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サイトに「営業お断り」を書くべきか|メールだけ法的効果があり、電話には及ばない

媒体によって効果がまったく違う

自社サイトに「営業目的のご連絡はお断りします」と書くべきか。この記事は、営業をかける側の媒体が、受け手側の視点で書いています。

先に結論を書きます。この一文の効果は、メール・フォーム・電話で別々です。まとめて「営業お断り」と書いても、止まるものと止まらないものがあります。

3つの媒体で根拠が違う

媒体 根拠になる条文 書いた場合の効果
メール 特定電子メール法 施行規則第3条ただし書き ある。公表アドレスへの送信の例外が外れる
フォーム (特定電子メール法の対象外) 直接の法的効果はない。意思表示としては機能する
電話 特定商取引法 第17条 相手が事業者向けの商材を売る場合は及ばない

この違いを知らずに1行だけ書くと、いちばん効く場所に書いていないという状態が起きます。

効果の差を図で見る

同じ一文でも、媒体ごとに届く距離が違うメール法的効果施行規則3条ただし書きフォーム意思表示として特電法の対象外電話事業者向けは及ばない特商法17条・26条1項1号帯の長さは、その一文がどこまで効くかの目安。メールだけは、書いた時点で相手の送信根拠が1つ消える。フォームと電話は、書いても送ってくる相手には別の対処が要る。だから「1行書いて終わり」にはならない。

同じ文言でも、媒体で届く距離が違う。メールが最も効き、電話が最も効かない。

メールには法的な効果がある

最も効くのがメールです。ここだけ、書いた時点で相手の送信根拠が1つ消えます。

公表アドレスは送信してよい例外になっている

特定電子メール法第3条第1項は、広告メールを送ってよい相手を4つ挙げています。そのうち第4号がこれです。

「総務省令・内閣府令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを公表している団体又は個人(個人にあっては、営業を営む者に限る。)」

つまりサイトにメールアドレスを載せている法人は、同意なしで広告メールを送ってよい相手です。これが、営業メールが届く法的な根拠になっています。

ただし施行規則にただし書きがある

第4号の「省令で定めるところにより」の中身が、同法施行規則第3条です。

「法第三条第一項第四号の規定による自己の電子メールアドレスの公表の方法は、自己の電子メールアドレスをインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置く方法とする。ただし、自己の電子メールアドレスと併せて特定電子メールの送信をしないように求める旨の文言をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いたときは、この限りではない。」

ただし書きを読み解くと、こうなります。メールアドレスと一緒に「送らないでほしい」と書いておけば、そのアドレスは第4号の「公表している」に当たらなくなる。

ここが要点書くことで相手を止めるのではなく、相手が持っていた送信の根拠を1つ外すのがこの条文の構造です。だから効果は、書いた時点で発生します。

「併せて」が意味すること

条文は「自己の電子メールアドレスと併せて」と書いています。ここが実務上の分かれ目です。

サイトのどこか遠い場所に「営業お断り」と書いてあっても、アドレスと併せて公表されている状態とは言いにくい。アドレスを載せている、まさにその場所に書く必要があります。

具体的には、会社概要ページにアドレスを載せているなら、その同じページの同じ枠内。フッターに載せているなら、フッターの中。離れた場所の「サイトポリシー」に書くだけでは、弱くなります。

取引関係があると外れない

ただし書きが効くのは、第3条第1項第4号の例外だけです。他の3つの号は別に生きています。

とくに第3号「当該特定電子メールを手段とする広告又は宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者」。すでに取引のある会社からの案内は、サイトに書いても止まりません。

第1号の同意も同じです。過去にセミナーや資料請求で同意していれば、その根拠が残ります。サイトの記載は、あとから同意を取り消す機能を持っていません。

取引先からの案内を止めたいなら、そのメールに付いている配信停止の窓口を使ってください。これが第3条第3項の通知にあたり、以後は送れなくなります。

フォームには直接の効果がない

次にフォームです。ここは期待と現実がずれやすいところです。

フォーム送信は特定電子メール法の対象外

問い合わせフォームからの送信は、特定電子メール法の「電子メール」に当たりません。理由はフォーム営業は違法なのかで整理しました。

対象外である以上、施行規則第3条のただし書きも働きません。フォームの近くに「営業お断り」と書いても、同法の根拠を外す効果はありません。

それでも書く意味はある

法的効果が無いなら無意味か。そうではありません。2つの意味があります。

1つ目、送る側の判断基準になること。きちんと運用している会社は、送信前にフォームのページを見ます。記載があれば除外します。

2つ目、民事の場面で意思表示として使えること。繰り返し送られて実害が出た場合、拒否の意思を明示していた事実は材料になります。

逆に言えば、記載を見ない相手には効きません。フォームに書く行為は、届く相手を選びます。

フォーム自体を閉じるという選択

営業が多すぎて業務にならないなら、フォームの設計を変える手もあります。

  1. お問い合わせ種別に「営業・提案」を追加し、別の宛先に振り分ける
  2. 必須項目を増やして、一括送信のツールで通りにくくする
  3. フォームを閉じて、電話と郵送だけにする

