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ネットショップの在庫管理|二重販売が起きる仕組みと、カートで違う在庫の減り方

棚に並んだ在庫をノートに書き出して数えているところ

在庫管理の話は、商品が増えてから考えればいい、と思われがちです。実際、扱う商品が数点のうちは頭の中で足ります。

ただ、最初に1回だけ確かめておくべきことがあります。自分のカートで、在庫がいつ減るのかです。ここを知らないと、在庫0なのに注文が入る、いわゆる二重販売の原因が分かりません。

この記事では、各カートの公式ヘルプに書かれている在庫の仕様と、国税庁が定めている棚卸のルールを確かめます。公式に書かれていない部分は「書かれていない」と書きます。 そこが実は重要なところだからです。

二重販売は、カートの不具合ではない

在庫を1点にしていたのに、2件の注文が入った。この状況に出くわすと、カートの不具合を疑いたくなります。

ただ、多くの場合これは仕様どおりの動きです。理由はカートに入れた時点では在庫が確保されないことにあります。

STORESの公式ヘルプが、この点をはっきり書いています。

カートに商品を入れただけでは、在庫は確保されません。在庫が確保されるのは、決済ページで[注文する]ボタンをクリックして注文が完了した時点です

出典:STORES 公式ヘルプ

同じヘルプには、その結果として何が起きるかも書かれています。

カートに入れている間に他の購入者が先に決済を完了すると、在庫数によっては商品が売り切れ(SOLD OUT)表示になることがあります

出典:同ヘルプ

つまりカートに入れた順ではなく、決済を終えた順です。先にカートへ入れた人が負けることがあります。

なぜこういう仕様なのか

もしカートに入れた時点で在庫を確保する仕様にすると、別の問題が出ます。買う気のない人が商品をカートに入れたまま放置するだけで、在庫が売れない状態になってしまうからです。

確保する時間に制限を付ける手もありますが、今度は購入手続きの途中で時間切れになる人が出ます。どちらにも不便があるため、注文完了まで確保しない設計が選ばれていると考えられます。

ここは直せる部分ではありません。そのうえで何ができるかを考えることになります。

在庫が減るタイミングは、カートで違う

ここが、最初に確かめておくべきところです。在庫数が減るタイミングは、カートによって書かれていることが違います。

なぜこれを知る必要があるかというと、注文が入ってから入金されるまでに時間が空く決済方法があるからです。銀行振込やコンビニ払いですね。この間に在庫が減っているのか、減っていないのかで、二重販売の起きやすさが変わります。

今回、各社の公式ヘルプを確認しました。結果は次のとおりです。到達できなかったものは、そう書きます。

カラーミーショップ

公式マニュアルに明記があります。「『在庫管理する』を選択した場合:受注すると在庫数が減り、0になると商品を購入することができなくなります」

受注時に減る、と書かれています

STORES

在庫が確保されるのは「[注文する]ボタンをクリックして注文が完了した時点」。注文完了時に確保されます

Shopify・BASE

在庫0のときの挙動は公式に記載がありますが、減算がいつ行われるかの明記は見つけられませんでした

楽天市場・Amazon

出店者向けの管理画面ヘルプはログインが必要で、本文に到達できませんでした。出店している場合は管理画面内のヘルプで確認してください

「書かれていない」ことが分かるのも収穫です

公式に明記が無いなら、推測で運用を組まないほうがいい、という判断ができます。代わりに、自分のショップで実際に試して確かめる。 手順は後で書きます。

とくに注意したいのが、決済方法によって挙動が変わる可能性です。クレジットカード決済と銀行振込では、注文成立から入金までの時間が違います。ここが在庫の扱いに影響するかどうかは、カートごとに確認が要ります。

在庫0のときにどうなるか

在庫が0になったあとの表示も、カートごとに書かれ方が違います。こちらは公式の記載を見つけやすい部分でした。

BASEの公式ヘルプはこうです。

該当の商品の在庫数を「0(ゼロ)」にすると、SOLD OUTと表示され(中略)商品が購入されて在庫数が「0(ゼロ)」になりますと、SOLD OUTと表示されます

出典:BASE 公式ヘルプ

同ヘルプには、バリエーションがある商品についての記載もあります。「種類が複数ある商品の場合、全ての種類の在庫数が『0(ゼロ)』になりますと、SOLD OUTと表示されます」。つまり1色だけ売り切れても、商品全体は売り切れ表示になりません。

在庫0でも売り続ける設定

Shopifyには、在庫が0でも販売を続ける設定があります。公式ヘルプから引きます。

An item is out of stock when inventory is tracked and the inventory level is at zero or below.

