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相続した不動産の取得費加算|「3年10か月」の正しい数え方と、分母から債務控除が外れる理由【2026年版】

相続税の申告書と電卓。取得費加算の特例で譲渡所得から差し引ける金額を計算する

相続した不動産を売ると、譲渡所得に所得税と住民税がかかります。すでに相続税を納めているのに、同じ財産にもう一度課税されるように感じる場面です。

これを調整するための特例があります。納めた相続税の一部を、譲渡所得の計算上「取得費」に足せるという仕組みです。租税特別措置法第39条、国税庁のタックスアンサーでは「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」と呼ばれています。取得費加算の特例という通称のほうが知られているかもしれません。

この記事は、相続した実家の取得費の続きにあたります。あちらでは「取得費に加算できる特例がある」と触れるにとどめ、詳細は別の記事に送りました。ここで扱います。

読んでいただきたいのは、よく書かれている「3年10か月」「相続税の一部を足せる」という説明の、その先です。期限の起算点は何か。加算額の分母には何が入るのか。申告を忘れたらどうなるのか。売却の順番を間違えたときに取り返す方法はあるのか。

使うのは租税特別措置法第39条、同法施行令第25条の16、相続税法(第11条の2・第13条・第27条・第32条)、国税庁タックスアンサーNo.3267およびNo.3306です。条文はe-Gov法令検索、国税庁の記載は同庁サイトによります。

結論:相続税を払っているなら、取得費に足せる金額がある

要件は3つだけ

国税庁は、この特例の適用要件を3つに整理しています。

要件(国税庁の原文) 確認の要点
(1)相続や遺贈により財産を取得した者であること。 遺言による取得も含みます。
(2)その財産を取得した人に相続税が課税されていること。 ここが入口です。相続税がゼロなら対象外になります。
(3)その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。 期限の数え方は次の章で扱います。

(2)が入口です。相続税がかかっていない相続では、この特例は使えません。基礎控除の範囲に収まって相続税の申告が不要だった場合、加算する相続税額が存在しないためです。

逆に言えば、相続税を1円でも納めているなら検討の対象になります。自宅でも、土地でも、賃貸用の物件でも構いません。

効き方は「取得費に足す」形

特例の効き方には、いくつかの型が存在します。譲渡所得から直接差し引く特別控除もあれば、税率を下げる軽減税率もあります。この特例は取得費を大きくする型です。

条文を見るとその構造がはっきりします。措置法第39条第1項は、譲渡所得に係る所得税法第33条第3項の適用について、「同項に規定する取得費は、当該取得費に相当する金額に当該相続税額のうち当該譲渡をした資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額を加算した金額とする」としています。

取得費が増えれば、譲渡所得は同じ額だけ減ります。減った分に税率を掛けた金額が、実際に軽くなる税額です。取得費そのものの引き継ぎ方については相続した実家の取得費で扱いました。この特例は、引き継いだ取得費にさらに上乗せする話になります。

この記事で確認すること

ここから先で扱うのは5点です。期限の正確な数え方。加算額の計算式と、その分母の中身。加算額の上限。申告を忘れた場合の扱い。そして、空き家の3,000万円控除との関係です。

いずれも条文または国税庁の記載に書かれていることだけを扱います。相続税額の計算や遺産分割そのものには踏み込みません。個別の判断は税理士に相談してください。

なお、譲渡所得の全体像と、売却で手元に残る金額の考え方は家を売って手元に残る金額にまとめています。

期限の数え方。「3年10か月」は目安にすぎない

条文はこう書いている

期限について、措置法第39条第1項は「当該相続の開始があつた日の翌日から」始まり、相続税の申告書の「提出期限」の「翌日以後三年を経過する日まで」と定めています。

ここで参照されている提出期限が、相続税法第27条第1項の定めるものです。同項は「その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内」に申告書を提出しなければならないとしています。

10か月と3年を足すので、およそ3年10か月。世の中で「3年10か月」と説明されているのは、この足し算の結果です。

起算点は「知った日」であって「亡くなった日」ではない

ただし、この足し算には注意点があります。相続税の申告期限の起算点は「相続の開始があつたことを知つた日」です。被相続人が亡くなった日そのものではありません。

通常はこの2つが一致するため、実務上は「相続開始から3年10か月」で足ります。しかし、疎遠だった親族の相続で死亡の事実を後から知った場合のように、両者がずれることがあります。その場合、相続税の申告期限は後ろにずれ、連動して取得費加算の期限も後ろにずれることになります。

