
中古マンションの諸費用は「売買代金の6〜10%」と説明されることが多い費目です。3,000万円なら180万円から300万円。幅が大きすぎて、予算を組む役には立ちません。
実際には、諸費用のかなりの部分は「相場」ではなく法律で決まっています。登録免許税なら、税率は登録免許税法の別表に、軽減は租税特別措置法に書いてあります。仲介手数料の上限は国土交通省の告示です。固定資産税の納税義務者は地方税法が定めています。
そして、そのうちのひとつはそもそも税金ですらありません。引渡し日で日割りする「固定資産税の精算金」です。国税庁は質疑応答事例で、これを「地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受」と明言しています。
この記事では、登録免許税法・租税特別措置法・同施行令・地方税法・国税庁の質疑応答事例だけを根拠に、買主が現金で用意する額の内訳を確定させます。最後に3,000万円の中古マンションで計算します。
結論:諸費用は「相場」ではなく、条文で決まっている部分が大きい
「6〜10%」の中身を分解する
諸費用と呼ばれているものは、性質の違う4つが混ざっています。
| 性質 | 費目 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| ① 税金 | 登録免許税、印紙税、不動産取得税 | 法律に税率が書いてある。計算すれば確定する |
| ② 上限が決まっている報酬 | 仲介手数料 | 国土交通省の告示が上限を定める。下限はない |
| ③ 自由価格 | 司法書士報酬、火災保険料、引越し費用 | 見積もりを取れば事前に確定する |
| ④ 契約上の取り決め | 固定資産税等の精算金、管理費等の日割り | 法律上の義務ではなく、売買契約で決まる |
①と②は、物件が決まった時点で自分で計算できます。③は見積もりを取れば確定します。「幅がある」のは主に④と、③のうち火災保険です。
結論:先に計算できるものを計算しておく
諸費用の予算を立てる手順は次のとおりです。
- 固定資産税評価額を調べる(登録免許税の課税標準になる)
- 登録免許税・印紙税・仲介手数料を計算する(ここまでは条文と告示で確定する)
- 司法書士と火災保険の見積もりを取る
- 固定資産税等の精算金と管理費等の日割りを、引渡し日から逆算する
この順番で進めれば、「だいたい200万円くらい」ではなく、実額が出ます。
登録免許税:税率は法律に、軽減は措置法に書いてある
課税標準は売買代金ではない
登録免許税の課税標準は「不動産の価額」です。国税庁のタックスアンサー7191は、これについてこう注記しています。「課税標準となる『不動産の価額』は、市町村役場で管理している固定資産課税台帳に登録された価格がある場合は、原則その価格です」。
つまり、3,000万円で買っても、税額は3,000万円には掛かりません。固定資産税評価額に掛かります。評価額は売買価格より低いのが通例なので、ここを取り違えると過大に見積もることになります。
固定資産税評価額は、売主が持っている固定資産税の納税通知書に記載されています。仲介会社に依頼すれば、評価証明書を取り寄せてもらえます。
本則の税率
登録免許税法の別表第一が、本則の税率を定めています。中古マンションの購入で関係するのは3つです。
| 登記 | 課税標準 | 本則 | 軽減 |
|---|---|---|---|
| 土地(敷地権)の所有権移転 | 不動産の価額 | 1,000分の20 | 1,000分の15(措法72・令和11年3月31日まで) |
| 建物の所有権移転(売買) | 不動産の価額 | 1,000分の20 | 1,000分の3(措法73・令和9年3月31日まで) |
| 抵当権の設定 | 債権金額 | 1,000分の4 | 1,000分の1(措法75・令和9年3月31日まで) |
注目したいのは建物です。本則1,000分の20が軽減で1,000分の3。6分の1以下になります。抵当権も4分の1です。土地は20分の15なので、比率としては小さい。
軽減の期限が3つとも違う点にも注意してください。土地は令和11年3月31日まで、建物と抵当権は令和9年3月31日までです。
課税標準は1,000円未満切捨て、税額は100円未満切捨て
登録免許税の計算では端数処理があります。課税標準となる不動産の価額は1,000円未満を切り捨て、算出した税額は100円未満を切り捨てます。計算例では切りのよい数字を使っていますが、実際には端数が出ます。
マンションの場合、土地は敷地権として持分で登記されているため、課税標準は敷地全体の評価額に自分の持分割合を掛けた額になります。評価証明書に持分後の額が出ていることも、全体の額が出ていることもあるので、どちらなのかを確認してください。
住宅用家屋証明書。中古マンションで軽減が使える条件
