
ネットショップをやっていると、12月の終わりに注文が入ります。発送は年明け。入金は、さらにそのあと。
この売上は、どちらの年の分になるのか。カートの管理画面を見ても答えは書いていません。
国税庁が公開している説明を読むと、判定の基準がはっきり書かれていました。この記事では、その記述をそのまま引きます。個別の判断は税務署か税理士に確認してください。
売上は、お金が入った日ではありません
まず、いちばん大きな誤解から確かめます。売上をいつ計上するかという話です。
入金された日だと思っている人が多い部分ですが、国税庁のページには違うことが書かれていました。お金を受け取ったかどうかは関係がない、という説明です。
そのまま引きます。読むときは、受け取ったかどうかは関係がない、という部分に注目してください。
ここが、帳簿をつけるときの出発点になります。
その年において収入すべき金額は、年末までに現実に金銭等を受領していなくとも、「収入すべき権利の確定した金額」になります。したがって、実際に金銭等を受領したか否か、また、代金を請求したか否かは関係がありません。
出典:国税庁 タックスアンサー No.2200 収入金額とその計算[令和8年4月1日現在法令等]
同じページに、具体的な例もありました
「例えば、その年の12月20日に商品を売って、その代金は年を越して翌年1月10日に受け取ったような場合には、商品を売ったその年の収入になるということです」と書かれています。
つまり、12月に売れたものは、入金が1月でも12月の年の売上になります。
ネットショップの場合、入金は決済代行の会社を通るので、実際に手元に届くのは翌月以降です。それでも、売上の計上はお金の動きとは別に判定することになります。
商品の販売は「その引渡しがあった日」
では、何をもって判定するのか。ここからが、この記事でいちばん確かめたかった部分です。
所得税基本通達という文書に、収入をどの日で計上するかが所得の種類ごとに書かれていました。商品を仕入れて売る商売は、棚卸資産の販売に当たります。
そのうちの1つ目を引きます。棚卸資産というのは、売るために仕入れた商品のことです。
短い一文ですが、基準になる日がここで決まります。
(1)棚卸資産の販売(試用販売及び委託販売を除く。)による収入金額については、その引渡しがあった日
出典:国税庁 所得税基本通達 36-8(事業所得の総収入金額の収入すべき時期)
「注文があった日」ではありませんでした
基準になるのは、注文の日でも、入金の日でもなく、引渡しの日です。
ネットショップに置き換えると、商品を送った日のあたりということになります。あたり、と書いたのは、次に説明するとおり日の決め方に幅があるからです。
なお、同じ通達には委託販売や試用販売の場合の日も別に書かれていました。ここで引いたのは、自分の店で仕入れたものを売る場合の行です。
引渡しの日は、いくつかの候補から選べます
引渡しの日といっても、出した日と着いた日は違います。そこも定められていました。
続きの条文に、候補が並んでいます。1つに決められているのではなく、合理的と認められる日のうちから選ぶ形でした。
ただし、条件がついています。選べるかわりに、毎年同じ基準を使うことが求められる、という条件です。
少し長い文なので、後半に注目してください。
棚卸資産の引渡しの日がいつであるかについては、例えば、出荷した日、船積みをした日、相手方に着荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日、検針等により販売数量を確認した日等当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち、その者が継続して収入金額に計上することとしている日によるものとする。
出典:国税庁 所得税基本通達 36-8の2(棚卸資産の引渡しの日の判定)
大事なのは「継続して」の部分です
出荷した日を使ってもいいし、相手に着いた日を使ってもいい。ただし、年によって都合よく変えることはできません。
ネットショップなら、出荷した日がいちばん分かりやすいと思います。発送の処理をした日付が、カートの管理画面に残っているからです。
どの日を使うかを決めたら、それを続けます。決めた基準を書き留めておくと、翌年以降も迷いません。
12月の注文が1月に発送になった場合
ここまでの記述を、年末の注文に当てはめます。いちばん迷う場面です。
12月28日に注文が入って、年末年始の休みが明けた1月6日に発送した。この売上はどちらの年になるか。
引渡しの日で判定するという原則からすると、発送が1月なら1月の年の収入になると読めます。注文が入った日ではなく、送った日で分かれるということです。
ここは正直に書きます
国税庁のページで「注文日」という言葉を使って、年をまたぐこの場面を直接説明した記述は見つけられませんでした。上の読み方は、引渡し基準という原則から導いたものです。実際の処理は、税務署か税理士に確認してください
逆のパターンもあります
1月に注文が入ったものは、当然その年の分です。ただ、12月中に発送を終えていて、入金だけが1月になるものは12月の年に入ります。
年末は、注文の日と発送の日がずれやすい時期です。 12月分の注文の一覧を出すときは、発送の日付でも確かめてください。
なお、年末年始の発送がいつまでかは、買う側にとっても大事な情報です。ショップの案内に締め切りを書いておくと、問い合わせが減ります。
入金が翌月末でも、売上は当年に入ります
ネットショップで分かりにくいのが、お金が届くまでの時間です。カートによって、入金の時期は決まっています。