一方で、措置法第39条第1項の期間の始まりは「相続の開始があつた日の翌日」と書かれています。始点は相続開始日基準、終点は申告期限基準。2つの基準が混在しているので、「3年10か月」という覚え方だけで判断せず、自分の相続税の申告期限がいつだったかを確認してから逆算してください。

売却には時間がかかる

期限は「譲渡していること」に対してかかります。売却活動を始めた日ではありません。

不動産の売却は、媒介契約を結んでから引渡しまでに数か月を要することが一般的です。期限の直前に動き出すと、買主が見つからないまま期限を迎えるか、値下げに応じて売り切るかの二択になります。特例で軽くなる税額より、値下げ額のほうが大きくなっては本末転倒でしょう。

売却の進め方と媒介契約の選択については、媒介契約3種類の選び方で整理しました。期限のある売却では、契約の型によって動き方が変わります。

2つの特例は、売却の期限が違う 相続開始 申告期限 知った日の翌日から10月 取得費加算 申告期限の翌日以後3年を経過する日まで 約3年10月 空き家3000万円控除 相続開始から3年を経過する日の年末まで この2つは併用できない。売った家屋・敷地について取得費加算を使うと、空き家の特例は使えない 出典:租税特別措置法39条1項、相続税法27条1項、国税庁タックスアンサーNo.3267・No.3306

加算できる金額は、政令が決めている

政令が定める2つの要素

措置法第39条第1項は加算額を「政令で定めるところにより計算した金額」としており、具体的な計算は同法施行令第25条の16に委ねられています。

同条第1項は「第一号に掲げる相続税額に第二号に掲げる割合を乗じて計算した金額とする」という書き方です。要素は2つです。

第1号が、その人の相続税額。第2号が、その人の課税価格のうちに、譲渡した資産の価額が占める割合です。式にすると次のようになります。

要素 中身
相続税額 その人が納めた相続税額(延滞税などの附帯税は除く)
分子 譲渡した資産について、課税価格の計算の基礎に算入された価額
分母 その人の相続税法第11条の2の課税価格(ただし第13条の適用がないものとした場合の金額)

分母から債務控除が外れる

この表の最後の行が、見落とされやすいところです。施行令第25条の16第1項第2号は、分母となる課税価格について括弧書きで「同法第十三条の規定の適用がある場合には同条の規定の適用がないものとした場合の課税価格」と定めています。

相続税法第13条は債務控除の規定です。被相続人の債務と葬式費用を、課税価格から差し引くという内容になっています。つまりこの括弧書きは、取得費加算の計算をするときは、いったん差し引いた債務と葬式費用を分母に戻すという指示です。

債務を戻せば、分母はその分だけ膨らみます。分母が大きくなれば割合は小さくなり、加算額も小さくなります。債務が多いほど、取得費に足せる金額は小さくなるという関係です。相続税の申告書に記載された課税価格をそのまま分母に置くと、加算額を多く計算してしまいます。

資産ごとに計算する

複数の財産を売った場合の扱いも、条文に明記があります。措置法第39条第8項は「同項の規定により同項に規定する取得費に加算する金額は、譲渡をした資産ごとに計算するものとする」としています。国税庁のタックスアンサーにも「なお、譲渡した財産ごとに計算します」とあります。

土地とマンションを別々の年に売った場合、それぞれの譲渡について、その資産に対応する加算額を計算することになります。まとめて1回で使い切る仕組みではありません。

反対に、期限内に売れなかった財産については、その財産に対応する部分を使う機会が失われます。売る順番と時期は、期限と合わせて考える必要があります。

計算してみる。そして上限にぶつかる場合

前提を置いて計算する

数字を入れてみます。以下は計算の流れを示すための仮の数値であり、実際の税額は個別の事情によって変わります。

項目 金額
相続人 子1人
相続した土地の相続税評価額 4,000万円
相続した預貯金 1,000万円
債務・葬式費用 500万円
納めた相続税額 90万円
その土地の売却価額 5,000万円
引き継いだ取得費 2,000万円
譲渡費用 200万円

分母は、債務控除を戻した金額です。4,000万円+1,000万円で5,000万円になります。分子は、譲渡した土地の価額である4,000万円です。

加算額は、90万円×4,000万円÷5,000万円=72万円。これを取得費に足すので、取得費は2,000万円+72万円で2,072万円になります。譲渡所得は5,000万円−2,072万円−200万円=2,728万円です。

特例を使わない場合の譲渡所得は2,800万円ですから、差は72万円。長期譲渡所得の税率(所得税及び復興特別所得税15.315%・住民税5%)を掛けると、軽くなる税額は約14万6千円という計算になります。