証明書がないと軽減は使えない
建物の移転登記の軽減(1,000分の3)と抵当権設定の軽減(1,000分の1)は、自動では適用されません。市町村長または特別区の区長が発行する証明書、いわゆる住宅用家屋証明書が必要です。
タックスアンサー7191の備考に、決定的な一文がありました。「登記申請に当たって、その家屋の所在する市町村等の証明書を添付する必要があります。なお、登記した後で証明書を提出しても軽減税率の適用を受けられませんので注意してください」。
あとから出しても効きません。登記の前に取ります。実務では司法書士が代行することが多い書類ですが、「軽減を使う前提で見積もられているか」は自分で確認する価値があります。計算例では、これがあるかないかで21万9,000円違いました。
条件は施行令に書いてある
中古マンションで軽減が使える条件は、租税特別措置法施行令第42条が定めています。要件は次のとおりです。
- 床面積が50平方メートル以上であること(区分所有の場合は、専ら住宅用の部分の床面積)
- 建築基準法施行令第3章および第5章の4の規定、もしくは地震に対する安全性に係る基準に適合すること、または昭和57年1月1日以後に建築されたものであること
- 取得の原因が売買または競落であること
- 取得後1年以内の登記であること(措法73)
また同条第2項により、登記簿上の構造が鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造などである一棟の家屋を区分所有する場合、専有部分の床面積が50平方メートル以上であれば要件を満たすものとされます。一般的な分譲マンションはここに当たります。
「昭和57年1月1日」という日付に注意
2つめの要件にある昭和57年1月1日は、重要事項説明で出てくる「昭和56年6月1日」とは別の日付です。
重要事項説明における耐震診断の説明義務は、宅地建物取引業法施行規則が「昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものを除く」としています。これは新耐震基準が適用された日です。一方、登録免許税の軽減における昭和57年1月1日は、登記簿上の建築年月日で判定する基準日です。
似ていますが、根拠も判定対象も違います。昭和56年6月1日以降の着工でも、完成が昭和56年中なら、登録免許税の軽減については耐震基準への適合を別途証明する必要が出てきます。重要事項説明書で耐震関係の欄を読むときの論点は中古マンション購入の注意点にまとめています。
築40年超の物件を検討している場合は、耐震基準適合証明書などが取得できるかを、契約前に仲介会社と司法書士に確認してください。取得できなければ、建物分の登録免許税は本則の1,000分の20になります。
固定資産税の「精算金」は税金ではない
納税義務者は1月1日の所有者。年の途中で売っても変わらない
地方税法第343条第1項は、固定資産税を「固定資産の所有者」に課すると定めています。同条第2項は、土地・家屋についてその所有者を「登記簿または土地補充課税台帳もしくは家屋補充課税台帳に所有者として登記または登録がされている者」と定義します。
そして第359条は一文です。「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする」。都市計画税も第702条により、同じ所有者に課されます。
つまり、その年の1月1日に登記名義人だった人が、その年度の固定資産税の全額の納税義務者です。年の途中で売っても、納税義務者は買主に移りません。
では、決済時に払う「精算金」は何か
国税庁は質疑応答事例で、この点に正面から答えていました。譲渡所得の事例を引きます。
「固定資産税等は、各年ごとに、その賦課期日(その年度の初日の属する年の1月1日)における土地又は家屋の所有者を納税義務者として課されるものであり、その年度の賦課期日後に所有者の異動が生じたとしても、新たに所有者となった者がその賦課期日を基準として課される固定資産税等の納税義務を負担することはありません」
そのうえで、買主が売主に支払う未経過分相当額を、「実質的にはその土地及び家屋の譲渡の対価の一部を成すものと解するのが相当」と結論づけました。
消費税の事例では、さらに明確です。「地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するもの(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭)として課税の対象となります」。
ここから出てくる3つの実務上の帰結
精算金が「税金ではなく売買代金の一部」だと分かると、次のことが導けます。
- 建物分の精算金には消費税がかかる。売主が課税事業者の場合、建物部分の対価として消費税の課税対象になります(土地の譲渡は非課税)
