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特定商取引法に基づく表記の書き方|住所を省略できる条文と、返品で不利にならない書き方

ノートパソコンの画面を見ながら手元のメモで項目を確認しているところ

カートの管理画面に「特定商取引法に基づく表記」という入力欄があります。テンプレートが用意されていることが多いので、埋めれば終わりに見えます。

ただ、埋めるだけでは足りない項目と、空欄のまま公開すると不利になる項目があります。とくに返品のところは、書かないと法律のほうの条件が適用されます。

この記事では、消費者庁の逐条解説とe-Gov法令検索の条文だけを見て、何をどこに書くのかを整理します。自宅の住所を出したくない場合に使える規定も、条文の場所まで示します。

ページの名前は決まっていない

先に細かいところから片付けます。「特定商取引法に基づく表記」という名前は、法律で決められたものではありません。

消費者庁の逐条解説には、こう書かれています。

例えば、インターネット上のホームページにおいて、広告をする画面上に、第1号及び第2号に定める事項が記載されていることが容易に判断できる表現(「特定商取引法に基づく表記」、「会社概要」等)によりリンクや画面切り替えのためのタブが用意されている場合は、「冒頭部分から容易に記載箇所への到達が可能となるような方法」に該当する。

出典:消費者庁「特定商取引法の逐条解説」第11条 解説

「特定商取引法に基づく表記」も「会社概要」も、例として並べて挙げられているだけです。

大事なのは名前ではなく、広告の冒頭から簡単にたどり着けることのほうです。フッターの小さいリンク1本でも、そこから到達できていれば要件は満たします。逆に、商品ページのどこからもリンクが無いと、ページを作ってあっても届きません。

書く項目の一覧

表示すべき事項は、特定商取引法第11条と、同法施行規則第23条の2か所に分かれています。片方だけ見ると抜けます。

法律の側には「買う人が注文を決める前に知っておくべき条件」が並び、規則の側には「誰が売っているのか」と「価格以外に何が起きるのか」が並ぶ、という分かれ方をしています。

抜けが起きやすいのは規則の側です。カートのテンプレートに欄そのものが用意されていない項目があるためで、欄が無いと気づきようがありません。一度、下の一覧と自分のページを突き合わせてください。

法律(第11条)で決められているもの

こちらは5つです。いくらで、いつ払って、いつ届いて、期限はあるのか、気に入らなかったらどうなるのか。注文ボタンを押す判断に直接関わるものだけが並んでいます。

この5つは、どのショップでも必ず該当します。送料を別に取るなら送料も価格の一部として書きますし、引渡時期は「ご入金確認後○営業日以内」のような形で構いません。空欄にできるものはありません。

  • 商品・権利の販売価格、または役務の対価(送料が別なら送料も)
  • 代金の支払時期と支払方法
  • 商品の引渡時期、権利の移転時期、役務の提供時期
  • 申込みの期間に定めがあるときは、その旨と内容
  • 申込みの撤回・解除に関する事項(返品のこと)

施行規則(第23条)で追加されるもの

こちらは項目数が多く見えますが、自分に関係するものだけ書けば足ります。ソフトウェアを扱わないなら動作環境は要りませんし、定期購入をしないならその欄も空きます。

ただし氏名・住所・電話番号だけは、全員に関係します。 ここは次の節で詳しく扱います。

  • 販売業者の氏名または名称、住所、電話番号
  • 法人が電子的方法で広告する場合は、代表者または通信販売業務の責任者の氏名
  • 送料以外に購入者が負担すべき金銭があるときは、その内容と額
  • 契約不適合責任を負わない場合は、その旨
  • ソフトウェアを扱うなら、その動作環境
  • 定期購入(2回以上の継続契約)なら、その旨・金額・契約期間など
  • 販売数量の制限などの特別な条件
  • 電子メール広告をするなら、メールアドレス

個人事業者がつまずくところ

氏名です。逐条解説では、個人事業者は戸籍上の氏名、または商業登記簿上の商号と書かれています。屋号やサイト名では足りません。

電話番号も「確実に連絡が取れる番号」とされています。つながらない番号を書くと、後で出てくる第12条の6の違反にも触れます。

住所と電話番号は、条件付きで省略できる

ここがいちばん知られていないところです。自宅の住所と電話番号を広告に出さずに済む方法が、条文に用意されています。

個人でネットショップをやる場合、事務所を借りていなければ住所は自宅になります。電話番号も個人の携帯です。それを不特定多数に公開することになるので、ここで手が止まる人は多い。

ネット上の解説では「必須なので書くしかない」と説明されていることがあります。ただ、条文を最後まで読むと続きがあります。第11条には、ただし書があります。

ただし、当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、販売業者又は役務提供事業者は、主務省令で定めるところにより、これらの事項の一部を表示しないことができる。

出典:特定商取引に関する法律 第11条ただし書(e-Gov法令検索)