債務控除を分母に入れるとどう変わるか

前の節で触れた分母の話を、この数字で確かめます。

もし分母に相続税の申告書上の課税価格、つまり債務控除後の4,500万円を置いてしまうと、90万円×4,000万円÷4,500万円で80万円になります。正しい72万円より8万円大きい。税額に直すと約1万6千円の差です。

金額としては小さく見えるかもしれません。ただし相続財産や債務の規模が大きくなれば、差も比例して大きくなります。分母を取り違えると過大に申告することになり、申告内容の誤りにつながります。国税庁が用意している「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」を使えば、この計算は様式に沿って進められます。

上限はその資産の譲渡益。譲渡損なら使えない

加算額には上限があります。施行令第25条の16第1項のただし書は、計算した金額が「当該資産の譲渡所得に係る収入金額から同項の規定の適用がないものとした場合の当該資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除した残額に相当する金額を超える場合には、その残額に相当する金額とし」と定めています。

要するに、加算できるのはその資産の譲渡益までです。特例によって譲渡所得をマイナスにすることはできません。国税庁の説明も「その金額がこの特例を適用しないで計算した譲渡益の金額を超える場合は、その譲渡益相当額となります」となっています。

さらにただし書の後段は、収入金額が取得費と譲渡費用の合計額に満たない場合、つまり譲渡損が出ている場合について「当該計算した金額は、ないものとする」と定めました。売って損が出たなら、加算額はゼロです。相続税を納めていても、この特例からは何も生じません。譲渡損が出た場合に使える別の制度については譲渡損失の損益通算で扱いましたが、こちらはマイホームが対象で、要件が異なります。

申告しないと使えない。ただし救済規定がある

措置法第39条第2項が定める2つの条件

この特例は、黙っていて適用されるものではありません。措置法第39条第2項は、適用を受けようとする年分の確定申告書または修正申告書に「前項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、同項の規定による譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する」としています。

条件は2つです。適用を受ける旨を書くこと。そして明細書を添付すること。国税庁は提出書類として「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」と「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]」を挙げています。

確定申告そのものの手順と添付書類については家を売った年の確定申告にまとめました。取得費加算を使う場合は、そこに明細書が1枚加わる形になります。

書き忘れても、諦める前に読む条文がある

第3項に救済規定があります。税務署長は、確定申告書の提出がなかった場合や、記載・添付がない申告書が提出された場合でも、「その提出又は記載若しくは添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるとき」は、当該記載をした書類と財務省令で定める書類の提出があった場合に限り、第1項を適用することができるとしています。

「できる」という書き方なので、当然に認められるわけではありません。何が「やむを得ない事情」にあたるかも、条文からは読み取れません。それでも、書き忘れた時点で自動的に終わりというわけではないことは、条文に書かれています。

該当しそうな場合は、放置せず税務署または税理士に相談してください。この条文があることを知っているかどうかで、相談するかどうかが変わります。

相続税が後で減ったときの扱い

もう1つ、第9項にも実務的な定めがあります。この特例の適用を受けた人が、相続税法第32条第1項の更正の請求を行って相続税額が減った場合の話です。

相続税額が減れば加算額も減り、所得税を追加で納めることになります。このとき第9項は、所得税の法定納期限の翌日から修正申告書の提出日または更正通知書の発出日までの期間を、延滞税の計算の基礎となる期間に算入しないとしています。

相続税の側の事情で結果的に所得税が増える場面について、延滞税の負担が生じないように調整されているということです。未分割だった財産が後から分割されるといった事情は、相続では珍しくありません。

順番が前後したときの、更正の請求

譲渡の申告が先になる場合がある

ここは、他ではあまり書かれていない部分です。

相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月。譲渡所得の確定申告期限は、売った年の翌年3月15日です。この2つは連動していないため、相続税の申告より先に、譲渡の確定申告期限が来てしまうことがあります。

たとえば、年の前半に相続が開始し、同じ年のうちに不動産を売ったとします。譲渡の申告は翌年3月15日まで。相続税の申告期限は相続開始から10か月なので、こちらのほうが後になることがあり得ます。相続税額が確定していなければ、加算額も計算できません。

措置法第39条第4項が定める3つの場合

この場面のために、第4項が更正の請求の道を用意しました。同項は3つの場合を挙げ、それぞれについて請求できる期限を定めています。

場合 請求できる期限
譲渡した年分の確定申告期限の翌日から相続税申告期限までの間に、相続税の期限内申告書を提出した者 その提出をした日の翌日から2か月を経過する日
被相続人の所得税について所得税法第60条の3第6項前段の適用があったことにより、修正申告書の提出または更正があった者 その提出または更正があった日の翌日から4か月を経過する日
遺産分割等の事由が生じたことにより、修正申告書の提出または更正の請求に基づく更正があった者 その提出または更正があった日の翌日から4か月を経過する日