- 精算金は、売主にとって譲渡所得の収入金額になる。売る側の計算にも入ります
- 日割りの起算日は、法律ではなく契約で決まる。1月1日起算か4月1日起算かで金額が変わりますが、どちらが正しいという法令上の定めはありません
3つめが実務では効きます。起算日が違えば精算金の額が変わるので、売買契約書のどこに何日起算と書かれているかを、契約前に見てください。「慣行ですから」で済ませられる話ではなく、代金の一部です。
売主が滞納していた場合
納税義務者は売主のままなので、売主が固定資産税を滞納していても、買主に納税義務が移ることはありません。管理費の滞納が買主に引き継がれるのとは、扱いが正反対です。
ただし、実務上は無関係ではありません。滞納処分として物件が差し押さえられていれば、決済までにそれを解消しないと所有権移転登記ができないからです。差押えの登記は登記事項証明書の甲区に記録されるので、契約前に自分で確認できます。
登記事項証明書は、法務局に行けば誰でも取れます。手数料は書面請求600円、オンライン請求・送付520円です。抵当権の有無とあわせて、甲区に差押えや仮差押えの記載がないかを見てください。
管理費・修繕積立金の日割りと、滞納の引き継ぎ
日割りの対象になるもの
マンションでは、管理費と修繕積立金も引渡し日で日割り精算するのが通例です。これも法律上の義務ではなく、売買契約での取り決めです。
管理組合に対する納入義務そのものは、区分所有者が負います。月の途中で引き渡す場合、その月分をどちらがいつまで負担するかを契約で決めて、決済時に清算します。金額は重要事項説明書に記載された管理費・修繕積立金の月額から計算できるので、事前に自分で試算できます。
滞納分は精算ではなく、承継の問題になる
日割り精算と混同してはいけないのが、前の所有者の滞納分です。
建物の区分所有等に関する法律第8条により、管理費等の債権は特定承継人に対しても行使できます。前の所有者が滞納していれば、その支払い義務は買主に引き継がれます。日割りとはまったく別の話で、金額も桁が変わることがあります。
滞納額は重要事項説明書に記載されます。国土交通省がそう明記しているためです。この欄の読み方と、書いてあった場合の対処は中古マンション購入の注意点で扱っています。
修繕積立金の値上げ予定も、諸費用に影響する
厳密には購入時の諸費用ではありませんが、予算を組むなら見ておく項目です。長期修繕計画で近く値上げが予定されていれば、毎月の支出が変わります。また、一時金の徴収が決議されていれば、それは決済後に現金で必要になります。
重要事項説明書には修繕積立金の積立総額を記載する欄があります。総額が計画に対して不足していれば、値上げか一時金の予兆になります。
仲介手数料・印紙税・司法書士報酬
仲介手数料は上限が決まっている
宅地建物取引業者が受け取れる報酬の上限は、国土交通省の告示で定められています。400万円を超える部分については、速算式で売買代金×3.3%+6.6万円(消費税10%込み)が上限です。
これは上限であって定価ではありません。告示は下限を定めていないため、上限より低い金額で合意すること自体は制度上可能です。告示の3段階の構造と、800万円以下の物件の特例については家を売って手元に残る金額で詳しく扱っています。
印紙税は契約金額で決まる
不動産の売買契約書には印紙税がかかります。租税特別措置法による軽減措置が適用されており、契約金額が1,000万円超5,000万円以下なら1万円です。
売買契約書を2通作成して売主・買主が1通ずつ保管する場合、印紙はそれぞれの契約書に貼ります。1通だけ作成して買主が写しを持つ形にすれば印紙は1通分ですが、写しには原本としての効力がありません。どちらにするかは契約時に決めます。
司法書士報酬は自由価格。だから見積もりを取る
登記手続きを司法書士に依頼する場合の報酬は自由化されており、一律の金額はありません。この記事では相場として金額を示すことはしませんが、見積もりを取れば事前に確定できる費用です。
仲介会社が提携する司法書士を紹介するのが通例ですが、買主が自分で選ぶことも可能です。見積もりを取るときは、報酬と登録免許税の実費を分けて記載してもらうと、どちらがいくらなのかが分かります。
計算してみる。3,000万円の中古マンション
前提を置く
以下はすべて仮定値による計算例です。実際の評価額・税額は物件ごとに異なります。
- 売買代金3,000万円、専有面積65平方メートル、2010年築(昭和57年1月1日以後なので耐震関係の証明は不要)
- 固定資産税評価額:土地(敷地権の持分後)500万円、建物700万円
- 住宅ローン借入額2,500万円。自己居住用で、住宅用家屋証明書を取得
- 固定資産税・都市計画税の年税額10万円、1月1日起算、10月1日引渡し
結果
