
ネットショップを開いて、しばらく経っても注文が入らない。このとき最初にやってしまいがちなのが、SNSを始める、広告を出す、商品を増やすといった「足す」対応です。
ただ、どこで落ちているかを知らないまま足すと、効かない場所にお金と時間を使うことになります。商品ページまで誰も来ていないのに写真を撮り直しても、数字は動きません。
この記事では、GoogleのSearch ConsoleとGA4を使って、流入・回遊・購入のどこで止まっているかを切り分ける手順を書きます。指標の意味は、すべてGoogleの公式ヘルプの定義文から引きます。
「人が来ない」は3つに分かれる
同じ「人が来ない」でも、実際には別の問題が3つ混ざっています。
この3つは、症状が似ています。どれも「注文が入らない」という形で現れるからです。でも原因も、見る場所も、直す場所も違います。
第1段:検索結果に出ていない
ページがインデックスに登録されていない、または登録されていても上位に出ていない。見る場所はSearch Console
第2段:出ているが、クリックされない
表示回数はあるのにクリックが少ない。タイトルと説明文の問題。見る場所はSearch Console
第3段:来ているが、買われない
訪問はあるのに、カートや購入まで進まない。見る場所はGA4
大事なのは上から順番に見ることです。第1段で止まっているなら、商品ページを直しても意味がありません。逆に第3段で止まっているなら、SNSで人を増やしても穴の空いたバケツに水を足すことになります。
第1段:そもそも検索結果に出ているか
最初に確かめるのは、自分のページがGoogleに登録されているかどうかです。登録されていなければ、どれだけ良い商品ページを作っても検索から人は来ません。
ここを飛ばす人が多いのは、開店した時点でネット上に存在していると感じるからです。URLを打てば表示されるので、公開されている気がする。
ただ、検索エンジンに登録されるのは別の工程です。公開することと、検索結果に出ることは、同じではありません。 開店して数日なら、まだ登録されていないほうが普通です。
「ページのインデックス登録」レポートを見る
Search Consoleには、登録状況を出すレポートがあります。公式ヘルプの定義は次のとおりです。
登録済み:これらのURLは正常にインデックスに登録されました
未登録:インデックス登録エラーのため、または正当な理由により、URLがインデックスに登録されていません出典:Google「ページのインデックス登録レポート」公式ヘルプ
「未登録」には理由が付きます。公式が定義している区分のうち、開店直後によく出るのが次の2つです。
検出 – インデックス未登録
公式の定義:ページはGoogleによって検出されましたが、まだクロールされていません
読み方:存在は知られている。まだ中身を読みに来ていない段階です
クロール済み – インデックス未登録
公式の定義:ページはGoogleによってクロールされましたが、インデックスに登録されていません
読み方:中身は読まれている。読んだうえで登録されていない状態です
この2つは意味が違います。前者は待ちの問題、後者は中身の問題に寄ります。同じ「未登録」でも次の手が変わるので、理由まで見ます。
もうひとつ、よく出るのが「代替ページ(適切なcanonicalタグあり)」です。公式の定義はこうです。
このページは正規ページを正しく指しており、その正規ページはインデックスに登録されています。そのため、対応は不要です。
出典:Google「ページのインデックス登録レポート」公式ヘルプ
これは直す必要がありません。 色違いやサイズ違いのURLが別々に生成されるカートでは、大量に出ます。未登録の件数が多くて焦るときは、内訳のどれが占めているかを先に見ます。
URL検査ツールで1ページずつ確かめる
特定のページが登録されているかは、URL検査ツールで確認できます。「インデックス登録をリクエスト」もここから出せます。
ただし、公式ヘルプには注意書きがあります。
インデックス登録リクエストの提出は、ページがGoogleインデックスに表示されることを保証しません。
毎日のリクエスト数に制限があります。複数ページをインデックス登録する場合はサイトマップの提出が最適です。出典:Google「URL検査ツール」公式ヘルプ