1行目が、いま説明した順番の問題に対応するものです。譲渡の申告を先に済ませ、その後に相続税の申告書を出した場合、提出日の翌日から2か月以内に更正の請求をすれば、取得費加算を反映できます。

期限が2か月と短い点に注意してください。相続税の申告書を出したことで安心してしまうと、この2か月が過ぎます。

遺産分割が後から決まった場合

3行目は、遺産分割に関するものです。相続税の申告期限までに分割が終わらない場合、相続税法第55条により、いったん法定相続分で申告することになります。その後に分割が確定すると、相続税法第32条第1項第1号により更正の請求ができます。

この動きに連動して、譲渡所得の側でも更正の請求ができるというのが第4項第3号です。期限は、修正申告書の提出または更正があった日の翌日から4か月を経過する日となっています。

相続税法第32条第1項の側の期限は「当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から四月以内」です。2つの4か月は起算点が違います。相続税の更正の請求と、譲渡所得の更正の請求は、別々に期限を管理してください。

空き家の3,000万円控除とは、どちらかしか選べない

国税庁の要件に書いてある

相続した不動産を売るときに検討される特例として、もう1つ「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」があります。一定の要件を満たす場合に、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。

この2つは併用できません。根拠は、国税庁タックスアンサーNo.3306が挙げる適用要件の(5)にあります。「売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと」。

つまり、同じ家屋・敷地について取得費加算を使っていると、空き家の3,000万円控除は使えません。どちらを選ぶかという問題になります。

期限が違う

選択にあたって効いてくるのが、2つの制度で期限が異なる点です。

制度 売却の期限
取得費加算の特例 相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで
空き家の3,000万円控除 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで

空き家の特例には、このほかにも要件が並びます。国税庁によれば、対象となる家屋は「昭和56年5月31日以前に建築されたこと」「区分所有建物登記がされている建物でないこと」「相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと」の3つをすべて満たすものに限られます。売却代金が1億円以下であることも要件です。

また、令和6年1月1日以後に行う譲渡で、被相続人居住用家屋および敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合、控除額は2,000万円までとなります。人数によって上限が変わる点も、選択の材料です。

選び方の順序

比較の順序としては、まず空き家の特例の要件を満たすかどうかを確認するのが現実的でしょう。要件が細かく、満たさない場合はそもそも選択の余地がないためです。区分所有のマンションや、昭和56年6月以降に建てられた家屋、相続開始時に同居していた人がいた家屋は、対象外になります。

両方の要件を満たす場合は、そこで金額を比べます。空き家の特例は最高3,000万円の控除、取得費加算はここまで見てきた計算式で求めた金額です。相続税額が小さければ加算額も小さくなるため、多くの場合は空き家の特例のほうが大きくなります。ただし相続税額が大きい場合は逆転することもあり得ます。

いずれにしても、売ってから選ぶことはできません。期限も要件も違うため、売却の時期と方法を決める前に比較する必要があります。相続した財産の価格の見方については公示地価・路線価・固定資産税評価額も参考にしてください。

まとめ

取得費加算の特例は、相続税を納めている人が、相続した財産を一定期間内に売った場合に、納めた相続税の一部を譲渡所得の取得費に足せる制度です。根拠は租税特別措置法第39条、計算方法は同法施行令第25条の16にあります。

期限は「3年10か月」と説明されますが、これは相続税の申告期限10か月と3年を足した目安です。条文上、期間の始まりは相続の開始があった日の翌日、終わりは相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日。そして相続税の申告期限は「相続の開始があつたことを知つた日」から起算されます。自分の申告期限を確認してから逆算してください。

加算額は、相続税額に、課税価格のうち譲渡資産の価額が占める割合を掛けて計算します。分母となる課税価格は、相続税法第13条の債務控除を適用しないものとした金額です。申告書上の課税価格をそのまま使うと、加算額を過大に計算します。また加算額は譲渡をした資産ごとに計算し、その資産の譲渡益が上限となります。譲渡損が出ている場合は「ないものとする」とされ、適用の余地がありません。