たとえばSTORESの公式ヘルプには、売上は月末締め・翌月末払いで振り込まれると書かれていました。12月に売れたぶんが手元に届くのは、1月の末です。
それでも、売上を計上する年は変わりません。入金の時期と、売上の年は別に決まるからです。
年末の整理でやること
12月に発送した注文の一覧を出す(入金の有無は関係ありません)
まだ入金されていないぶんも、その年の収入に入れる
翌年1月に入ってきた振込と、帳簿の売上が一致しないことを確かめておく
現金の出入りで計算する特例もあります
ここまでは原則の話です。小規模な事業者には、別の方法が用意されていました。
No.2200には「青色申告者や雑所得を生ずべき業務を行う者で、一定の条件に当てはまる小規模事業者等については、収入や費用の計上時期を現金の出し入れを基準とする、いわゆる『現金主義』によることを選択することができます」とあります。青色申告者の場合は届出書が必要です。
ただし、条件と引き換えがあります。青色申告特別控除のページには「現金主義による所得計算の特例を選択している方は、55万円の青色申告特別控除を受けることはできません」と書かれていました。簡単になるかわりに、控除が小さくなります。
経費も「払った日」ではありません
売上と同じ考え方が、経費にもありました。支払った日ではなく、債務が確定した日で判定します。
その年に払っていても、その年に債務が確定していなければ経費になりません。逆に、まだ払っていなくても確定していれば経費になります。
確定しているかどうかは、3つの条件で判定すると書かれていました。3つとも満たしている必要があります。
「その年において債務が確定している」の3要件
(1)その年の12月31日までに債務が成立していること。
(2)その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3)その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること。
出典:国税庁 タックスアンサー No.2210 必要経費の知識[令和8年4月1日現在法令等]
12月に届いた請求書は、その年の経費です
12月に使った広告費の請求が1月に来て、支払いも1月。この場合、3つの要件を12月中に満たしているなら、12月の年の経費になります。
年末にまとめて備品を買えば節税になる、という話を聞くことがあります。ただし、その年に使う状態になっているかどうかが関係してきます。 次に書く減価償却の話とも重なる部分です。
売上も経費も、お金が動いた日とは別の基準で決まる。ここが、はじめて申告するときにいちばん戸惑う部分だと思います。
家で仕事をしている場合の費用
自宅でネットショップをやっている人は多いと思います。その場合の家賃や電気代の扱いも、同じページに書かれていました。
家事関連費という呼び方で説明されています。仕事と生活の両方にかかわる費用のことです。
全額が経費になるわけではありません。仕事に使った部分だけを、分けて計算することになります。
その条件が、はっきり書かれていました。
この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。
出典:国税庁 タックスアンサー No.2210 必要経費の知識
「明らかに区分できる」が条件です
例として挙げられていたのは、店舗併用住宅にかかる費用です。租税公課、家賃、水道光熱費などが並んでいました。
区分できる金額に限られる、とされているので、どう分けたかを説明できる状態にしておく必要があります。 部屋の面積で分ける、使っている時間で分ける。根拠になる記録を残しておいてください。
なお同じページには、生計を一にする配偶者や親族に払う家賃などは必要経費にならない、とも書かれていました。家族に払う形にしても経費にはなりません。
10万円・20万円・40万円という線
備品を買ったときの扱いも見ておきます。金額によって、その年の経費にできるかどうかが変わりました。
パソコンやカメラ、撮影の機材。ネットショップを始めるときに買うものは、この線をまたぐことがあります。
国税庁のページから、3つの区分を引きます。金額の線をまたぐかどうかで、その年に落とせる額が変わります。
買う前に見ておくと、判断が変わることもある部分です。
取得価額による区分
10万円未満(または使用可能期間が1年未満):その年分の必要経費にします
10万円以上20万円未満:一定の要件のもとで、合計額の3分の1ずつを3年間で必要経費に算入できます
10万円以上40万円未満:一定の要件を満たす青色申告者が令和11年3月31日までに取得した場合、年間300万円までその年分の必要経費に算入できる特例があります
出典:国税庁 タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし[令和8年4月1日現在法令等]
40万円の部分には、日付の条件がついています
3つ目の特例には、注記がありました。「令和8年3月31日までに取得した場合の取得価額は10万円以上30万円未満」と書かれています。
つまり、取得した時期によって線が30万円か40万円かに分かれます。 いつ買ったかで扱いが変わる項目です。
もう1つ、消費税の扱いについても書かれていました。「取得価額の判定に際し、消費税の額を含めるかどうかは納税者の経理方式によります」。税込で記帳しているなら税込の金額で、税抜なら税抜の金額で判定します。免税事業者は税込です。
在庫は、売上原価の計算に入ります
