大事なのは順番です。可能性の高いものから見ていけば、たいていは途中で解決します。逆に、いきなり設定を疑うと時間がかかります。
順番に見ていきます。上の2つで解決することが多いはずです。
1. 迷惑メールのフォルダを見てもらう
3社とも最初に挙げていました。いちばん多い原因です
2. 受信許可の設定を案内する
BASEなら「noreply@thebase.in」「thebase.in」、STORESなら「hello@stores.jp」の受信を許可してもらいます
3. 携帯のメールアドレスかどうかを確かめる
STORESもBASEも、キャリアの迷惑メールフィルタを原因として挙げていました
4. アドレスそのものを疑う
STORESは「送信エラーとなるメールアドレスを登録している」「アカウント部分に規則に反した文字列」を挙げています。打ち間違いもここに入ります
店側の設定を疑うのは、最後です
順番が大事です。1件だけ届かないなら、ほぼ受信側の問題になります。全員に届いていないときだけ、店側の設定を疑います。
見分け方は簡単で、自分のアドレスにテスト注文を入れてみることです。自分には届くのに特定の人に届かないなら、その人の受信環境の話になります。
カラーミーショップの場合は、管理者メールアドレスが意図せず変わっていないかも見てください。さきほどの自動変更の話が当てはまる可能性があります。
自分のショップでできること
できることを整理します。カートの送信設定は触れませんが、手前でできることはいくつかありました。
順番に並べます。どれも1回やれば済むものです。
共通しているのは、届かなかったときに対応するのではなく、届かない場合に備えて先に手を打っておく、という考え方になります。
問い合わせが来てから調べると、その1件ごとに時間がかかります。先に書いておけば、同じ説明を繰り返さずに済みます。
購入前に案内を出す
注文の画面や商品ページに、どのアドレスからメールが届くかを書いておきます。先に知っていれば、迷惑メールを探してもらえます
受信許可の手順をまとめておく
よくある質問のページに書いておけば、問い合わせのたびに書かずに済みます
独自ドメインを使えるカートなら、認証を設定する
SPF・DKIM・DMARCのレコードを書きます。設定しないと差出人が戻される場合があります
自分の受信も確かめておきます
もう1つ、忘れやすいのが自分側です。注文の通知が自分に届かないと、発送が遅れます。
カラーミーショップの公式ヘルプには、ショップオーナー向けの原因として、英語メールの受信拒否設定、独自ドメインの有効期限やネームサーバー、メール転送設定などが挙げられていました。
ドメインの有効期限が切れると、メールも止まります。 更新の設定を自動にしているかどうか、一度確かめておいてください。
この記事で確認した公式の記述まとめ
Googleのガイドラインと各カートの公式ヘルプで確かめた内容を並べ直します。自分の店に当てはまる行だけを見れば足ります。
それから、確かめられなかったことも書きます。送信元を変えられるかどうかは、カートによって記載の有無が分かれていました。
要件も仕様も変わります。メールが届かない問題が起きたときは、まず自分のカートの公式ヘルプで最新の案内を見てください。
Googleの要件(2024年2月1日以降)
すべての送信者:SPF または DKIM、有効なDNSレコード、TLS、迷惑メール率0.3%未満、RFC 5322準拠
1日5,000件超:SPF および DKIM、DMARC、Fromヘッダーの一致、ワンクリックの登録解除
各カートの差出人
BASE:noreply@thebase.in
STORES:hello@stores.jp
カラーミーショップ:独自ドメインのアドレスを設定できる(SPF等の設定が必要)
注意
カラーミーショップ:「SPF/DMARC未設定の場合、2024年5月以降自動変更されている可能性があります」
確認できなかったこと
BASEとSTORESで送信元を独自ドメインに変更できるかどうか(明記した記事を見つけられませんでした)
迷惑メール率の0.3%と0.10%の関係を定義した一文(両方が同じページに並記されています)
※Gmail ヘルプと各カートの公式ヘルプの日本語ページを確認したものです。仕様と要件は変わります。
よくある質問
注文のメールが届かないと言われました。何から見ますか
まず迷惑メールのフォルダを見てもらってください。3社の公式ヘルプとも、これを最初の原因として挙げています。次に、差出人アドレスの受信許可を案内します。BASEなら「noreply@thebase.in」、STORESなら「hello@stores.jp」です。それから、携帯のメールアドレスかどうかを確かめます。キャリアの迷惑メールフィルタも原因として挙げられていました。店側の設定を疑うのは最後です。1件だけ届かないなら、ほぼ受信側の問題になります。
SPFやDKIMは自分で設定するのですか
カートによります。BASEとSTORESは、自動送信のメールがそれぞれのドメインから送られると公式ヘルプに書かれているので、認証の設定はカートの会社がやっていることになります。一方カラーミーショップは、独自ドメインのアドレスを送信元にできると案内されていて、その場合はSPF・DMARC・DKIMのレコードをドメイン側で設定します。設定する値も公式ヘルプに公開されていました。自分のカートがどちらなのかを、まず確かめてください。
1日5,000件という条件は関係ありますか
注文のたびに送るメールだけなら、まず届きません。この追加要件に当たるのは、メールマガジンをまとめて配信している場合です。ただし、配信の登録者が5,000人を超えた時点で一斉配信すると当てはまります。その場合は、SPFとDKIMの両方、DMARC、Fromヘッダーの一致、ワンクリックの登録解除が求められます。メールマガジンを始めるときに、配信サービスがこれらに対応しているかを確かめてください。
差出人のアドレスが勝手に変わっていました
カラーミーショップの公式ヘルプに「SPF/DMARC未設定の場合、2024年5月以降自動変更されている可能性があります」という記載があります。独自ドメインのアドレスを設定していても、認証の設定がないとカートのドメインのアドレスに戻されている可能性があるということです。背景として、購入者へ送るメールのエンベロープFromアドレスとヘッダFromアドレスを同一にすることでGmailのガイドラインの要件を満たす、という改修が説明されていました。管理画面で現在の差出人を確かめてください。
自分にも注文の通知が届きません
こちらは自分で直せる可能性が高い部分です。カラーミーショップの公式ヘルプには、ショップオーナー向けの原因として、管理画面の警告、管理者メールアドレスの意図しない変更、英語メールの受信拒否設定、独自ドメインの有効期限やネームサーバー、迷惑メールフォルダ、メール転送設定、メールソフトの設定が挙げられていました。とくにドメインの有効期限が切れるとメールも止まります。更新が自動になっているかを一度確かめてください。
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