(在庫が追跡されていて在庫数が0以下のとき、その商品は在庫切れになります)

出典:Shopify 公式ヘルプ

そのうえで、商品またはバリエーションの在庫セクションで「Continue selling when out of stock」を選ぶと、在庫0でも購入できるようになります。公式が想定している用途として、予約販売の商品を扱う場合と入荷予定がある場合が挙げられています。

ただし注意書きもあって、この設定はShopify POSからの注文には適用されないとされています。実店舗を併用している場合は、挙動が変わります。

「在庫を追跡しない」という選択

カラーミーショップには、在庫管理そのものをしない設定があります。

「在庫管理しない」を選択した場合:在庫数は表示されず、売り切れにもなりません

出典:カラーミーショップ 公式マニュアル

受注生産や、仕入れがいつでもできる商品を扱う場合に使えます。在庫管理を「しない」と決めるのも、立派な在庫管理です。 数字を持たなくていい商品まで数えようとすると、続きません。

ただし、この設定にすると売り切れ表示も出なくなります。供給が追いつかない商品に使うと、作れない数の注文が入る。商品ごとに決めるものだと考えてください。

自分のカートで確かめる手順

公式に書かれていない部分は、試すのが早いです。開店前なら本番の商品で試せますし、開店後でもテスト用の商品を作れば確かめられます。

確かめることは3つです。全部で15分ほどで終わります。

① 在庫が減る瞬間を見る

在庫1のテスト商品を作り、自分で注文します。注文直後に管理画面を開いて、在庫が0になっているかを見ます

銀行振込を使っているなら、入金前の段階でも確認します

② 0になったあとの見え方を確かめる

ログアウトした状態で商品ページを開きます。売り切れと表示されるか、ページ自体が消えるか

サイズ違いがあるなら、1つだけ0にして全体がどう見えるかも確認します

③ キャンセルしたときに戻るか

その注文をキャンセルして、在庫が1に戻るかを見ます

戻らないカートもあります。戻らないなら、キャンセル対応のたびに手で戻す作業が発生します

この3つを1回確かめておくと、あとで注文が増えたときに慌てません。とくに③は、知らないまま運用すると在庫が合わなくなる原因になります。

複数の場所で売ると、ずれが増える

自社のカートに加えて、モールにも出す。あるいは実店舗やイベントでも売る。売る場所が増えると、在庫のずれが起きやすくなります。

理由は単純で、それぞれの場所が別々に在庫数を持っているからです。片方で売れても、もう片方の数字は変わりません。

STORESの公式ヘルプは、ネットショップと実店舗の関係についてこう案内しています。

STORESネットショップとSTORESレジを併用する場合、初期状態ではネットショップと実店舗の在庫は連動しない

出典:STORES 公式ヘルプ

同社の場合、スタンダードプランの契約店舗は「共通在庫」で連動できるとされています。それ以外は個別管理で、各チャネルの在庫数をそれぞれ入力することになります。

自社カートとモールの連携については

Shopify・BASE・カラーミーショップの公式ヘルプに、自社カートとモールの在庫を連携させる仕様の記載は見つけられませんでした。

カートの管理画面には在庫連携ツールの案内が出ていることがありますが、確認した範囲ではそれらは他社が提供するアプリの紹介で、カート自身の仕様ではありませんでした。楽天のRMS側の在庫連携APIの仕様も、今回は確認できていません。

つまりこの部分は、公式の情報だけでは判断できない領域です。導入を検討するなら、提供元に直接問い合わせるところから始まります。

最初は1か所に絞るほうが安全です

売る場所を増やすと売上の機会は増えますが、在庫を合わせる手間も増えます。そして在庫がずれると、二重販売とキャンセルが発生します。

キャンセルは、送料や手間の損失だけでは終わりません。買えると思っていた人に断りを入れることになるので、評価にも響きます。

扱う点数が少ないうちは、1か所に絞る。連携の仕組みを用意できてから増やす。この順番のほうが、結果的に早く進みます。

年末にやることが決まっている

ここまではカートの話でした。最後に、税務の側から決まっていることを確認します。在庫は棚卸資産として、確定申告に関わってきます。

ここを知らないと、年末に慌てます。しかもカートの設定とは関係なく、全員に当てはまる部分です。

いちばん大きいのは、売れ残った在庫がその年の経費にならないことです。仕入れた金額のうち、売れた分だけが原価になります。だから年末に数を確定させる必要があります。

棚卸は12月31日

国税庁の「青色申告の決算の手引き」に、時期が書かれています。

12月31日にしなければなりません。(中略)多忙のため年末に棚卸しができないような場合には、年末から多少前後した日に棚卸しをしても差し支えありません

出典:国税庁「令和6年分 青色申告の決算の手引き(一般用)」

原則は実地棚卸、つまり実際に数えることです。ただし同じ手引きに、省略できる条件も書かれています。

商品出入帳などを設けて毎日の在庫量を明らかにし、毎年一定の時期に実地に棚卸しをして、その正否を確かめている場合は(中略)実地棚卸しを省略することができます

出典:同手引き

日々の記録を付けていれば、年末に全部数え直さなくてよい。これは、普段から在庫を記録する動機になります。

評価方法を届け出ていない場合

在庫をいくらで評価するかにも決まりがあります。国税庁の手続案内にはこうあります。

届出により選択をしなかった場合は、最終仕入原価法が適用されます。

出典:国税庁「A1-17 棚卸資産の評価方法の届出手続」

最終仕入原価法は、その年の最後に仕入れたときの単価で在庫全体を評価する方法です。何も届け出ていなければ、これが自動的に適用されます。

決算の手引きには、届け出れば先入先出法や総平均法、売価還元法、低価法なども選べると例示されています。ただし、届出をしない限り最終仕入原価法です。計算が単純なので、扱う点数が少ないうちは問題になりにくい方法でもあります。