1つ目が最もよく効きます。受け取る場所を分けるだけで、通常の問い合わせと混ざらなくなる。営業を完全に止めるより、仕分けるほうが現実的です。

電話は相手が事業者かで変わる

3つ目が電話です。ここは条文の構造が違います。

第17条は「意思を表示した者」への再勧誘を禁じている

特定商取引法第17条にこうあります。

「販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない。」

禁じられているのは意思を表示した者への再勧誘です。サイトに書いてある一文が「意思を表示した」に当たるかは、条文の文言だけでは決まりません。

そして事業者向けには及ばない

さらに大きいのが適用除外です。同法第26条第1項第1号は、営業のために、または営業として締結する契約を適用除外にしています。

基準は相手が法人かどうかではなく、その契約の目的です。詳しくはテレアポの時間帯で整理しました。

つまり事業用の商材を売る営業電話には、第17条が及びません。サイトに「営業電話お断り」と書いても、法的な根拠にはなりにくい。

電話に効くのは記載ではなく運用

では電話は止められないのか。止め方が違います。記載ではなく、受けたその場で伝えることが効きます。

「今後のご連絡は不要です」とその場で伝えれば、記録に残る意思表示になります。まともな会社なら、除外リストに入れます。

営業をかける側から書くと、これが最も確実に効く方法です。断り方の型はテレアポの切り返しで、逆の立場から整理しています。

名刺を渡した相手には効かない

もう1つ、サイトの記載では止まらない経路があります。名刺交換です。

第3条第1項第2号の通知方法は、施行規則第2条第1項で「書面により通知する方法」と定められています。名刺は書面なので、渡した時点で送信の根拠が生まれる。この構造は名刺を営業リストに入れていいのかで書きました。

展示会で名刺を配ったあとに営業メールが増えるのは、これが理由です。サイトに何を書いても、この経路には効きません。

止めたいなら方法は2つ。名刺に「営業目的のメールはお断りします」と印刷しておくか、届いたメールに返信して拒否の意思を伝えるかです。前者は同規則第2条第2項が根拠になります。

文言をどう書くか

ここから実務です。効く文言と、効きにくい文言があります。

効く形

メールアドレスと併せて置く(最も効く)
  info@example.co.jp
  ※このアドレスへの営業・宣伝目的のメール送信はお断りします。

フォームの送信ボタンの近く
  ※営業・提案目的のご連絡はお受けしておりません。

電話番号の近く
  ※営業目的のお電話はご遠慮ください。

媒体ごとに、その連絡先のすぐそばに置く。1か所にまとめて書くと「併せて」の要件から外れる。

文言に入れる3つ

  1. 「送信をしないように求める」の意味がはっきり出ていること。「ご遠慮ください」より「お断りします」のほうが明確
  2. 対象が分かること。営業・宣伝・勧誘のどれを断るのか
  3. 連絡先のすぐそばにあること

1つ目が意外と落ちます。「営業目的の方はご遠慮ください」は、お願いであって拒否の表示としては弱い。条文が求めているのは「送信をしないように求める旨の文言」です。

効きにくい形

書き方 弱い理由
サイトポリシーのページにだけ書く アドレスと「併せて」の状態になっていない
画像の中に書く 機械的に読めない。送信側のツールが拾えない
「なるべくお控えください」 拒否の表示として弱い
英語だけで書く 国内向けの送信者が読まない可能性がある

2つ目は見落とされます。メールアドレスを画像にして載せているサイトでは、お断りの文言も画像に入れてしまいがちです。これでは送信側の判定に引っかかりません。

どこに置くか

文言が決まったら、置き場所です。ここで効果が変わります。

連絡先ごとに置く

1か所にまとめず、連絡先ごとに添える会社概要ページinfo@example.co.jp※営業目的のメール送信はお断りします効果 大問い合わせフォーム送信ボタンの直前※営業・提案目的のご連絡はお受けしておりません効果 中電話番号の欄代表番号のすぐ下※営業目的のお電話はご遠慮ください効果 小サイトポリシーに1行だけ書く形は、条文の「併せて」から外れる。連絡先が3つあるなら、文言も3か所に要る。