| 費目 | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 1,056,000円 | 告示の上限額(3,000万×3.3%+6.6万) |
| 印紙税 | 10,000円 | 軽減措置(1,000万超5,000万以下) |
| 登録免許税(土地の移転) | 75,000円 | 500万×15/1000(措法72) |
| 登録免許税(建物の移転) | 21,000円 | 700万×3/1000(措法73) |
| 登録免許税(抵当権設定) | 25,000円 | 2,500万×1/1000(措法75) |
| 固定資産税等の精算金 | 25,205円 | 10万円×92日÷365日(契約上の取り決め) |
| 小計 | 1,212,205円 | 売買代金の約4.04% |
ここに、司法書士報酬、火災保険料、管理費・修繕積立金の日割り、ローンの保証料または融資手数料、引越し費用が加わります。「6〜10%」という幅の大半は、この加算分と、軽減が使えるかどうかで生まれています。
住宅用家屋証明書がなかった場合
同じ物件で、建物と抵当権の軽減が使えなかった場合を計算します。建物の移転が700万×20/1000=14万円、抵当権設定が2,500万×4/1000=10万円。土地の軽減(措法72)は住宅用家屋証明書を要しないので75,000円のままです。
登録免許税の合計は、軽減ありで121,000円、証明書がない場合で315,000円。差は194,000円です。
土地の軽減(措法72)は住宅用家屋証明書を要しないため、実際には3本すべてが本則になる場面は生じにくくなっています。自己居住用でローンを組む買主にとって現実的な比較は、121,000円と315,000円のほうです。
この差が、証明書1枚と、それを登記前に用意できたかどうかで決まります。
この記事で扱っていない費用
不動産取得税
不動産取得税は地方税で、取得後しばらくしてから都道府県から納税通知書が届きます。決済時ではなく後から来るため、諸費用の見積書に載らないことがあります。住宅と住宅用土地については軽減措置があり、要件を満たせば税額がゼロになることもありますが、軽減を受けるには申告が必要な場合があり、期限も定められています。本記事では扱いません。
住宅ローンに伴う費用
保証料または融資手数料、団体信用生命保険の保険料、金銭消費貸借契約書の印紙税は、物件ではなくローンに伴う費用です。同じ物件でも、どの金融機関でどの商品を選ぶかで金額が変わります。
金額の桁も大きく、借入3,000万円なら保証料の一括前払いで60万円前後になることがあります。しかも「保証料0円」と書かれた商品でも、実際には金利に含まれているだけ、というケースも見られます。見積書を比べるときは、初期費用の合計と完済までの総返済額を足して並べてください。
保証料の性質と、一括前払い型・融資手数料型・金利上乗せ型の比べ方は住宅ローンの保証料は誰のための費用かで扱っています。
火災保険料
融資の条件として加入を求められるのが通例です。保険料は建物の構造・所在地・補償範囲・期間で決まり、金融機関ではなく保険会社に支払います。
マンションの場合、火災保険の対象になるのは専有部分です。共用部分は管理組合が加入する保険でカバーされるのが一般的なので、重複して掛けないよう、管理組合の保険の内容を管理会社に確認してください。
長期契約のほうが年あたりの単価は下がる傾向がありますが、契約時の現金支出は増えます。水災を補償に含めるかどうかでも金額が変わるため、ハザードマップと照らして決める項目です。複数社の見積もりを取れば確定する費目なので、早めに動けば予算に組み込めます。
まとめ
中古マンションの諸費用は「売買代金の6〜10%」と言われますが、その中身は性質の違う4つに分かれます。法律で税率が決まっている税金、告示で上限が決まっている仲介手数料、見積もりで確定する自由価格、そして契約で決まる精算金です。
登録免許税の課税標準は売買代金ではなく固定資産税評価額です。税率は登録免許税法の別表第一が、軽減は租税特別措置法72条・73条・75条が定めています。土地の移転が1,000分の15、住宅用家屋の移転が1,000分の3、住宅取得資金の抵当権設定が1,000分の1。
ただし建物と抵当権の軽減には住宅用家屋証明書が要り、国税庁は「登記した後で証明書を提出しても軽減税率の適用を受けられません」と明記しています。中古マンションで軽減が使える条件は租税特別措置法施行令第42条にあり、床面積50平方メートル以上と、耐震基準への適合または昭和57年1月1日以後の建築です。
そして、固定資産税の精算金は税金ではありません。地方税法第359条により納税義務者は1月1日の所有者に固定されており、国税庁は精算金を「私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するもの」としています。だから建物分には消費税がかかり、起算日は契約で決まります。