そして施行規則第25条で、省略できる対象に氏名・住所・電話番号(規則第23条第1号)が含まれています。

省略には3つの条件がそろう必要がある

ここを読み飛ばすと、「省略できる」という部分だけが頭に残ります。実際には、省略は「書かなくていい」ではなく「別の形で出す」という約束と引き換えになっています。

3つのうちどれが欠けても、条件を満たしません。とくに2つ目の体制は、用意したつもりでも機能していないことがあるので注意します。

① 広告に、その旨を表示する

「請求があれば、遅滞なく書面または電磁的記録を提供します」と書いておきます。これが無ければ省略そのものができません

② 実際に出せる体制を用意する

請求されたら遅滞なく提供できること。インターネットの場合の目安は、購入者が申込みを決める前に十分な余裕をもって届くことです

③ 提供する書面には全部を書く

省略した事項の一部ではなく、全てを記載します

つまり「どこにも書かなくていい」わけではありません。 広告の面では伏せておき、聞かれたら出す。その約束を先に掲げておく仕組みです。問い合わせを受ける窓口を用意しないまま伏せると、条件を満たしません。

省略できないものが2つある

省略の話には、もうひとつ知っておくべき制限があります。すべての項目が省略できるわけではない、ということです。

規則第25条は、次の2つを明文で除いています。

  • 返品に関する事項(撤回・解除の可否、期間・条件、引取りや返還の費用負担)
  • 申込みの有効期限

この2つは、価格を全部表示する場合でも、しない場合でも省略できません。住所を伏せるなら、返品条件は必ず出す。 この組み合わせになります。

返品のことを書かないと、8日間返せる

ここが、空欄のまま公開するといちばん不利になる項目です。

他の項目は、書き忘れても「書き足せば済む」ものでした。返品だけは違います。書いていない状態そのものに、法律側の効果が発生します。

しかも、その効果は自分に不利な方向に働きます。どういうことか、第15条の3を読みます。

通信販売をする場合の商品又は特定権利の販売条件について広告をした販売業者が(中略)その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転を受けた日から起算して8日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(中略)を行うことができる。ただし、当該販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合(中略)には、この限りでない。

出典:特定商取引に関する法律 第15条の3第1項(強調は筆者)

つまり返品の特約を表示していなければ、引渡日から8日間は購入者が返せます。 特約を書いて初めて、その内容が優先されます。

返品の送料については、第2項に定めがあります。

申込みの撤回等があつた場合(中略)その引取り又は返還に要する費用は、購入者の負担とする。

出典:特定商取引に関する法律 第15条の3第2項

ネット通販は、広告に書くだけでは足りない

条文のただし書には、かっこ書きが入っています。電子消費者契約に該当する場合は「当該広告に表示し、かつ、広告に表示する方法以外の方法であつて主務省令で定める方法により表示していた場合」となっています。

その方法を定めているのが施行規則第44条で、最終確認画面の見やすい箇所に明瞭に表示することが求められます。

ネット通販で返品特約を有効にするには

表記ページに書く(第11条の広告表示)

最終確認画面にも書く(規則第44条)。両方そろって初めて特約が働きます

表記ページにだけ書いて安心しているケースが多いところです。カートによっては最終確認画面に文言を差し込む設定があるので、開店前に自分で購入手順を最後まで進めて確かめます。

なお、微小な文字で読めないように書くと、規則第24条第3号(広告の表示基準)に触れ、特約として認められない可能性があります。小さく載せて済ませる項目ではありません。

役務だけを売るなら、この条文は関係ない

第15条の3は「商品又は特定権利」の売買契約が対象です。役務、つまりサービスだけを売る場合には適用されません。 返品が観念できないためです。

オンライン講座やコンサルティングだけを売っているなら、この8日間の法定返品権そのものが生じません。ただし、物を1点でも扱うなら対象になります。

サービスと物を両方売っている場合は、物のほうに返品条件が必要だと考えてください。どちらも扱う予定があるなら、最初から書いておくほうが手間がありません。

表記ページだけでは足りない。最終確認画面がある

2022年6月から、もう1つ義務が加わりました。第12条の6です。

背景にあるのは定期購入をめぐるトラブルです。お試し価格で申し込んだつもりが継続契約だった、という相談が増えたことを受けて、申込みの直前の画面に条件を出すことが義務になりました。

定期購入をしていないショップにも関係します。条文は定期購入に限定しておらず、通信販売の申込み画面全般が対象だからです。

対象は「最終確認画面」、つまり申込みボタンを押せば注文が確定する画面です。一般に「注文内容の確認」と呼ばれる画面がこれに当たります。

表示すべきもの

表記ページに書く項目と重なりますが、同じではありません。分量が加わり、施行規則で追加される項目(氏名・住所など)はここには含まれていません。

つまり表記ページの内容をそのまま貼れば済む、という関係にはなっていないということです。

  • 分量
  • 第11条第1号から第5号の事項(価格・支払時期と方法・引渡時期・申込期間の定め・返品に関する事項)

逐条解説とガイドラインで押さえておきたいのは、広告での表示では第12条の6の義務を果たしたことにならないという点です。広告と最終確認画面は別の概念として扱われています。

罰則が重い

表示しない、または不実の表示(第1項違反)

第70条第2号:3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、または併科

人を誤認させる表示(第2項違反)