適用には申告が必要です。第39条第2項が、適用を受ける旨の記載と明細書の添付を要求しています。ただし第3項に、やむを得ない事情がある場合の救済規定があります。

譲渡の確定申告が相続税の申告より先になった場合は、第4項により更正の請求ができます。相続税の期限内申告書を提出した日の翌日から2か月という短い期限なので、管理が必要です。遺産分割が後から確定した場合の4か月の請求期限も、相続税法第32条の4か月とは起算点が違います。

空き家の3,000万円控除とは選択適用です。国税庁の要件に、取得費加算の適用を受けていないことが明記されています。期限も要件も異なるため、売却の方法を決める前に比較してください。

よくある質問(FAQ)

相続税を納めていませんが、使えますか

使えません。国税庁が挙げる適用要件の(2)は「その財産を取得した人に相続税が課税されていること」です。相続財産の合計額が基礎控除の範囲に収まり、相続税の申告も納税も不要だった場合、加算する相続税額が存在しないため、この特例は適用できません。ただしその場合でも、被相続人から引き継いだ取得費と取得時期は使えます。親が長く所有していた不動産であれば、相続直後に売っても長期譲渡所得として扱われる可能性があります。詳しくは相続した実家の取得費の記事をご覧ください。

「3年10か月」を1日でも過ぎたらどうなりますか

期限を過ぎた譲渡については、この特例を適用できません。措置法第39条第1項が期間を区切って定めているためです。なお、期限の終わりは相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日であり、その申告期限は相続税法第27条第1項により「相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内」とされています。相続開始日と、相続があったことを知った日が異なる場合、期限もずれます。ご自身の相続税の申告期限を確認したうえで、税理士に日付を確かめてください。

相続した土地の一部だけを売りました。加算額はどうなりますか

措置法第39条第8項は「取得費に加算する金額は、譲渡をした資産ごとに計算するものとする」と定めています。国税庁の説明も「譲渡した財産ごとに計算します」で一致します。分子に入るのは、譲渡した資産について課税価格の計算の基礎に算入された価額です。土地の一部を分筆して売った場合の分子の取り方は個別の判断を伴うため、計算明細書を作成する段階で税理士に確認してください。なお、期限内に売らなかった部分に対応する加算額は、その後に使うことができません。

相続税の申告書に書いてある課税価格を分母に使ってよいですか

そのままでは使えません。租税特別措置法施行令第25条の16第1項第2号は、分母となる課税価格について「同法第十三条の規定の適用がある場合には同条の規定の適用がないものとした場合の課税価格」と括弧書きで定めています。相続税法第13条は債務控除、つまり被相続人の債務と葬式費用の控除に関する規定です。したがって、申告書上の課税価格に債務控除額を足し戻した金額が分母です。債務控除を受けている場合、申告書の数字をそのまま使うと分母が小さくなり、加算額を過大に計算することになります。国税庁の「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」を使えば、様式に沿って計算できます。

売ったら損が出ました。相続税を納めているので何か使えませんか

この特例については使えません。租税特別措置法施行令第25条の16第1項のただし書は、収入金額が取得費と譲渡費用の合計額に満たない場合、加算する金額は「ないものとする」と定めています。譲渡益がゼロ以下であれば、加算額もゼロです。なお、譲渡損失の損益通算や繰越控除の制度はマイホームを対象としたもので、相続した不動産がそのまま対象になるわけではありません。要件が異なるため、どの制度に該当するかを税理士に確認してください。

去年売って確定申告を済ませましたが、相続税の申告はこれからです

措置法第39条第4項第1号が、この場合を想定した規定です。譲渡をした日の属する年分の確定申告期限の翌日から相続税申告期限までの間に相続税の期限内申告書を提出した者は、その提出をした日の翌日から2か月を経過する日まで、税務署長に対して更正の請求をすることができるとされています。期限が2か月と短いため、相続税の申告書を提出したらすぐに動いてください。なお、確定申告期限までにすでに相続税申告書を提出していた場合や、相続税の期限内申告書の提出後に確定申告書を提出した場合は、この号から除かれています。ご自身がどれに当たるかは税理士にご確認ください。

売る前に、この2つを開いてください

取得費加算の要件と提出書類は国税庁のタックスアンサーに、加算額の計算式は租税特別措置法施行令第25条の16にあります。分母から債務控除が外れることは、この政令の括弧書きにしか書かれていません。

国税庁 No.3267
e-Gov 租税特別措置法

本記事は一般的な情報提供を目的としています。記事中の計算例は計算の流れを示すための仮の数値であり、実際の税額は相続財産の内容、債務控除の額、他の特例の適用状況などによって変わります。個別の適用の可否および税額の判断は、税理士または所轄の税務署にご相談ください。

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