インデックス登録には1〜2週間かかる場合がある、とも書かれています。何度もリクエストを押しても早くなりません。 商品を10点登録したなら、1点ずつリクエストするのではなく、サイトマップを出します。
第2段:出ているのに、クリックされていないか
インデックスに登録されているなら、次は検索結果でどう扱われているかを見ます。Search Consoleの「検索パフォーマンス」レポートです。
この画面には数字が4つ並んでいます。どれも名前から意味が想像できるように見えるのですが、1つだけ、想像と違う計算をしているものがあります。
そこを誤解したまま判断すると、直す場所を間違えます。まず4つの定義を確かめてから、その1つを詳しく見ます。
4つの指標の意味
公式ヘルプの定義は、次のとおりです。ここでは、開店直後にどう読むかも合わせて書いておきます。
4つのうち最初の2つは実数、あとの2つは計算値です。実数のほうを先に見てください。 計算値は、分母が小さいうちは大きく振れるので、判断材料になりません。
合計表示回数
サイトが検索結果に表示された回数。ここが0に近いなら、第1段に戻ります
合計クリック数
検索結果からサイトがクリックされた回数
平均CTR
クリック数を表示回数で割ったもの。表示はあるのにここが低いなら、タイトルと説明文の問題です
「平均掲載順位」は、思っている意味と違う
ここは誤解が多いところです。公式の説明を引きます。
検索パフォーマンスレポートに表示される掲載順位の値は、検索結果においてあなたのプロパティまたはページへのリンクが占めた最上位の掲載順位であり、それをプロパティが表示されたすべてのクエリにわたって平均したものです。
出典:Google「表示回数、掲載順位、クリック数とは」公式ヘルプ(強調は筆者)
公式に載っている例で確かめます。
計算のされ方
クエリAで自サイトが2位・4位・6位に出た → 2位としてカウント
クエリBで自サイトが3位・5位・9位に出た → 3位としてカウント
平均掲載順位 = (2 + 3) ÷ 2 = 2.5
つまりこの数字は、「自分が出たクエリの中での、最上位の位置の平均」です。まだ誰も検索していないニッチな言葉で1位に出ていれば、平均掲載順位は良く見えます。数字が良いのに人が来ないのは、たいていこれです。
だから、平均掲載順位だけを見て判断しません。表示回数とセットで見ます。 表示回数が少ないまま順位だけ良いのは、そもそも検索されていない言葉で戦っている状態です。
データは16か月で消える
数字を見る習慣が付いてくると、去年と比べたくなります。季節商品を扱っているなら、なおさらです。
ところが、この画面には保持期間の制限があります。公式にはこう書かれています。
Search Consoleは過去16か月分のデータを保持します。
出典:Google「Search ConsoleをGoogleアナリティクスに接続する」公式ヘルプ
去年の同じ時期と比べたいなら、16か月を超える前に控えを取っておきます。1年以上前の数字は、あとから遡れません。
第3段:来ているのに、買われていないか
クリックされて訪問があるのに注文が入らないなら、サイトの中で止まっています。ここからはGA4を見ます。
この段階は、直せる場所が多いぶん迷いやすいところです。写真、説明文、価格、送料、決済手段、入力項目。どれも原因になり得ます。
だから、どこで人が減っているかを先に特定します。 そこを飛ばして片端から直すと、効いたものが分からないまま時間が過ぎます。
GA4の「直帰率」は、昔と定義が違う
まず、指標の意味を合わせておきます。GA4には「エンゲージメントのあったセッション」という考え方があり、次のいずれかを満たすセッションが該当します。
- 10秒より長く続いた
- キーイベントが発生した
- ページビューまたはスクリーンビューが2回以上あった
そして直帰率の定義がこれです。
直帰率(GA4):エンゲージメントのなかったセッションの割合
直帰率(旧ユニバーサルアナリティクス):ページとのインタラクションがなかった、1ページのみのセッションの割合出典:Google「[GA4] エンゲージメント率と直帰率」公式ヘルプ
同じ名前ですが、別の計算です。 古い記事に書かれている「直帰率の目安」をGA4の画面に当てはめると、判断を誤ります。
GA4では、1ページしか見ていなくても10秒以上滞在していれば直帰になりません。「読まれてはいるが次に進んでいない」状態が、直帰率には出てこないということです。
買われない場所は、イベントで特定する