文言は連絡先に添えるもの。まとめて1か所に置くと、最も効くはずのメールで効果が薄れる。

テキストで書く

前の章でも触れましたが、必ずテキストで書いてください。画像の中の文字は、送信側のツールが読みません。

そしてスクリプトで後から差し込む形も避けてください。クローラや簡易な取得ツールは、実行前のHTMLを見ます。最初からHTMLに入っている必要があります。

フッターに1行置く意味

各所に置いたうえで、フッターにも1行置く価値はあります。全ページに出るからです。

ただしフッターの記載は、アドレスと「併せて」の要件を満たすためのものではありません。あくまで補助です。主たる記載は、連絡先のそばに置いてください。

更新日を入れておく

細かい話ですが、記載のそばに更新日を入れておくと後で効きます。

「いつから書いてあったか」が争点になる場面があるからです。記載の後に送ってきた相手に対して、記載の時期を示せる状態にしておく。

サイトの更新履歴に残す形でも構いません。重要なのは、あとから第三者に示せることです。画面のスクリーンショットを日付つきで保存しておくだけでも違います。

そして記載を変えたときも履歴を残してください。文言を強めた場合、その前後で相手の扱いが変わります。

書くことの副作用

営業をかける側から見て、正直に書いておきます。お断りを書くと、失うものもあります。

必要な提案も来なくなる

きちんと運用している会社ほど、記載を見て除外します。つまり除外されるのは、丁寧な会社から順です。

記載を無視する会社は、そもそも記載を見ていません。結果として、残る営業の質が下がるという現象が起きます。

これは書くなという意味ではありません。書いた結果として何が起きるかを、先に知っておいてほしいということです。

採用や取材の連絡まで減ることがある

文言が広すぎると、意図しないものまで止まります。「営業・宣伝・勧誘目的のご連絡はお断りします」だけだと、提携の打診や取材の依頼を出す側が迷います。

受けたい連絡があるなら、併記してください。「取材・協業のご相談は歓迎します」の1行を添えるだけで、出す側の判断が変わります。

中間の設計がある

全部断るか、全部受けるかの2択ではありません。中間があります。

設計 どうなるか
全面的に断る 丁寧な会社から順に除外される。残る営業の質が下がる
媒体を絞る(メールだけ断る) 最も量が多い経路を止めつつ、他の経路は残る
窓口を分ける(種別を追加) 断らずに仕分けられる。通常の問い合わせと混ざらない
何も書かない 量は減らない。ただし必要な提案も届く

営業が業務を圧迫しているなら2つ目か3つ目、単に整理したいだけなら3つ目。「全部断る」を選ぶ前に、3つ目を試す価値があります。

書いたあとの運用

書いて終わりにすると、効果が測れません。決めることが3つあります。

量を測る

記載の前後で、営業の連絡が何件減ったかを数えてください。感覚で「減った気がする」では、次の判断ができません。

測るのは3つ。メールの件数、フォームからの件数、電話の件数。媒体ごとに分けないと、どの記載が効いたか分かりません。

測る期間は、記載の前1か月と後1か月。それより短いと、月ごとの変動と区別がつきません。

止まらない相手への対処

記載があっても送ってくる相手がいます。ここで取れる手順が3段あります。

  1. 1回目は返信で明示する。「今後のご連絡は不要です」と書いて送る。これで意思表示が記録に残る
  2. 2回目も来たら、記録を残す。日時、送信元、内容
  3. それでも続くなら、総務省と消費者庁への申出という制度がある。同法第8条

2段目までで、ほとんどは止まります。記録を残しておくことが、3段目に進めるかどうかを決めます。

受け取る側の窓口を決めておく

断る文言を書いたなら、それでも来た連絡を誰が処理するかを決めてください。決まっていないと、各自が個別に対応します。

決めるのは2つ。誰が見るか。そして、返信するかしないか。

返信しない方針なら、それも決めておく。1人だけ丁寧に返信していると、その人の宛先に営業が集中します。

社内に周知する

最後に、意外と抜けるところを。お断りを書いたことを、社内に伝えてください。

営業を受ける立場の人が知らないと、電話口で「サイトに書いてあります」と言えません。そして自社が営業をかける側でもある場合、相手のサイトの記載を見る習慣が無いことに気づけません。

伝えるのは2つ。自社が何をどこに書いたか。そして、他社のサイトに同じ記載があったら送らないこと。

後者が抜けていると、自社は断っておきながら他社には送るという状態になります。受け手として嫌だったことは、送り手としてもやらない。この一致が、そのまま営業の質になります。