仕入れた商品が年末に残っている場合の扱いも見ておきます。ネットショップでは、ここが大きく効いてくる部分です。
仕入れた金額がそのまま経費になるのではなく、売れたぶんだけが原価になります。残った在庫は、翌年に持ち越されます。
計算の式は、国税庁の手引きに書かれていました。年初と年末の在庫を使う、引き算の形です。
売上原価の計算
売上原価=年初(期首)の棚卸高+年間の仕入高-年末(期末)の棚卸高
出典:国税庁「令和7年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」
評価の方法は、届け出ていなければ決まっています
年末の在庫をいくらで評価するか。方法は届出で選べますが、出していない場合の扱いも決まっていました。
国税庁の手続きのページには「届出により選択をしなかった場合は、最終仕入原価法が適用されます」と書かれています。何もしていなければ、この方法になります。
年末に一番近い時期に仕入れた単価に、年末の数量を掛ける方法です。年末の棚卸しをしておかないと、この計算ができません。12月31日の時点で何がいくつ残っているかを数えておいてください。
期限と、65万円の控除の条件
最後に、申告そのものの話です。期限と、青色申告特別控除の条件を確かめます。
期限は毎年同じ時期ですが、年によって曜日の関係で動くことがあります。原則として書かれている日付を引きます。その年の案内は、国税庁のページで確かめてください。
そして、65万円の控除には条件がついていました。記帳の方法だけでなく、出し方も関係してきます。
両方を並べます。
期限
「申告等の期間 原則として、その年の翌年2月16日から3月15日までです。」
「申告および納付の期限は、原則として、その年の翌年3月15日です。」
65万円の青色申告特別控除(55万円の要件に加えて、次のいずれか)
イ その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること
ロ その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表、損益計算書等を、確定申告書の提出期限までにe-Taxを使用して送信すること
出典:国税庁 タックスアンサー No.2020 確定申告/No.2072 青色申告特別控除[令和8年4月1日現在法令等]
55万円の控除にも要件があります
前提として、55万円の控除を受けるには、事業を営んでいること、正規の簿記の原則により記帳していること、貸借対照表と損益計算書を添付して期限までに提出することが要件とされています。
そのうえで、電子帳簿保存かe-Taxのどちらかを満たすと65万円になります。差は10万円です。
この記事に書いたのは、国税庁が公開している記述をそのまま引いたものです。自分の店の処理をどうするかは、税務署か税理士に確認してください。とくに年をまたぐ売上の扱いは、商品や契約の内容によって判断が変わる部分です。
よくある質問
12月に売れて1月に入金された分は、どちらの年ですか
国税庁のページには「例えば、その年の12月20日に商品を売って、その代金は年を越して翌年1月10日に受け取ったような場合には、商品を売ったその年の収入になるということです」と書かれています。入金の時期は関係しません。ネットショップの場合、決済代行を通るので入金は翌月以降になりますが、売上の計上はお金の動きとは別に判定することになります。
12月に注文が入って1月に発送した場合はどうなりますか
所得税基本通達36-8には「棚卸資産の販売(試用販売及び委託販売を除く。)による収入金額については、その引渡しがあった日」とあります。引渡しの日で判定するという原則からすると、発送が1月なら1月の年の収入になると読めます。ただし、国税庁のページで「注文日」という言葉を使ってこの場面を直接説明した記述は見つけられませんでした。実際の処理は税務署か税理士に確認してください。
出荷した日と届いた日、どちらを使いますか
所得税基本通達36-8の2には、出荷した日、相手方に着荷した日、相手方が検収した日などが候補として挙げられていて、「その引渡しの日として合理的であると認められる日のうち、その者が継続して収入金額に計上することとしている日による」とされています。どれかを選べますが、年によって変えることはできません。ネットショップなら、発送の処理をした日付が管理画面に残るので、出荷した日が使いやすいと思います。
年末に在庫を買っておけば経費になりますか
仕入れた商品については、そうはなりません。国税庁の手引きにある式は「売上原価=年初(期首)の棚卸高+年間の仕入高-年末(期末)の棚卸高」です。年末に残っている在庫は差し引かれるので、売れたぶんだけが原価になります。12月31日時点で何がいくつ残っているかを数えておかないと、この計算ができません。
パソコンを買ったら、その年の経費になりますか
金額によります。国税庁のページには、取得価額が10万円未満のもの(または使用可能期間が1年未満のもの)は、その取得に要した金額の全額をその年分の必要経費とする、とあります。10万円以上の場合は、20万円未満なら3年間で3分の1ずつという方法があり、一定の要件を満たす青色申告者には10万円以上40万円未満を年間300万円まで必要経費にできる特例もあります。ただしこの特例には「令和8年3月31日までに取得した場合の取得価額は10万円以上30万円未満」という注記がついていて、取得した時期で線が変わります。
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