どこで止まっているかを見るには、購入までの段階をイベントで追います。GA4のeコマースで用意されている標準イベントのうち、最低限そろえたいのが4つです。
view_item
商品ページが見られた
add_to_cart
カートに入れられた。必須パラメータは items
begin_checkout
購入手続きに進んだ。必須パラメータは items
purchase
購入された。必須パラメータは transaction_id と items
この4つの件数を並べると、どこで減っているかが分かります。
- view_itemが少ない → 商品ページまで来ていない。第1段・第2段に戻ります
- view_itemはあるがadd_to_cartが少ない → 商品ページで止まっている。写真・説明・価格
- add_to_cartはあるがbegin_checkoutが少ない → カートで止まっている。送料が見えた瞬間かもしれません
- begin_checkoutはあるがpurchaseが少ない → 手続きで止まっている。入力項目・決済手段・会員登録の必須化
ここまで分けて、はじめて「何を直すか」が決まります。 カートで落ちているのに商品写真を撮り直しても、数字は動きません。
Search ConsoleとGA4をつないでおく
2つをつなぐと、検索クエリと、そのあとの行動を並べて見られるようになります。公式の説明です。
どの検索語句がクリックにつながり、そのクリックがどのようなユーザー行動に変わるかを確認できます。
出典:Google「Search ConsoleをGoogleアナリティクスに接続する」公式ヘルプ
ひとつ知っておきたいのが反映の遅さです。公式には「Search Consoleのデータは、Search Consoleが収集してから48時間後にAnalyticsで利用可能になる」と書かれています。昨日の数字は、まだ出ていません。 今日直した施策の結果を今日見ようとしないことです。
「平均◯%」を探しに行かない
数字を見始めると、必ず「この数字は良いのか悪いのか」が気になります。そこで業種別の平均値を探しに行くことになるのですが、ここは止まったほうがいいところです。
この記事でも、指標の定義は書きましたが「目安」は一度も書いていません。Googleの公式ドキュメントが目安の数値を出していないからです。
理由は3つあります。
① 定義が揃っていない
直帰率のように、同じ名前で計算方法が変わっている指標があります。出典の数字がどちらの定義かは、たいてい書かれていません
② 商材で前提が違う
単価1,000円の消耗品と、5万円の家具では、検討にかかる時間も訪問回数も違います
③ 平均を知っても、次の手が決まらない
平均より低いと分かっても、どこを直すかは分かりません。段ごとの件数を並べるほうが早く決まります
見るべきは自分の店の前月比です。何かを変えた月に、どの段の件数が動いたか。これなら定義のずれも商材の違いも関係ありません。
よくある失敗と、その直し方
ここまでの内容を、実際に起きる形に置き換えておきます。
どれも、数字を見ようとした人が最初にぶつかるところです。ツールを開いたのに判断できない、という状態はここから生まれます。
並べてみると分かるのですが、失敗のほとんどが「見る順番を飛ばした」か「指標の定義を確かめなかった」のどちらかから来ています。ツールの使い方の問題ではありません。
よくある5つを挙げます。
アクセスが無いのに商品ページを直し続けた
原因:第1段を確認せずに第3段の対策をしている
直し方:Search Consoleの表示回数を先に見ます。0に近ければ、直す場所はそこではありません
平均掲載順位が良いのに注文が無い
原因:検索されていない言葉で上位に出ている。順位は「自分が出たクエリの中での平均」です
直し方:表示回数とセットで見ます。表示回数が伸びる言葉を探すほうが先です
インデックス登録を何度もリクエストした
原因:リクエストすれば早く載ると思っている。公式は登録を保証しないと書いています
直し方:1〜2週間待ちます。複数ページならサイトマップを出すほうが確実です
「未登録」の件数だけ見て慌てた
原因:内訳を見ていない。「代替ページ(適切なcanonicalタグあり)」は対応不要と公式に書かれています
直し方:理由別の内訳を開いて、何が占めているかを先に確認します
施策の結果を当日に見ようとした
原因:Search Consoleのデータは収集から48時間後にAnalyticsへ反映されます