まとめ

  • 「営業お断り」の効果はメール・フォーム・電話で別々。まとめて1行書くと、いちばん効く場所に書いていない状態になる
  • メールが最も効く。特定電子メール法第3条第1項第4号は、公表アドレスを送信してよい例外にしている
  • 施行規則第3条のただし書き。アドレスと併せて送信を断る文言を公表すれば、その例外に当たらなくなる
  • つまり相手を止めるのではなく、相手が持っていた送信の根拠を1つ外す構造。効果は書いた時点で発生する
  • 条文は「アドレスと併せて」と書いている。アドレスを載せている、まさにその場所に書く
  • フォーム送信は特定電子メール法の対象外なので、ただし書きも働かない
  • ただし書く意味はある。送る側の判断基準になり、民事の場面で意思表示として使える
  • 営業が多すぎるなら、断るよりお問い合わせ種別に「営業・提案」を足して振り分けるほうが現実的
  • 電話は特定商取引法第17条。ただし第26条第1項第1号で、営業のために締結する契約は適用除外
  • だから事業用の商材を売る営業電話には及ばない。電話に効くのは記載ではなく、その場で伝えること
  • 文言に入れるのは3つ。拒否の意味が明確/対象が分かる/連絡先のすぐそば
  • 「ご遠慮ください」はお願いであって、拒否の表示としては弱い
  • 画像の中に書かない。スクリプトで後から差し込まない。送信側のツールが読まない
  • サイトポリシーに1行だけ書く形は、「併せて」の要件から外れる
  • 副作用がある。除外されるのは丁寧な会社から順で、残る営業の質が下がる
  • 受けたい連絡があるなら併記する。「取材・協業のご相談は歓迎します」の1行
  • 記載の前後で媒体ごとに件数を測る。前1か月と後1か月
  • 止まらない相手には、返信で明示 → 記録 → 第8条の申出、の3段

営業をかける側から書くと、記載のあるサイトには送りません。そして記載を見ずに送ってくる相手は、記載を増やしても止まりません。だから最も効くのは、アドレスのすぐ隣に、テキストで、はっきり書くことです。

なお本稿は条文の原文から線を引いたものです。個別の事案については、条文と各ガイドラインを確認してください。

よくある質問

営業お断りの文言はどう書けばいいですか

3つ入れてください。拒否の意味がはっきり出ていること、対象(営業・宣伝・勧誘)が分かること、そして連絡先のすぐそばにあること。「ご遠慮ください」はお願いであって拒否の表示としては弱いので、「お断りします」のほうが明確です。条文が求めているのは「送信をしないように求める旨の文言」です。

ホームページに書けば営業メールは止まりますか

法的な効果はあります。特定電子メール法施行規則第3条のただし書きにより、メールアドレスと併せて送信を断る文言を公表すれば、そのアドレスは第3条第1項第4号の「公表している」に当たらなくなります。相手が持っていた送信の根拠が1つ消えるので、きちんと運用している会社は送ってきません。

問い合わせフォームに書く場合はどうですか

フォームからの送信は特定電子メール法の対象外なので、施行規則第3条のただし書きは働きません。ただし送る側の判断基準にはなり、民事の場面で意思表示として使えます。量が多くて業務を圧迫しているなら、断るよりお問い合わせ種別に「営業・提案」を足して別の宛先に振り分けるほうが現実的です。

営業電話にも効果がありますか

効きにくいです。特定商取引法第17条は契約を締結しない旨の意思を表示した者への再勧誘を禁じていますが、同法第26条第1項第1号により、営業のために締結する契約は適用除外になります。事業用の商材を売る営業電話には及びません。電話に効くのは記載ではなく、受けたその場で「今後のご連絡は不要です」と伝えることです。

届いた営業メールに断りの返信をすべきですか

1回目は返信で明示してください。「今後のご連絡は不要です」と書いて送れば、意思表示が記録に残ります。特定電子メール法第3条第3項により、通知を受けた送信者は以後その相手に送信できません。2回目が来たら、日時・送信元・内容を記録します。返信しない方針にするなら、社内でそれも決めておいてください。

書いたことで困ることはありますか

あります。きちんと運用している会社ほど記載を見て除外するので、除外されるのは丁寧な会社から順です。記載を無視する会社はそもそも見ていないため、残る営業の質が下がります。また文言が広すぎると、提携の打診や取材の依頼まで止まります。受けたい連絡があるなら併記してください。

効果があったかは、どう確かめますか

記載の前1か月と後1か月で、営業の連絡の件数を媒体ごとに数えてください。メール、フォーム、電話の3つに分けないと、どの記載が効いたか分かりません。期間がそれより短いと、月ごとの変動と区別がつきません。感覚で「減った気がする」では、次の判断ができません。

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