残す帳簿と、保存する期間

青色申告をするなら、帳簿の種類も決まっています。国税庁のパンフレットから引きます。

青色申告者は、原則として正規の簿記の原則、一般的には複式簿記により記帳することとされています。そして保存が必要な帳簿として、仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳などが挙げられ、保存期間は7年です。

在庫に関わるところでは、決算関係書類として棚卸表も7年保存とされています。年末に数えた記録は、捨てずに残しておきます。

この記事で確認した仕様と条文のまとめ

在庫管理の情報は、カートごとに仕様が違ううえに、公式に書かれていない部分もあります。だから一般論を読んでも判断できません。

下にまとめたのは、公式ヘルプと国税庁の資料で確認できた範囲です。自分のカートの行が空いているなら、それは確かめるべき項目だということになります。

調べていて分かったのは、在庫の仕様は公式に書かれていないことが意外と多い、ということでした。だからこそ、推測で運用を組まずにテスト商品で1回試しておく価値があります。

在庫が確保・減算されるタイミング

カラーミーショップ:受注すると在庫数が減る(公式マニュアルに明記)

STORES:注文が完了した時点で確保。カートに入れただけでは確保されない

Shopify・BASE:減算タイミングの明記は見つけられませんでした

在庫0のときの挙動

BASE:SOLD OUT表示。バリエーションは全種類が0になったときに表示

Shopify:在庫0以下で在庫切れ。「Continue selling when out of stock」で0でも販売可(POSには非適用)

カラーミーショップ:「在庫管理しない」を選ぶと在庫数は表示されず、売り切れにもならない

複数チャネル

STORES:ネットショップとレジは初期状態で連動しない。自社カートとモールの連携仕様は、各社公式ヘルプに記載を見つけられませんでした

棚卸(国税庁)

時期は12月31日。多忙なら多少前後しても差し支えない

原則は実地棚卸。商品出入帳などで毎日の在庫量を明らかにしていれば省略可

評価方法を届け出ていない場合は最終仕入原価法

帳簿の保存

青色申告は原則として複式簿記。仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳などを7年保存。棚卸表も7年

※各社の公式ヘルプと国税庁の資料を確認したものです。仕様は変わります。楽天市場とAmazonについては、出店者向けヘルプがログインを必要とするため本文に到達できませんでした。出店している場合は管理画面内のヘルプで確認してください。

よくある質問

在庫1にしていたのに、2件注文が入りました

多くのカートで、カートに商品を入れた時点では在庫が確保されません。STORESの公式ヘルプには「在庫が確保されるのは、決済ページで[注文する]ボタンをクリックして注文が完了した時点です」としています。つまりカートに入れた順ではなく、決済を終えた順です。同時に手続きが進んでいた場合に起こり得ます。カートの不具合ではないので、設定では防げません。

注文をキャンセルしたら在庫は戻りますか

カートによって挙動が違い、今回確認した範囲では公式ヘルプに明記が見つからないものもありました。テスト商品で一度試してください。在庫1の商品を自分で注文してキャンセルし、在庫が1に戻るかを見ます。戻らない仕様なら、キャンセル対応のたびに手で戻す作業が発生するので、運用手順に組み込んでおきます。

在庫管理をしない設定にしてもいいですか

カラーミーショップには「在庫管理しない」という選択肢があり、公式マニュアルには「在庫数は表示されず、売り切れにもなりません」と書かれています。受注生産や、仕入れがいつでもできる商品には向いています。ただし、この設定にすると売り切れ表示も出ないので、供給が追いつかない商品には使えません。商品ごとに決めるものです。

在庫はエクセルで管理すれば足りますか

売る場所が1か所で、扱う点数が少ないうちは足ります。むしろ最初からツールを入れると、使わない機能に月額を払うことになります。判断の目安は、在庫を合わせる作業にかかっている時間です。ただし国税庁の手引きでは、商品出入帳などで毎日の在庫量を明らかにしていれば年末の実地棚卸を省略できるとされているので、記録は付けておくほうが得になります。

売れ残った在庫は経費になりますか

その年の経費にはなりません。仕入れた金額のうち、売れた分だけが原価になります。だから年末に在庫を数えて、残っている分を確定させる必要があります。評価方法を届け出ていない場合は最終仕入原価法が適用されると国税庁の手続案内に書かれています。その年の最後に仕入れたときの単価で在庫全体を評価する方法です。

テスト商品を1つ作って、注文してみる

在庫が減るタイミング、0になったときの見え方、キャンセルで戻るかどうか。この3つは自分のカートで試せば15分で分かります。公式に書かれていない部分を、推測で運用しないためです。

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