計算例では、条文で確定する部分だけで1,212,205円、売買代金の約4.04%でした。「だいたい200万円くらい」ではなく、実額で組めます。固定資産税評価額を先に手に入れてください。そこから逆算できます。
よくある質問(FAQ)
固定資産税の精算金を払わないという選択はできますか
制度上は、精算しなければならないという法令はありません。地方税法第359条により固定資産税の賦課期日は1月1日で、同法第343条によりその日の所有者が納税義務者です。年の途中で所有者が変わっても、納税義務者は変わりません。国税庁の質疑応答事例も、精算金を「私人間で行う利益調整のための金銭の授受」としています。つまり、精算するかどうかも起算日も、売買契約での取り決めです。ただし実務ではほぼ例外なく精算する形で契約書が作られており、これを外す交渉は売買代金の交渉と同じ性質のものになります。契約書の条項を確認したうえで判断してください。
登録免許税は売買代金の何%と考えればいいですか
売買代金では計算できません。課税標準は固定資産税評価額です。国税庁のタックスアンサー7191は、課税標準となる不動産の価額について「固定資産課税台帳に登録された価格がある場合は、原則その価格」としています。評価額は売買価格より低いのが通例なので、売買代金に税率を掛けると過大な見積もりになります。評価額は売主の固定資産税の納税通知書か、市町村で取得する評価証明書で確認できます。物件が決まった時点で仲介会社に依頼すれば取り寄せてもらえるので、早めに頼んでおくと諸費用の実額が出せます。
築年数が古いと、登録免許税の軽減は使えませんか
使える場合があります。租税特別措置法施行令第42条第1項第2号は、要件を「建築基準法施行令第3章および第5章の4の規定もしくは国土交通大臣が財務大臣と協議して定める地震に対する安全性に係る基準に適合するものであること、または昭和57年1月1日以後に建築されたものであること」としています。「または」なので、昭和57年1月1日より前の建築でも、耐震基準への適合を証明できれば要件を満たします。証明の取得可否と費用、間に合うかどうかは物件によるため、契約前に仲介会社と司法書士に確認してください。なお、この昭和57年1月1日は、重要事項説明で出てくる昭和56年6月1日とは別の日付です。
諸費用もローンに組み込めますか
諸費用分を含めて借りられる商品はあります。ただし、借入額が増えれば利息も増え、返済負担率の計算上の分子も大きくなります。国土交通省の令和7年度調査では、融資可能額(融資率)を審査項目とする機関が687(69.1%)あり、購入の場合の基準として「100%以内」と回答した機関が380と最も多くなっていました。物件価格を超える借入れになる場合、審査の扱いが変わることがあります。審査項目の全体像は「住宅ローン審査に落ちる理由」で扱っています。組み込めるかどうかと、組み込んだ場合の総返済額の増加を、両方確認してください。
管理費の日割りと、前の所有者の滞納は同じものですか
まったく別のものです。日割り精算は、引渡し日を境にその月分をどう分けるかという契約上の取り決めで、金額は月額から計算できます。一方、前の所有者の滞納分は、建物の区分所有等に関する法律第8条により特定承継人、つまり買主に対しても請求できるとされているものです。日割りの数千円から数万円とは桁が変わることがあります。滞納額は重要事項説明書に記載されるので、契約日より前に自分の目で読んでください。書いてあった場合の対処は「中古マンション購入の注意点」に書いています。
司法書士は自分で選べますか
選べます。登記の申請を誰に委任するかは買主が決めることです。実務では仲介会社が提携する司法書士を紹介するのが通例で、決済当日の段取りが組まれているため変更しにくい面はありますが、制度上の制約ではありません。見積もりを取る場合は、報酬と登録免許税の実費を分けて記載してもらってください。実費は条文から自分でも計算できるので、報酬部分だけを比べられます。また、住宅用家屋証明書の取得が見積もりに含まれているか、軽減税率を適用した金額で計算されているかも、あわせて確認する価値があります。
税率と軽減の条件は、国税庁とe-Govで確認できます
登録免許税の税額表は国税庁のタックスアンサーに、中古住宅で軽減が使える条件は租税特別措置法施行令に書かれています。見積書を受け取る前に開いておくと、軽減が織り込まれているかを自分で確認できます。
国税庁 登録免許税の税額表
e-Gov 租税特別措置法施行令
本記事は一般的な情報提供を目的としています。本文の評価額・税額・精算金はすべて仮定値による計算例です。個別の物件・税務の判断は、宅地建物取引士・税理士・司法書士または所轄の官公署にご相談ください。