直し方:週単位で見ます。日次で一喜一憂しても、判断材料になりません
この記事で使った指標の定義まとめ
すべてGoogle公式ヘルプの定義です。数字を見るときは、ここに戻って意味を確かめます。
アクセス解析の話がややこしくなるのは、同じ名前の指標が、ツールや時期によって別の計算をしているからです。直帰率がその代表で、旧アナリティクスとGA4で中身が違います。
だから、数字の良し悪しを判断する前に、その数字が何を数えたものかを確かめる。遠回りに見えますが、ここを飛ばすと間違った施策に時間を使うことになります。
Search Console|検索パフォーマンス
表示回数:サイトが検索結果に表示された回数/クリック数:検索結果からクリックされた回数
CTR:クリック数 ÷ 表示回数
平均掲載順位:自サイトが占めた最上位の順位を、表示されたすべてのクエリで平均したもの
Search Console|ページのインデックス登録
検出 – インデックス未登録:検出されたが、まだクロールされていない
クロール済み – インデックス未登録:クロールされたが、登録されていない
代替ページ(適切なcanonicalタグあり):対応不要
GA4|エンゲージメントと直帰率
エンゲージメントのあったセッション:10秒より長く続いた/キーイベントが発生した/ページビューが2回以上、のいずれか
直帰率:エンゲージメントのなかったセッションの割合(旧UAとは別の計算)
GA4|eコマースイベント
view_item → add_to_cart → begin_checkout → purchase の4つを並べて、どこで減るかを見ます。purchase の必須パラメータは transaction_id と items
データの時間差と保持期間
Search Consoleのデータは、収集から48時間後にAnalyticsで利用可能になります
Search Consoleは過去16か月分を保持します。それ以前は遡れません
※定義はGoogleの公式ヘルプを確認したものです。仕様は変わります。
よくある質問
開店したばかりで、Search Consoleに何も表示されません
まず「ページのインデックス登録」レポートを開いて、登録済みが0件かどうかを見ます。0件なら、そもそも検索結果に出ていないので表示回数も付きません。公式ヘルプはインデックス登録に1〜2週間かかる場合があると書いています。複数ページあるなら、URL検査から1点ずつリクエストするより、サイトマップを出すほうが確実です。
平均掲載順位が3位なのに、クリックが1桁です
この指標は「自分が表示されたクエリの中での、最上位の順位の平均」です。ほとんど検索されていない言葉で上位に出ていれば、順位は良く見えます。表示回数を同時に見てください。表示回数が少ないまま順位が良いなら、戦っている言葉を変えるほうが先です。
直帰率の目安はどれくらいですか
GA4の直帰率は「エンゲージメントのなかったセッションの割合」で、旧ユニバーサルアナリティクスの「1ページのみで操作がなかったセッションの割合」とは別の計算です。古い記事の目安をそのまま当てはめると判断を誤ります。他店との比較より、同じ画面で自分の店の前月比を見るほうが確実です。
「未登録」が何百件も出ています
件数ではなく、理由別の内訳を開いてください。「代替ページ(適切なcanonicalタグあり)」は、公式に「対応は不要です」と書かれています。色違い・サイズ違いでURLが増えるカートでは、ここが大量に出ます。見るべきは「クロール済み – インデックス未登録」のほうです。
GA4のeコマースイベントを設定していません
カートによっては、GA4の測定IDを入れるだけで標準イベントが送られる設定が用意されています。まず管理画面で連携設定を探してください。自分で実装する場合も、最初から全部そろえる必要はありません。view_item・add_to_cart・begin_checkout・purchaseの4つがあれば、どこで落ちているかは切り分けられます。
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まず、表示回数だけを見る
何かを足す前に、Search Consoleの検索パフォーマンスを開いて、表示回数が付いているかを確認してください。ここが0に近いなら、直す場所は商品ページではありません。