第72条第1項第4号:100万円以下の罰金

さらに第15条の4で、誤認して申し込んだ消費者は意思表示を取り消せます。 指示(第14条)や業務停止命令(第15条)の対象にもなります。

第11条の違反そのものに罰則が無いのとは、扱いが違います。お金と刑罰が直接かかるのは、表記ページよりも最終確認画面のほうです。

定期購入で気をつけること

ガイドラインでは、定期購入契約について各回の分量・価格・総額・自動更新の有無を明確に表示するよう求めています。

「お試し」「いつでも解約可能」と強調しながら、実際には条件が付いている場合は誤認表示に当たるおそれがあります。解約方法を不自然に制限する場合や、つながらない電話番号を載せる場合も同じです。

通信販売にクーリング・オフは無い

よく混同されるところです。消費者庁の説明を引きます。

通信販売には、訪問販売や電話勧誘販売のように無条件解約(クーリング・オフ)制度はありません。

出典:消費者庁「特定商取引法ガイド」事例紹介

代わりにあるのが、さきほどの第15条の3の法定返品権です。名前は似ていますが、中身が違います。

送料を誰が払うか

クーリング・オフは事業者負担が原則。法定返品権は購入者負担(第15条の3第2項)

特約で外せるか

クーリング・オフは強行規定で外せない。法定返品権は特約の表示で外せる

何が対象か

法定返品権は商品と特定権利のみ。役務は対象外

お客さんから「クーリング・オフで返品したい」と言われることがあります。通信販売にその制度は無く、適用されるのは返品特約か、それが無ければ8日間の法定返品権です。返品特約を書いておくかどうかで、対応が変わります。

この記事で確認した条文のまとめ

どこに何が書いてあるかを並べておきます。カートの入力欄を埋めるときは、この順で確認します。

並べると分かるのですが、この分野は「本則を読んだだけでは判断できない」作りになっています。省略できるかどうかは施行規則を見ないと分かりませんし、返品特約が有効になる条件も施行規則にあります。

ネット上の解説が食い違うのは、たいてい片方しか見ていないことが原因です。条文番号まで示してある説明を選んでください。

特定商取引法 第11条+施行規則第23条

表記ページに書く項目。法律と規則の2か所に分かれているので、片方だけ見ると抜けます

第11条ただし書+施行規則第25条

氏名・住所・電話番号の省略。3つの条件つき。返品事項と申込みの有効期限は省略できません

第15条の3+施行規則第44条

返品特約。書かなければ引渡日から8日間。ネット通販は表記ページと最終確認画面の両方に表示が要ります

第12条の6

最終確認画面の表示義務。違反は第70条第2号で3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金。誤認表示は第72条で100万円以下の罰金、第15条の4で取消し

ページの名前

法定ではありません。逐条解説が「会社概要」等と並べて挙げた例です。大事なのは冒頭から到達できること

※消費者庁の資料とe-Gov法令検索の条文を確認したものです。法令は改正されます。

よくある質問

自宅の住所を出さずにネットショップを開けますか

第11条ただし書と施行規則第25条により、条件を満たせば広告への表示を省略できます。条件は3つで、請求があれば遅滞なく提供する旨を広告に表示すること、実際に遅滞なく出せる体制を持つこと、提供する書面に省略した事項の全てを記載することです。伏せて終わりではなく、聞かれたら出す約束を掲げる仕組みだと理解してください。なお、返品に関する事項と申込みの有効期限は、この省略の対象から外れています。

返品は一切受け付けない、と書けますか

第15条の3は、特約を表示していればその内容が優先される構造になっています。ただしネット通販では、表記ページと最終確認画面の両方に表示していなければ特約が働きません。また、微小な文字で書くなど実質的に読めない表示は、規則第24条第3号の表示基準に触れます。書き方によって、特約として認められるかどうかが変わります。

お客様からクーリング・オフを求められました

消費者庁は「通信販売には、訪問販売や電話勧誘販売のように無条件解約(クーリング・オフ)制度はありません」と説明しています。適用されるのは自分が表示した返品特約で、特約が無ければ引渡日から8日間の法定返品権です。この場合の返送費用は購入者の負担と条文に定められています。

表記ページを作れば、最終確認画面は不要ですか

別の義務です。広告での表示は第12条の6の義務を果たしたことになりません。そして罰則は最終確認画面のほうが重く、第70条第2号で3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が定められています。開店前に、自分で購入手順を最後まで進めて、確認画面に価格・支払時期・引渡時期・返品の条件が出ているかを見てください。

ページの名前は「特定商取引法に基づく表記」でなければいけませんか

法律に名称の定めはありません。逐条解説では「特定商取引法に基づく表記」「会社概要」等が例として並べられています。求められているのは、広告の冒頭部分から容易に記載箇所へ到達できることです。名前を変えるより、どの商品ページからもリンクが通っているかを確認するほうが意味があります。

自分の店で、最後まで買ってみる

表記ページは目で見れば確認できますが、最終確認画面は実際に進まないと見えません。開店前に一度、自分で注文の直前まで進めて、価格・支払時期・引渡時期・返品条件が出ているかを確かめてください。

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